小説「On the Moon」7話
「痛っ……」
前を歩いていたミュードが突然声を上げて膝をついた。駆け寄ると血が流れていた。何かで足裏を切ったらしかった。
「大丈夫か?いま手当を……」
「そんなのいいわ。すぐ治るもの」
「ダメだ。すぐ手当てする」
大丈夫だといいはるミュードを座らせてラズは汚れを払い、常に持ち歩いている包帯で手当をした。消毒液はミュードに害がないのかわからなかったので使うのを避けた。
「生物は、いつ呆気なく死んでしまうかわからないんだから、もっと自分を大切にしてくれ」
ミュードは包帯越しのラズの手の暖かさに自分の心が和らぐのを感じた。
ミュードは心のうちがくすぐったく感じて、ラズの手の中からそっと足を引き抜いた。
サポートは主にKnene[ネネ]の生命維持、技術向上にあてられます。よろしくお願いします。