森巣椎葉

小説やエッセイやその中間を書いてます。

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マガジン

  • レズパコ

    【あらすじ】 女子校で繰り広げられる悪ふざけ、友人同士で腰を振り笑い合うレズパコ。そんな行為に情熱を燃やす一人の少女がいた。笑いあり!(下ネタが苦手でなければ)エロあり!(少年誌程度の)涙あり!(ないかもしれない)えちえちでエモエモな大長編(の予定)肩の力を抜いて腹に力を込めてどうぞお楽しみください。

最近の記事

のんのんでり【レズパコ#13】

 母は線の細い人だった。ふうっと息を吹きかけるだけで輪郭が消し飛んでしまいそうなほど儚げだった。  入退院を繰り返す母はほとんど家におらず、いたとしても眠っていることが多かった。母がいつかいなくなってしまうことを、私はかなり幼いころから予感していた。それは一年後かもしれないし、明日かもしれないし、今日かもしれない。  あるとき、母と父と三人で海へ出かけた。浜辺には人影がなく、少し肌寒かったので、秋ごろだったと思う。母は体調が良かったのか、めずらしくはしゃいでいた。走ったり

    • 雨の岩屋戸で【レズパコ#12】

       ずっと雨の中でもかまわなかった。風邪を引かないのがバカの特権だし、ずぶ濡れで抱き合うのもなんかエモかったから。だけどのんがくしゃみをしたので、近くの岩屋戸で雨宿りすることにした。線路と浜辺のあいだにそびえる松の岩山の下の、海に面した空洞に私たちは逃げ込んだ。  道の駅の明かりも、車のライトも、街灯も届かない闇の中、低い天井にぶつからないよう屈みながら奥へ進み、ちょうどいい段差にふたりで腰掛けた。  波で削られてできた洞窟は天然っぽいが、崩れないよう支えている柱は人工っぽ

      • 君が好きだと叫びたい【レズパコ#11】

        「レズパコ恐怖症じゃな」  かけてもいない眼鏡をくいっと上げるポーズをしながら、のんがのたまう。私は体操着に着替え、濡れた制服を物干しラックのハンガーに吊るしていた。 「それもかなりの重症じゃ。このまま放置すれば命に関わるぞよ」 「治るんですか、先生?」 「詳しく検査せんとなんとも言えんが、多少の荒療治は必要じゃの」  言いながらのんがスカートを脱ぐ。私は壁の埋込式の書架に目をやった。背伸びをしてようやく届く最上段まで、ぎっしりと漫画が詰め込まれている。たとえ毎日こ

        • ただのしかばねのようだ【レズパコ#10】

           胸ぐらにつかみかかった手を、りちゃこが忌々しげに振り払う。やめなよ二人とも、とのんがうろたえながら制止する。騒ぎに気づいたクラスメイトたちが、なんだなんだとこちらを振り向く。昼休み、窓ガラスはスコールに揺れ、遠くで雷鳴が轟いている。  りちゃこに肩を突き飛ばされ、私は掃除用具入れに背中を打ち付けた。スチール製の扉がベコンと大きな音を立てる。世間話に夢中になっていた子たちも、驚いて振り返った。私は苦痛に顔をしかめながら、りちゃこの肩を押し返した。 「いいかげんにしてよ!」

        のんのんでり【レズパコ#13】

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        • レズパコ
          13本

        記事

          それとゆわなびぃ【レズパコ#09】

           ぽつぽつと小雨が降ってはいるものの、道の駅のマルシェは大盛況だ。テラス広場には簡易テントが軒を連ね、たこ焼きや天ぷらのおいしそうな匂いを裏口まで運んでいる。  オーシャンビューの正面とは対照的に、裏側は絶壁だ。ほぼ垂直の斜面はワッフル状のコンクリートで舗装され、道の駅の屋根を超えたあたりから鬱蒼と緑に覆われている。日が当たらない代わりに風も届かない、駐車場から搬入口に通じるこの薄暗い谷間に、私とのんは座っていた。  休日なのにふたりとも半袖ハーフパンツの体操着姿で、ひっ

          それとゆわなびぃ【レズパコ#09】

          ひらいて【レズパコ#08】

           りちゃこと二人きりでカラオケに来ると、大森靖子ばかり聴かされる。だから私も対抗して、プリキュアおよびプリパラを振り付きで熱唱する。  大人数だと私たちは盛り上げ役に徹してしまうので、本当に歌いたい曲を歌う機会はあまりない。私はリクエストされれば知名度の高い曲だけ惜しみなく披露するけど、りちゃこはZOCすら歌わない。  目を閉じて歌詞も見ず『ひらいて』を歌うりちゃこを眺めながら、私はデンモクに次の曲を入力した。氷が溶けて薄まったジンジャエールの底をすすり、喉を整える。

          ひらいて【レズパコ#08】

          秘境の文筆家への期待

           ついに秘境の文筆家となる四人が発表されましたね。と言われてもなんのこっちゃという人が大半かもしれない。小説家による小説家のための企画だから、小説家志望でもなければ知り得ない情報だろう。  簡単に説明すると、選ばれた者は秘境に移住し、そこでプロの作家や編集者の指導のもと、仕事として給料をもらいながら執筆に専念することができるという、小説家を目指す者にとっては願ってもない企画だ。  もちろん私も秘境の文筆家に応募した。そして落ちた。きっと投稿した作品がつまらなかったのだろう

          秘境の文筆家への期待

          秘境の文筆家への期待(音声)

          同タイトルのエッセイを音声化したものです。いずれ小説をオーディオブック化しようと考えているので試作。

          秘境の文筆家への期待(音声)

