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小説「On the Moon」10話
ミュードが泣いたその日から二人は動力結晶探しをやめた。正確にいうとラズは探索を続けていた。ミュードが寝静まった頃にそっと起きて迷子にならない範囲を動力結晶の青い光を探して彷徨った。
ミュードは夜中目を覚まして隣にラズがいないのがわかると静かに泣いた。
夜毎それが繰り返された。そんな中、ミュードの頭にどこからか悪魔の囁きが吹き込んだ。
「ラズ、最近眠そうね」
ぎくっとラズは肩を震わせた。
「そうかな」
「心配事があるの?」
「いや……そういうわけじゃ」
しどろもどろになるラズの目にミュードの微笑みが写った。
「まじないをかけてあげる」
「まじない?」
「そう、心配事がなくなるまじない」
ミュードはラズの返事も聞かず指でラズの額になにかを描いた。
「ミュー……ド……」
ぱたりとラズが地に伏せる。寝息を立てて眠っている。
「わたしの心配事がなくなるまじないを、ね」
そういうとミュードは宇宙船の方に歩き始めた。
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