私が音楽留学を一時止めた理由 #GoAbroad 特別編
現在、新型コロナウイルスの影響で、海外への渡航が厳しくなっています。海外で勉強している学生たちは、今どのように過ごしているのでしょうか?
現地の様子と学校の対応、そして緊急事態の時、何をどのように決断したのか、インタビューさせていただきました。また、後日普段の生活についても伺った記事が出ます。お楽しみに。
今回取材に協力してくださったのは、アメリカ留学中の中西聖嗣さん。現在は日本に一時帰国し、生活しているそうですが、帰国前の緊迫したお話を伺いました。
(取材:大橋)
中西聖嗣(なかにしせいじ)
京都市出身。4歳からピアノを始める。京都市立堀川高校を卒業し、大阪府立大、京大院で化学を専攻するあたりから音楽への歯止めが効かなくなり、2019年、周囲の反対を押し切ってニューヨーク州立大学の修士課程に”ピアノで”進学。生活にもなんとか慣れ、「さあ、コンクールたくさん出るぞ!」と息巻く頃に新型コロナウイルスの影響により半ば強制帰還。そのためニューヨークでの実績については不戦勝 (不戦敗ともいう)。
私は、2019年よりアメリカのニューヨーク州立大学パーチェス校に通っており、ピアノを専攻しています。
ニューヨーク州立大学パーチェス校
芸術の分野において、全米からとても高い評価を得ている。他の学科もアメリカ国内の各紙でトップランキングに入るなど教育レベルの高さを維持している。
ニューヨークでは、3月1日に初めての感染者が確認され、3月20日には事実上の都市封鎖になりました。
わずか20日での出来事です。
3月16日まで私も学校に行っており、3月14日までは学校側も「距離を保って授業する」と言っていました。
11日から13日までは実験的にオンラインでの授業が開催されていましたし、16日まではレッスンも行われていました。
しかし州からの要請は1日ごとに変わり、3月18日に「50%の労働者を在宅にしなさい」、19日は「75%」、20日に事実上の都市封鎖となる「100%」となりました。
私は3月17日の時点で帰国用のチケットを購入し、19日に日本に帰国しました。
何故帰国を?
帰国は、3つの理由を基に決めました。
1つ目は留学生、という身分。
国や都市の財政が危ぶまれた時、一番に切り捨てられるのは「不法滞在者」。そして次は、永住権のない留学生である「自分」です。
2つ目の理由は、医療体制がひどくなることは目に見えていたことから。
私は大学指定の保険に入っており、医療費が高くて病院に行けないという心配はありませんでしたが、「日本とアメリカのどちらで医療を受けたいか?」ということを考えました。また、もし自分がニューヨークで罹患したとき、家族に与える不安の大きさを考えたことは言うまでもありません。
3つ目は、アメリカでやることがなくなってしまったからです。
大学は、4月6日以降全ての授業がオンラインになりましたし、コンクールやセミナーもなくなった。そして、自宅には電子ピアノしか無いため、練習も危ぶまれる。
この3つを考えて、帰国を決意しました。
いざ日本を目指して
空港へは、やはり公共交通機関ではなく、Uberを使いました。
レストランは持ち帰りのみ、スーパーや薬局のみが空いている状況でした。
関西でいえば梅田のような場所であるタイムズスクエア近辺も、ご覧の通り人が少なく映画のようです。
久しぶりの日本生活!
自宅での経過観察をしつつ、最近練習以外の生活では、お菓子作りにハマっています。これまで勉強や練習、本番などで慌ただしかった毎日から一転、小学生以来初めて過ごすゆるやかな毎日です。
私が去り、ニューヨークは
ニューヨークでは1万人以上が亡くなり(4月14日時点)、病院でも廊下にベッドを出した状態だったと言います。また、セントラルパークにはテントでできた臨時病院が設営されていました。
ですが、現在は外出制限が緩和され、市民の外出も見られているようです。
大学のキャンパスは、厳密にいうと閉まっていません。音楽棟は閉まっていますが、帰る場所のない留学生のために寮などは開いています。しかし、4月時点でアメリカに残っている韓国人の友人は田舎に疎開していると言っていました。
最後に
ニューヨークから、帰国前後の現地ルポをお届けしました。
コロナ以前の「ニューヨーク留学生活」のお話も伺いましたので、ぜひそちらの記事もお楽しみに!
取材:大橋 奈菜(おおはし なな)
大分県出身。大分県立大分舞鶴高等学校卒業。大分県立芸術文化短期大学音楽科ピアノコース卒業。京都市立芸術大学音楽学部ピアノ専攻卒業。2020年6月より、関西にてフリーで音楽活動中。
HP : ななを。ホームページ
文責:前田 直哉(まえだ なおや)
鹿児島県出身。9歳からサクソフォンを始める。第17回日本ジュニア管打楽器コンクール銀賞(第2位)受賞。第23回日本クラシック音楽コンクール1位なしの2位。第22回KOBE国際音楽コンクール優秀賞を受賞。第20回大阪国際音楽コンクールエスポワール賞を受賞。アジアユースオーケストラ2018の一員として、アジア11都市を巡るツアーに参加。2019年12月、韓国ソウルにて「Amuse Saxophone Ensemble 創立演奏会」にゲストとして参加。多重録音によるアンサンブル「splendor saxophone ensemble」主宰。これまでにサクソフォンを土田まゆみ、有村純親、國末貞仁、須川展也、本堂誠の各氏に師事。京都市立芸術大学音楽学部音楽学科管打楽専攻卒業。
問合せ:maedanaoya.sax@gmail.com
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