小説「On the Moon」6話
「なに?」
視線に気づいたミュードがラズを見る。
「え、いや……」
「いま見てたでしょう」
「あ、えっと……い、妹に、似てると思って……」
ミュードは目の鋭さを和らげて「妹?」と首を傾げた。
「あぁ、妹がいたんだ。七歳で死んだんだけど……」
「大丈夫よ」
「え?」
「大丈夫。人は死んだら星になるの。ずっと見守ってる。だから、大丈夫よ」
ラズはこの生き物が自分のことを慰めているのだとわかって、この時初めて心を許した。宇宙船に案内してもらった時から頼りにはしていたが、心の内側にはまだ入れてなかったのだと、ラズ自身この時初めて気づいた。
「ありがとう、ミュード」
ミュードは進んでいた方向へ向き直って、またぶらぶらと歩き始めた。ラズはさっきより、その背中に信頼を持てるような気がした。
サポートは主にKnene[ネネ]の生命維持、技術向上にあてられます。よろしくお願いします。