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Cinema Review

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#映画

ソドムの市

ソドムの市

[2008年9月13日の日記]

学生時代、先輩から「ソドムの市が何しろヤバイ」という話を聞き、それ以来気にはしつつも、実際に観たのはそれから 4~5 年は経ってからだったと思う。そして想像していたより遥かにヒドイ内容に吐き気さえ覚えた。パゾリーニという監督に対する強烈な先入観、および嫌悪感がその時に植えつけられた。

だがその後、ナンニ・モレッティの「親愛なる日記」を見て少し考えが変わる。このド

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皆殺しの天使

皆殺しの天使

「ビリディアナ」と二本立てで鑑賞。

「皆殺しの天使」。そのタイトルの正体とは何だろうか。

部屋に閉じ込められた人々。水も食料も底をついて生命の危機に晒されてもなお、部屋から一歩外に出るという選択をしない。選択することができない。なぜ選択できないのか。そこは一切の説明がない。何も知らないでこの映画を観たらしばらくは「こいつら何してんの・・・?」と状況が飲み込めないだろう。物理的に閉じ込められてい

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ビリディアナ

ビリディアナ

早稲田松竹で鑑賞。こないだの「ヘレディタリー」に続いて、なんだか疲れる映画体験が続いている。

言わずとしれたルイス・ブニュエル監督の代表作の一つ。僕も名前だけは知っていた。でもブニュエルって刺さらないんだよな。何本か観てるけど、どストライクの作品が一本も無い。

今回は「皆殺しの天使」との二本立て。なかなか見れないラインナップということで足を運んだ。朝イチの初回から観に行ったんだけど、結構な行列

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二十四の瞳

二十四の瞳

[2010年10月17日の日記]

壺井栄の「二十四の瞳」を知らない日本人なんていないだろう。いないよね?僕と同じように小中学校の読書感想文の課題で読まされた、という人も多いのではないか。けれど読後に何か強い印象を残したという記憶は全く無いし、内容もすぐに忘れたし、またいずれ読み返そうなどと思ったことも無かった。義務教育というか、教材の匂いがするんだよね。「二十四の瞳」って。

なのになぜ今更この

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Festival Express

Festival Express

[2010年8月16日の日記]

二度目の鑑賞。やっぱり素晴らしい。

さらっと内容を説明すると。トロント、ウィニペグ、カルガリーの三か所で開催されたフェスのドキュメンタリー。出演ミュージシャンは全員揃ってその三地点を貸し切りの列車で移動。列車にはアンプやドラムセットも持ち込まれ、移動中は連日連夜セッション祭り。

こんなの楽しいに決まってるやん。列車の中の映像、みんなニコニコしてるもんな。

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バイオアマゾネス

バイオアマゾネス

[2011年3月20日の日記]

なんだか急に現実離れした突拍子も無い映画が見たくなり、近所のブックオフで買ってきた。250円。まったく何の前情報もなく、監督も俳優も全然知らず、なんとなく手にとってみただけ。

NEWジャンル『細菌エロス』誕生!

と、「帯」ではなくパッケージに直で書かれている。尋常ではない「ハズレ感」がひしひしと伝わってくる。250円という価格が、その信憑性をより強める。

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赤い風船

赤い風船

[2010年9月26日の日記]

ジャン・コクトー曰く、「妖精の出てこない妖精の話」。1956年パルムドール受賞作品。

冒頭のシーンから「この映画はタダモノではない」という雰囲気がみなぎっている。映像の美しさがただごとではないのだ。そして主人公の少年も、後ろで流れる音楽も、まるで生きているような風船も、どれもすべてがとても愛らしい。

台詞は非常に少なく、ところどころサイレント映画を彷彿とさせる

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ミツバチのささやき

ミツバチのささやき

[2016年1月16日の日記]

原題:El espiritu de la colmena
監督:ビクトル・エリセ
出演:アナ・トレント
鑑賞:2016/01/16

前回観たのはいつだったろうか。思い出せないくらい昔のこと。ストーリーをほとんど覚えていなかったのは、あまりにも長い時間が空いたからということもあるけど、何しろこの映画にはストーリーに集中させないトラップがある。アナ・トレントの天使の

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エレニの帰郷

エレニの帰郷

[2014年1月25日の日記]

公開年度:2008年
鑑賞:2014年1月25日(新宿バルト9)
監督:テオ・アンゲロプロス
出演:イレーヌ・ジャコブ、ミシェル・ピコリ、ブルーノ・ガンツ、ウィレム・デフォー

2014年、初鑑賞の映画はアンゲロプロス作品の劇場ロードショー。東映がアンゲロプロス作品を配給するとは時代が変わったものだなあと思っていたけど、配給協力としてフランス映画社が名を連ねていて

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ブロンド少女は過激に美しく

ブロンド少女は過激に美しく

[2011年5月29日の日記]

監督は現役最高齢(102歳!)、ポルトガルの巨匠マノエル・デ・オリヴェイラ。久々に映画館で鑑賞。

とにかく全編、静謐な映像の美しさが印象的。今時の映画はどれもこれも高精細のクリアーな映像で、映画独特のフィルムの味わいが欠けているものが多いけれど、この映画では昔ながらのフィルムの感触を楽しむことができる。

ちなみに、オリヴェイラ作品では常連のレオノール・シルヴェ

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恐怖分子

恐怖分子

[2015年6月14日の日記]

公開年度: 1996年(日本公開)
鑑賞: 2015年6月14日 キネカ大森
監督: エドワード・ヤン

キネカ大森。初めての利用。席数の少ないミニシアター。好きな雰囲気。なのに僕の気持ちはパッとしない。どんよりとしているその理由は、映画そのものには余り関係の無い話だ。

僕は20代最後の日、この大森という場所に好きな人を呼び出して告白し、そしてフラれた。とはいえ

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スラム砦の伝説

スラム砦の伝説

[2016年4月24日の日記]

鑑賞日:2016/04/23
場所:新宿 K’s シネマ
監督:セルゲイ・パラジャーノフ

これを観たのは昨日で、実は今日も「火の馬」を観るために足を運んだのだけど、アホみたいな行列ができていたので断念。「石の上の花」の時はガラガラだったのに!油断した・・・

というわけで「スラム砦の伝説」、正直に申し上げてやっぱり僕にはパラジャーノフは難解だ。絵面はキレイ。固定

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クラッシュ

クラッシュ

[2016年8月31日の日記]

監督:デビッド・クローネンバーグ
出演:ジェームス・スペイダー、デボラ・アンガー、ホリー・ハンター、ロザンナ・アークエット
公開年度:1997年

この作品は公開時に劇場で見ている。えと、1997年公開なので、約20年ぶりということになるわけか。20年・・・え?この映画見てから20年経ってるってこと?うわー・・・年取るわけですなあ。。。

それはさておき、気を取り

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ピアノレッスン

ピアノレッスン

監督:ジェーン・カンピオン
音楽:マイケル・ナイマン
出演:ホリー・ハンター、ハーヴェイ・カイテル、アンナ・パキン、サム・ニール

とても思い出深い映画。レンタル店のラインナップから消えることもなく、いつでも観ようと思えばまた観ることができたこの映画。それでも20年以上もの歳月観返すことなく、それだけの時間を隔てたことには何らかの意味があったのかもしれない、ということをふと思った。

この映画を観

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