一、 鋭い日差しがじりじりと肌を焼いて、その肌の表面をぬるい汗が滑り落ちる。うんざりした気持ちで肌を伝う雫をぬぐった高橋大輝は、目の前の人混みを眺めた。見渡す限りの人、人、人に目眩をおこしそうになり眉間を抑え、自分もそれら集合体の一部であることを思い出して気分が悪くなる。 彼はバイト先の飲食店を目指して、人の群れの中を黙々と歩いていた。大学が夏季休暇を迎えたため、学費と生活費を稼ぐためにほとんど毎日アルバイトの予定を入れていたのだ。しかし、喧騒と灼熱の陽光に呑まれた高
鬱である。抑うつなのか不安障害爆発なのか、もう自分にはわからないが、わかったところで何の役にも立たないので、もうどうでもいいのである。盲導犬って言った?今 欲しいです、盲導犬。俺の行く末を導いてくれる盲導犬が、なんつって(笑)先生、俺 殺し屋を辞めるんですよ。三年半続けた殺し屋を。私は殺し以外にろくな仕事をしたことがないので、次はどんな仕事をするのだろうか。仕事ってなんだ。本当にしなければいけないのか?しなければ生きていけないらしいです。なら死んだほうがいいんじゃねえか?
ザーザーと、雨粒が地面に叩きつけられる音が窓の外から聞こえてくる。 遮光カーテンを閉め切った部屋に寝転がっている弘明は、目をつむって、ただその暴力みたいな音を聞いていた。 「生きてんのか?」 いつの間にか家に上がり込んだ達也が狭いベッドに乗り込んで伺ってくる。 「俺に言ってんの?」 「お前以外に誰がおんねん」 「生きてるのか死んでるのかもわかんねーよ」 疲れていた。弘明は非常に疲れていて、ベッドの奥深くまで身体が埋め込まれている心地で、そこが生者の居場所が死者の末路かなんてわ
鬱病である。不安障害である。名前はまだない。あまりにも不安障害である。不安障害というか俺が不安そのものという感じである。 頑張って外に出ると自分以外全員まともで幸せそうに見える。笑っている。せかせか動いている。何がそんなに面白いんだ。この世界にもうそんなに面白いことなんて存在しないだろうに。この世にはもう不安しか残っていないのに。お父さん、あの不安が見えないの。我が子よ、枯葉を渡る風が音を立てているんだ。(息子、死亡!) 気が、狂いそうになんだよな。生きていることが最悪で最
俺が嫌いなもの。父親の吸うタバコの匂い、居眠りに厳しい数学の吉岡先生、休み時間は騒ぐくせに現文の朗読で指されるとごにょごにょとしか読まない女子。それから、斜め前の席の、折原。 放課後を知らせるチャイムが鳴り響き、教室に詰め込まれている生徒たちがほとんど一斉に席を立ち始める。俺はすぐさま家に帰るべく急ぎ足で教室を出ようとしたが、その肩を強い力で掴まれて、うんざりとした気持ちで振り返った。そこには、背の高い男子生徒率いる数人の軍団がいて、俺の肩を掴んだまま離さない長身の男、米倉が
"『秋田県S市で女子中学生が同級生殺害、一部を食べる』 秋田県S市で12日、市立中学校に通う女子生徒Aさん(14歳)が同級生のBさん(14歳)を殺害し、一部を食べたと証言していることが分かった。 事件は11日午後、AさんがBさんの自宅で遊んでいる際に発生。AさんはBさんを刃物で刺殺し、その後の一部を食べたと供述しているという。 警察はAさんを殺人容疑で逮捕し、詳しい動機や経緯を調べている。" 「あの二人仲良かったのにね」 二人が通っていた中学校の同級生が、声を顰めて事件に
暑すぎ。死ねなのだ。〜終〜 書くことなんて本当に何もないんだよな、何故なら同じ毎日を繰り返しているだけだから。ふと思ったんだけど、こんな毎日をあと何十年も繰り返すなら、それって死んだ方がマシなんじゃねェか? そうだよ、デンジくんは頭がいいね。 キャッキャっ 普通にマキマさんに殺されたい。それかバラライカさんかトト子ちゃん。俺の願いってそれだけなんスよ。レヴィとロックってアレもうSEXしてるんですか?自分、わかんないっす、自分、もう何も、わかんないっす。もうずっと、何もわからな
虫が湧く。暑くなってきたから、虫が湧き始めた。これからもっと湧く。何故なら、私は生ゴミを放置し、食器を放置するため、どこからともなく虫がワイワイと湧いてくるのだ。虫殺し機を去年買ったからまた設置すればいいのだが、虫殺し機にはまだ去年殺した虫の死骸が大量にこびりついている。専用のブラシで書き出して掃除しろと書いてあったが、そんなことができるやつは、そもそもこんな機械買わないんじゃないか? と思うと同時に、え、あれからもう一年経つの?早すぎなンだ㌔💦💦笑笑 死なして という気持ち
