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「まあまあ、みなさん落ち着いて、冷静にやりましょう」

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記事一覧

安倍家岸家考⑬(宰相を二人も生んだ母)

 前回の佐藤家の家系の説明の際にもしたように、近代佐藤家中興の祖である信寛は孫の茂世を非常に可愛がり岸家から婿(秀助)を迎えて佐藤家の分家を立てた。秀助18歳、茂…

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3週間前
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作られた「悲劇」に感動できるか、あるいはパッションの全部盛りを消化できる体力はあるか

 手塚治虫が死去した1989年、漫画情報誌『コミックボックス』は5月号を追悼特集号として発行し、多くの識者や同業者の手塚の偉業を惜しむ声が寄せられた。ところがこの号…

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4週間前
6

安倍家岸家考⑫(佐藤家の血筋)

江戸後期、長州藩に佐藤信寛(通称・寛作)という藩士がいた。佐藤家の由来や代々の家系について深堀りはしないが、源義経家来佐藤忠信に発するという口伝があり(あくまで…

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1か月前
3

『虎に翼』のホーナーとライアン

『日本占領と法制改革』(日本評論社・1990年)という本がある。著者はアルフレッド・オプラー、監訳者に内藤頼博とある(訳者は納谷廣美、高地茂世)。熱心なファンであれ…

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1か月前
3

安倍家岸家考⑪(晋太郎と弟と安倍家と)

晋太郎は1958年、第28回衆議院議員総選挙で旧山口1区から出馬し、2位で初当選を果たす。しかしこの選挙、父・寛の地盤を継いだ周東英雄(最初に継いだ親類の木村義雄は公職…

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3か月前
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「世直し源さん」を読み直して見えてくるもの(ネタバレあり)

業田良家『ヨシイエ童話 世直し源さん』と聞いてピンと来るのは40代後半以降の主に男性(有体に言ってしまえばオッサン)だけであろうか。「ヨシイエ童話」は「ヤングマガ…

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4か月前
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笑いのカイブツを育てた図書館という存在

今年1月、映画『笑いのカイブツ』が公開された。原作のツチヤタカユキは、古くからのオードリーのオールナイトニッポンリスナーなら誰もが知る伝説のハガキ職人であり、若…

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5か月前
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安倍家岸家考⑩(両家の縁)

母の顔を知らずに育ち、戦後東大に復学してこれからという時に父と後見人的存在であった大伯母を亡くした晋太郎であったが、活発な学生時代を過ごす。父の後継者となった親…

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6か月前
3

安倍家岸家考⑨(母のいない安倍家)

安倍晋三の父・晋太郎、祖父・寛を通した政治家として繋がる安倍家については本稿1回目で紹介したように『安倍三代』(青木理)と『いざや承け継がなん』(木立眞行)が最…

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7か月前
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安倍家岸家考⑧(ヤング安倍晋三~社会人編)

晋三は77年3月成蹊大学を卒業するが、すぐに政治の道へは歩まず、留学のために渡米する。留学とはいうものの、まずは78年1月から語学学校へ通うがホームシックで毎晩コレク…

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11か月前
6

西原理恵子が抱えた負の連鎖

西原理恵子が幼少の頃から上京して漫画家として食べて行けるまで、相当に苦労したことは有名であり、Wikipediaを読むだけでもなかなか大変であったことが伺える。美大に入…

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安倍家岸家考⑦(ヤング安倍晋三~キャンパス編)

晋三はエスカレーターでそのまま成蹊大学法学部に進むが、高校時代の同級生は当時の晋三の特に気負う感じのない性質から必然的にそうなったと見ている。 高校時代の同級生…

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東京都第23区の選挙結果に残る平成与野党攻防の地層

河村建夫元官房長官の長男・河村建一氏が日本維新の会公認で東京6区から立候補する調整に入った、と報道されている。 河村元官房長官の長男、維新から出馬で調整 21・22…