          秘境の文筆家への期待(音声)

          私だ【レズパコ#07】

           昨日はお腹が痛くて学校を休んだ。今朝にはスッキリしていたが、なんとなく億劫で家を出るのが遅れた。のんには足をグルグルにして走るラインスタンプを送っておいた。  のんとの待ち合わせのために、私は毎朝一つ遠い駅から通学している。家を出て、学校とは逆方向の海側に自転車を走らせて、正しく一日を始めるためにのんのケツを叩く。その分のロスタイムがあるので、ちょっとくらいの遅れなら最寄りの駅から乗れば始業に間に合うのだ。朝起きれなくてギリギリなときはたまにそうしている。  金曜日とは

          私だ【レズパコ#07】

          ボンレスハム太郎【レズパコ#06】

           四限目に体育がある水曜日がいちばんアガる。授業から昼休みまでシームレスに体育館を独占して遊び倒せるからだ。  しかし今日の私は絶不調だった。三日前から続く便秘で視界が霞んでいる。今朝もトイレで頑張ったが、なんの成果も得られなかった。菓子パンをレタスサンドイッチに切り替え、フルグラを牛乳ひたひたで食べまくっても、私の腸は教科書に押しつぶされたバッグの底のイヤホンコードのように固く複雑に絡まっている。創作ダンスで体を動かしまくっても、冷や汗ばかり吹き出してくる。  昼休みに

          ボンレスハム太郎【レズパコ#06】

          ガラスの浮き球【レズパコ#05】

           週末はたいてい海岸沿いの道の駅のカフェでのんと過ごす。海に面したガラス張りのカウンター席で、眺めているだけで涼しくなるライムソーダのグラスを二つ並べ、自由帳にペンを走らせながらとくと語らう。 「あら、宿題?」 「あっ、はい、お母様」  背後から覗き込む声に、私はとっさにノートを隠して振り返った。ベージュのチノパンに白いポロシャツ、デニムのエプロンをすらっと着こなすのんのママが、娘とそっくりな垂れ目を細める。 「ううん、ネタ作り」  のんが横から口を挟む。余計なこと

          ガラスの浮き球【レズパコ#05】

          レズパコ禁止【レズパコ#04】

           スドウとアリダの喧嘩を仲裁してほしいとタカナシに頼まれた。同じクラスでそこそこ仲も良く、ビッグバンアタックの講習会にも参加してくれた彼女らではあるが、どうして私にそんなことをお願いするのか首を傾げてしまう。とはいえ頼られると断れない性分だ。私は腕まくりをして頷いた。  聞いてみると、スドウとアリダはべつに取っ組み合いのキャットファイトを繰り広げているわけでもなく、ただひたすら険悪になっているらしい。ますます私の領分ではない。どんな問題も力づくで解決できるならそれが一番なの

          レズパコ禁止【レズパコ#04】

          ビッグバンアタック【レズパコ#03】

           いきなり背後から襲いかかって腰を振り、相手を棒読みで喘がせる、その一連の流れはビッグバンアタックと名付けられた。翌日には数人が活動に参加し、翌々日には組合が結成された。動画は瞬く間にバズり、瞬く間にBANされた。  私はりちゃこを机に組み伏せ、実践指導を行なった。撮影班が四方に待機し、のんが後方腕組みで見守っている。 「重要なのはファーストタッチです」  適宜指導を交えつつ、デモンストレーションを進めてゆく。 「いきなり尻を鷲掴みにするのもありですが、この場合は拘束

          ビッグバンアタック【レズパコ#03】

          パコパコプリン【レズパコ#02】

           トイレに行って教室に戻ると、のんが私の机に肘をついて尻をこちらに向けていた。わざわざ歓迎のポーズを取って待ち構えてくれていたわけではない。隣の席のりちゃこと三人で話していた体勢のまま変わっていないだけだ。ちゃんと手ぇ洗ってきたの? と毎回聞かれる、私の尿切れの良さの賜物とも言える。  もちろん手は洗ってきた。だけどハンカチなんて持ってないから、両手がまだ濡れている。スカートで軽く拭ったものの、私は衛生観念が高いので完全に拭き切ることはしなかった。幽霊のように両手をぷらぷら

          パコパコプリン【レズパコ#02】

          ヒップモーニング【レズパコ#01】

           挨拶をするときは尻を叩かなければならない。おはよーだけで済ますのは倫理にもとる。相手が生理だろうが痔だろうが関係ない。むしろ弱っているときこそ思いっきりひっぱたいてやるべきだ。噂によると男子校の挨拶はカンチョーらしいから、女子のか弱い平手で叩くだけなのは恩情である。  なにもうちのクラスに限った話ではないし、ましてや私が個人的に推奨している運動でもない。学校全体がそういう文化なのだ。なんでも室町時代から続いている由緒正しき伝統らしい。連綿と紡がれる歴史に敬意を表し、私は今

          ヒップモーニング【レズパコ#01】

          私に解けないクロスワードパズルはありません。

          クロスワードに知識なんていらない。必要なのは覚悟だけです。番号順にただ直感で埋めていけばいい。立ち止まったり、振り返ったり、そんな暇は私たちにはありません。 クロスワードは人生の縮図です。さっそく始めていきましょう。 いきなり難題ですね。ヨコ1は七文字の植物。子房とか胚珠とか、習った気もするけど忘却の彼方です。とはいえ、七文字の植物と言えばこれしかないでしょう。 「やまとなでしこ」 日本は大きく四つに分かれている。馬鹿にしてますね。それくらい知ってます。本州、九州、北

          私に解けないクロスワードパズルはありません。