初夏の夜、湿っぽい熱気と共に、陰鬱とした塊がひっそりと忍び寄ってきて、胸の中にボトボトと落っこちてきた。胸の下の方に落ちた陰鬱は、底で固まって俺を不安なような、気怠いような、鬱屈としたような、とにかく嫌な気持ちにさせた。 そのじめじめした熱は、過去の嫌な記憶と、現在俺が抱える孤独と、未来に待ち受ける不安とを、一気に連れてくる。まだ個々に菓子折りでも持ってやって来てくれれば対処のしようがあるのに、揃ってやって来られて玄関の戸をこじ開けられちゃあ俺にはなす術もない。 俺はしばらく
「俺、もうお前と音楽やんの辞めるわ」 「え」 「というか、音楽を辞めるわ」 「は?」 平日の昼間、ぽかぽか陽気の元、アコースティックギターを手に河川敷に集合した俺たちだが、さぁ新曲のお披露目だと俺がネックを握った瞬間に梶川が衝撃の発表をした。 「な、まっ、は? 冗談?」 「本気」 「なんで!」 「いや、売れないだろ、どう考えても」 俺は新曲のコードと歌詞をメモした紙に目を落とした。殺すだ、死なせてくれだ、この国の政治がどうだ、腹が減っただ、死なせてくれだ……。その白い紙にはひ
「ごめん、彼女から連絡来ちゃって、悪いけど帰るわ」 カウンターで隣り合って座っていた友人・松山が、ラーメンを啜りつつ、携帯に文字を打ち込みながら言った。器用な奴だな、行儀が悪いとも言う。俺は忙しなく動く松山の親指を眺めたあと、ラーメン屋の時計に視線を移した。松山と会ってからまだ二時間ほどしか経っていない。今日は夜まで遊ぶ約束をしていたのではなかったか? 俺は咀嚼した麺を飲み込んでから口を開く。 「えーなんで。彼女も呼べばいいじゃん」 「いや、なんかスッピンで来るの無理らしいか
※嫌な終わり方をする 「俺が何のために生きてるか、わかるか」 日付が変わるか変わらないかぐらいの、曖昧な時間帯の居酒屋で、達巳が突然言ったので、俺は口の中にあったキュウリを咀嚼し、飲み込み、日本酒を一口飲んだあとに、「は?」と言った。 「達巳が生きてる理由?」 「ウン」 赤い顔をした達巳は珍しく真剣な顔をして頷いた。俺は三秒くらい考えてから答える。 「俺のことが好きだから」 キャハハと達巳が笑った。スーツ姿の成人男性が子供のような笑い声をあげるのは一種異様でもあったが、この
昨日見た悪夢を共有します とても怖かったからです フォロワー?なのか知り合いなのかわからん異常によく喋る女と会い、人が死にまくっててヤバい噂の絶えない廃墟に行くことに。「チェ??」(覚えてない)という古い儀式をやると言い出す女。なんかヤバい匂いがしたけど何故かノリノリになってしまう俺。女についていくと、儀式と称して両足の膝から下を切断される(痛い)。痛いけど何故かそうするべき!と思い込んでなすがままにされる。膝から下がなくなる。 すぐに義足的なものをつけられて、解放。意識朦
頭からギリギリと不愉快な音が鳴っているのを、俺は確かに聞いた。もしかするとそれは、外でセックスの相手を募っている蝉の張り切った鳴き声だったのかも知れないし、俺の渾身の歯軋りの音だったのかもしれない。だけど俺には、その音が、耳の穴の斜め上、こめかみあたりから発されたように思えてならなかった。 小学生の頃、理科室の机についていた、アレ。あの長いネジみたいなやつをクルクル回すと、万力の要領で小さい鉄板みたいな部位が狭くなっていく、用途不明なアレ(用途はあったんだろうし、説明もされた
※暴力、血 縁の低い、ステンレス製の銀色の灰皿にぎゅうぎゅうに押し込まれていた煙草の吸い殻を、高屋は白い手が灰で汚れるのも気にせずに、素手でひっ掴んだ。ほとんどの吸い口に薄赤い口紅の跡を残した煙草の集合体は、彼の手によって、鍋の中へと真っ逆さまに落とされた。コソン、コソンと、軽薄な音を立てて、吸い殻のひとつひとつが、鍋の底へと素直に落下した。 浅野は、その光景を呆然と見つめていた。苦く煙たい煙草の死臭が鼻をついたが、それを不愉快だと思うほどの余裕や自由が、彼には与えられて
犬。犬が足りねえ。 引越。犬が恋しい。両手で首のところのふわふわした毛を囲んでめちゃくちゃに撫で回したい。 荷解きを始めて気づけば10時間ほど経っていて、ウケた。ここが死場所になるかもな〜と思って、物をあまり増やしたくなかったが、生活するのに不便すぎてモリモリ増えていった。意志薄弱。ミニマリストってすげ〜と思ったけど、死刑です。 ゴキブリが出て、殺した。ボケが 無音が恐ろしくて暫くはお笑い芸人のYouTubeとあたしンちを無限に流していた。そのうち慣れた。 家でできる労