ペンギンたちの夜間飛行

ペンギンたちの夜間飛行

 手首を切ろうとカッターの刃を当てた時、真衣は「やっぱり痛いのは嫌だ」と諦めてしまった。死んでみたいと思ったけれど、それはよくよく考えると「今すぐ逃げ出したい」という衝動だ。ここからいなくなることができれば、家族から遠ざかることができれば、真衣はきちんと生きて行けることに気付いた。  だいたい上手く自殺できたとして、過保護で共依存を望んでいる母親は絶望して後追い自殺をするかもしれない。天国があるのかどうか知らないけれど存在していたとして、すぐに涙の再会になってしまう可能性があ

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お団子みたいにくっついて

お団子みたいにくっついて

もう一人の少女は、ベッドの中で眠れずにいた。 理由はただひとつ。今日のお茶会のときに、少女に「すき」と言われ、自分も「すき」と返してしまったことだ。 無意識だったため、自分が少女に「すき」と言ってしまっていたことに気づいたのは、夕食の後片付けをしているときだった。 (……僕はあのとき、なんてことを口走ってしまったんだろう……) 月明かりに照らされながら、もう一人の少女は反省していた。 最初は、何も知らない、何も分からない、何もかも失くした少女と、うまく生活できるか不安だ

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君が決めてパウンドの味

君が決めてパウンドの味

朝食後の片付けも終わり、二人の少女はゆったりとした時間を過ごしていた。少女は珍しく椅子に座ったまま、お菓子の本を眺めている。どれも美味しそうで、どんなものなのか確かめたくて仕方ない。 少女が本を読んで食べた気分になっていると、もう一人の少女はニコニコと何か企んでいるような笑みで、少女の目の前に座った。 「なによ。変な笑顔して」 「失礼だなぁ。君に、とても大切な仕事を頼みたいんだ」 「仕事ぉ……?」 もう一人の少女は、机の上に雑誌の切り抜きを並べ始める。そこには、色や中身こ

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眠る

眠る

 そのとき、私はバラが綺麗に咲いているという公園にいた。実際、バラは綺麗に咲き誇っていた。私の目を奪い続けるには充分な美しさだったと思う。でも、すぐに私の目はバラから離れた。  バラ以上に美しい少女が、花壇の上に寝そべっていたのだ。その少女は、死んでいるんじゃないかと思うほどに青白く、細い指の先すらも動かなかった。その姿は、花よりも、星よりも、宝石よりも、この世のどんなものよりも、綺麗だった。私の目は、その少女しか見えなくなった。  私がぐっすりと花壇の上で眠る少女を見つけ

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クールちゃん×おっとりちゃん

クールちゃん×おっとりちゃん

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秋冬コーデ女の子ズ

秋冬コーデ女の子ズ

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薄桃色の過去

薄桃色の過去

  この桜も見納めかあ。振り向くと、まだ冷気を含む朝東風がさらと鳴った。   斜め上のキャンパスシューズが踏みつける草の音が耳に心地よい。音の作り主は普段と変わらない調子で上体を緩める動作を始め、小さく息を吐いた。空中で折り畳まれ、薄手の袖から覗いた腕は初めて会った日より細い。花曇りの朝には少し心もとないだろう。色素の薄い髪先が雲に浮かび透き通る。  やだ、何辛気臭い顔してるのよ。肩口を叩かれ口先を尖らす。あんたが言ったんでしょう。あ、そうだったわね。軽く舌を見せ眦の間を

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「プルーストを読む生活」を読む生活#013

「プルーストを読む生活」を読む生活#013

金木犀って、大好きなんですよ。春はマーガレット、夏はひまわり、秋は金木犀。季節ごとの好きな花にテンションをもらってます。 進捗どうですか?だめです。   終 制作・著作 ━━━━━  ⓃⒽⓀ ここ2週間、嵐がやってきたような忙しさだった気がする…。ほんと嵐で書類が全部飛んでいったらいいのになぁというくらいは忙しかった気がする…。 とはいえ、ちょっとずつ読書したり、前に進んだり。プルーストを読む生活ではなかったけれども、楽しく過ごせた気がする。 メリバの話、再び前回(

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0.突然の死/百合カップルを眺めるモブになりたかっただけなのに。

0.突然の死/百合カップルを眺めるモブになりたかっただけなのに。

本文  走馬灯って本当にあるんだ。  死の間際、佐々木小太郎はそんな身も蓋もない感想を抱いた。  決して長い人生ではなかったし、特筆するようなことは何一つしてないけれども、それでも人並に思い出くらいはある。  中学生の頃、漫画をよく読むようになった。高校生にもなると、百合という一大ジャンルが存在していることに気が付いた。そして、大学生にもなると、ちょっとした「百合オタク」と化していた。  毎月のように発売される漫画やライトノベル。更にはゲームにアニメ。果ては小説にまで

(一)美しいもの

(一)美しいもの

 蜜は気性の荒い女だ。とにかく白黒をはっきりさせないと不満で、蜜の中には善か悪かの単純な二元論しか存在しなかった。そんな性格だったから彼女には誰も寄り付かなかった。彼女はいつも竜巻を身に纏っているようだった。と言うのも、周囲のものをことごとくなぎ倒しながらも彼女自身は至って涼しい顔で飄々としているからだ。彼女は竜巻の目そのものだった。  それに引きかえ、私はクラスの中でも目立たない人間で、もしかすると担任の先生ですら私の名前を覚えていないかもしれない。それほどまでに恐ろしく

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