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おはなし

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雨の日ピクニック

雨の日ピクニック

妹の穂乃果は落ち込んでいた。本当は今日、姉の琴葉とピクニックデートをする予定だったのだ。

それなのに…と穂乃果はまた1つため息をつく。今日の天気は雨。どうしても晴れてほしくて、昨晩は2人でたくさんてるてる坊主を作ったのに。てるてる坊主のばか。穂乃果は心の中で悪態をつきながら、カーテンレールに吊るされたてるてる坊主たちを睨んだ。

「何もそんなに落ち込むことないじゃん」

上から琴葉がひょこっと顔

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姉妹としてじゃなくて

姉妹としてじゃなくて

私たちは血の繋がった姉妹だ。姉の名前は琴葉。妹の名前は穂乃果。

私、妹の穂乃果は、姉の琴葉に密かに恋してる。

小さい頃から、私たちは仲良しだった。私は何でも琴葉の真似をしたがった。
服や髪型もおそろいがよかったし、スキンシップも大好きだった。一緒に手を繋いだ。腕も組んだ。ハグもいっぱいした。

いつからか、そんな姉への憧れと大好きの気持ちは、恋心へと変わっていった。

琴葉と手を繋いだり、腕を

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良い子のところにサンタさんは来る

良い子のところにサンタさんは来る

クリスマスが近くなると、世の子どもたちは親からこんなことを言われる。
「いい子にしてないと、サンタさんは来てくれないよ」と。

とある街で暮らす美鈴もそのうちの1人だ。明日はクリスマス。彼女はプレゼントのため、その日まで「いい子」を演じ続けていた。

面倒な宿題やお手伝いをこなし、『ゲームは1日1時間』の決まりも守り、夜はきちんと9時には寝る。両親は「感心、感心」と言いながら美鈴を褒めた。

美鈴

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夢の中の昔話

夢の中の昔話

これは数日前、私の夢の中で流れていた昔話である。覚えている限り書き起こした。夢にしては筋が通っているというか、グリム童話的な怖さがあって面白いと思ったのでここにもシェアしてみようも思う。

👵🏻🕳🐭🦴

あるところに、とんでもなく怠け者なおばあさんがいました。怠け者といっても、何も毎日眠ってばかりというわけではないのです。どうしても家賃を払えないのです。

それにおばあさんは部屋の掃除を

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クラゲの住む町

クラゲの住む町

数日前、僕はこの町に引っ越してきた。この町に来てから不可解なことがある。
外にいる人は何故か誰しもがヘルメットをかぶっているのだ。
僕も新居に着いた時に「あなたもしておきなさい」と大家さんに言われた。
理由を聞いたらはぐらかされてしまった。
何か表沙汰にしたくない理由があるのだろうか。

(:]ミ(:]彡(:]ミ(:] 彡

理由は後に分かった。ご近所さんから聞き出したのだ。
この町には、空に大き

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マグロの雨

マグロの雨

その日、地上にマグロが降ってきた。突然のことだった。
大昔に書かれたとされる予言書にも記されてされていなかった。

外にいた人々は逃げ惑う。あ、と誰かが言った。

その人の視線の先には、マグロを口に突っ込んで倒れている人がいた。
必死になって逃げながらも、人は1人また1人とバタバタ倒れていく。
マグロの尾びれがお腹に突き刺さっている人。目に刺さっている人。
首に刺さっている人。背中に刺さっている人

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クライクライーあとがき

クライクライーあとがき

私の記事を読んだポラーさんの1人から「続きが読みたい」とリクエストをもらった。

でも続きがどうしても思いつかなかったので、今回もようなオリジナルになったわけだ。

途中から展開が丸見えなのはごめんなさい。伏線とか苦手だし、何より自分があんまり理解できないんだ。

さて、言い訳はこれくらいにして。

今回は、夏休みのじじばばの家を舞台に書いてみました。じじばば家の和室の天井や柱って、なんだか不気味

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クライクライ

クライクライ

私は、おじいちゃんとおばあちゃんの家で暮らしている。

今の季節は夏。

おじいちゃんとおばあちゃんの家には、クーラーがない。
扇風機もない。風鈴の音だけが涼しさを感じさせてくれる。

じっとりとした空気の中、畳に寝転びながら
私はある日いなくなった妹を思い出していた。

🎐

その時、私は5歳、妹は3歳だった。
近所でも有名な仲良し姉妹だった。

夏休みになると毎年のように
おじいちゃんとおば

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月夜のフランス人形

月夜のフランス人形

月曜日から金曜日はただのお飾りとして棚の上に置かれていて、
土日は家の子どもにおままごとに付き合わされる。

その子ったら、私を大事に扱わないものだから、
私の肌はだいぶ色が落ちてしまったわ。
髪の毛だってきちんとお手入れしてくれないから、ボサボサよ。

でも、月の出る夜だけは違うの。
家の人たちがみんな寝静まった後、私は月の精とワルツを踊るの。

ルンタッタ、ルンタッタ、ふわっ。

月の精が私の

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人魚を釣ってしまった

人魚を釣ってしまった

数年前の出来事だ。
その日は天候が良く、風もあまり強くない、釣りには絶好の日だった。意気揚々とポイントへ向かったは良いものの、一向に釣れないのだ。
いつもは30分〜1時間もすれば釣れるが、この日はさっぱりだった。
2時間経ち、3時間経ち、もうダメかなと思ったその時。
今までにない強い勢いで竿が引っ張られた。

慌ててラインを巻くが、重くてなかなか引き上げられない。
こりゃいつもより大きな魚がかかっ

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お月様

お月様

眠れない時は、窓辺に腰をかけて風に当たる。
夜の風がそっと抱きしめてくれているみたいで安心するんだ。

その日は大きな満月が出ていた。
ぴかぴかに光っていて、まるでホットケーキみたい。

綺麗だなあ。

「ちょっとお嬢さん、早く寝ないと風邪をひくよ」

え。誰。誰かいるの。まさか何者かが不法侵入したの!?

「そう慌てないで。上を見てごらんよ。私だよ」

言われた通りに上を見てた。目玉が飛び出るか

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