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南海キャンディーズとオードリーとを評価したM1審査員

放送中のドラマ「だが、情熱はある」の南海キャンディーズとオードリーが両コンビともM1で名を上げたところまで進み、いよいよ佳境を迎えつつあります。 南海キャンディー…

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安倍家岸家考⑥(兄の存在)

本稿シリーズ2回めにも書いたとおり、安倍家には長男・寛信がいる。祖父・安倍寛、岸信介の字をそれぞれもらっており、名前からして長男への期待は明らかに高い。 寛信と晋…

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エルピス牛丼考

秋葉原へ行くと牛丼専門店サンボに入ることが多い。特別に美味い訳ではないが、あの味はサンボにしかないため、ついつい暖簾をくぐってしまう。一般的に外食においては旨い…

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安倍家岸家考⑬(宰相を二人も生んだ母)

 前回の佐藤家の家系の説明の際にもしたように、近代佐藤家中興の祖である信寛は孫の茂世を非常に可愛がり岸家から婿(秀助)を迎えて佐藤家の分家を立てた。秀助18歳、茂世14歳のときである(『岸信介伝』吉本⑩)。

 茂世は10人の子を産むが、うち3人が男子で、長男・市郎、次男・信介、三男・栄作である。学問的な教育については父・秀助に寄るところが大きいが、しつけ等の全般的な教育は母・茂世が圧倒的であった

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作られた「悲劇」に感動できるか、あるいはパッションの全部盛りを消化できる体力はあるか

 手塚治虫が死去した1989年、漫画情報誌『コミックボックス』は5月号を追悼特集号として発行し、多くの識者や同業者の手塚の偉業を惜しむ声が寄せられた。ところがこの号には宮崎駿の異色のインタビューが載っている。追悼号であるにも関わらず、宮崎は「アニメーションに対して彼のやった事は何も評価できない」と手厳しい。宮崎は手塚が関与した1960年の劇場アニメ『西遊記』において、「孫悟空の恋人の猿が悟空が帰っ

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安倍家岸家考⑫(佐藤家の血筋)

江戸後期、長州藩に佐藤信寛(通称・寛作)という藩士がいた。佐藤家の由来や代々の家系について深堀りはしないが、源義経家来佐藤忠信に発するという口伝があり(あくまでも口伝)、藩士としての佐藤家は初代・市郎右信久衛門が寛文2年(1662)に萩藩で下級武士となって以来、信寛は十代目の当主となる。幕末に長州藩士であると松陰との関係が注目されるが、信寛は松陰より15歳年長(文化12年生まれ)であり、兵要禄を授

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『虎に翼』のホーナーとライアン

『日本占領と法制改革』(日本評論社・1990年)という本がある。著者はアルフレッド・オプラー、監訳者に内藤頼博とある(訳者は納谷廣美、高地茂世)。熱心なファンであれば気づくと思われるが、ドラマ『虎に翼』第10週に登場するGHQ民生局のアルバート・ホーナーと寅子の上司となる司法省民事局民法調査室の責任者である久藤頼安(自称・ライアン)のモデルとなった二人だ。
ネットで既に指摘されているとおり、久藤(

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安倍家岸家考⑪(晋太郎と弟と安倍家と)

晋太郎は1958年、第28回衆議院議員総選挙で旧山口1区から出馬し、2位で初当選を果たす。しかしこの選挙、父・寛の地盤を継いだ周東英雄(最初に継いだ親類の木村義雄は公職追放となった)がいながらの出馬表明であった。これには岸周辺からも異論が出るほどで、それに対し晋太郎は「立候補を止めるくらいなら洋子を岸家に返す」とまで言い放ったという(木立⑨p124、洋子⑦p120)。これを調整したのが義理の叔父と

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「世直し源さん」を読み直して見えてくるもの(ネタバレあり)

業田良家『ヨシイエ童話 世直し源さん』と聞いてピンと来るのは40代後半以降の主に男性(有体に言ってしまえばオッサン)だけであろうか。「ヨシイエ童話」は「ヤングマガジン」で89年終わり頃から92年まで連載されたシリーズ的タイトルで、その中で「世直し源さん」は91年まで約2年間掲載されていた。
連載開始の89年は昭和から平成となり、リクルート事件を受けて竹下内閣から短命の宇野内閣、そして海部内閣が誕生

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笑いのカイブツを育てた図書館という存在

今年1月、映画『笑いのカイブツ』が公開された。原作のツチヤタカユキは、古くからのオードリーのオールナイトニッポンリスナーなら誰もが知る伝説のハガキ職人であり、若林正恭の『社会人大学人見知り学部卒業見込』にも登場する「人間関係不得意」のエピソードでも有名な人物だ。その「人間関係不得意」さから東京での作家見習いを諦め帰阪後に書いたブログが出版化されたのが原作あり、映画ではツチヤを岡山天音が演じた。

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安倍家岸家考⑩(両家の縁)

母の顔を知らずに育ち、戦後東大に復学してこれからという時に父と後見人的存在であった大伯母を亡くした晋太郎であったが、活発な学生時代を過ごす。父の後継者となった親類の木村義雄は公職追放となってしまうが、晋太郎が成長するまでの地盤固めということで当時吉田内閣副書記官であった周東英雄の擁立が決まり、晋太郎もその応援に貢献した。
卒業後、晋太郎は外交官か新聞記者を思案して政治の道を行くなら記者と考え毎日新

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安倍家岸家考⑨(母のいない安倍家)

安倍晋三の父・晋太郎、祖父・寛を通した政治家として繋がる安倍家については本稿1回目で紹介したように『安倍三代』(青木理)と『いざや承け継がなん』(木立眞行)が最もわかりやすくまとまっている。以下、両書を参考に安倍家の推移を眺めてみる(個別エピソードの引用以外は参照先は割愛する)。

安倍家は山口県大津郡日置(へき)村(その後油谷町、長門市)で代々醤油などの醸造業を営んでいた大地主であった。明治に入

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安倍家岸家考⑧(ヤング安倍晋三~社会人編)

晋三は77年3月成蹊大学を卒業するが、すぐに政治の道へは歩まず、留学のために渡米する。留学とはいうものの、まずは78年1月から語学学校へ通うがホームシックで毎晩コレクトコールで自宅へ電話をかけていたため電話代が月十万円となり、父・晋太郎から「もう晋三を日本に戻せ!」と言わしめ、79年の春に帰国する(野上①p106-110)。留学を目的とした渡米の理由や帰国までの迷走について考察の余地はあるが、結果

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西原理恵子が抱えた負の連鎖

西原理恵子が幼少の頃から上京して漫画家として食べて行けるまで、相当に苦労したことは有名であり、Wikipediaを読むだけでもなかなか大変であったことが伺える。美大に入るまで、入ってからも相当に貧苦に喘いでおり、みうらじゅんとの対談(「ユリイカ」2006年7月号:特集*西原理恵子)で「仕送りが七万で、母子家庭だったからそのうち四万は育英金で、それでどうやって課題をやれっていうんだって。絵の具チュー

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安倍家岸家考⑦(ヤング安倍晋三~キャンパス編)

晋三はエスカレーターでそのまま成蹊大学法学部に進むが、高校時代の同級生は当時の晋三の特に気負う感じのない性質から必然的にそうなったと見ている。
高校時代の同級生・金子浩之(大学は別)は「兄貴(寛信)も普通に成蹊大に行ったし、彼も普通に、なにか自然に成蹊大に行った感じです。結局は16年も(成蹊学園で)過ごして、当時の知り合いをいまも大事にしていますから、成蹊学園が好きでしょうがないんじゃないでしょう

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東京都第23区の選挙結果に残る平成与野党攻防の地層

河村建夫元官房長官の長男・河村建一氏が日本維新の会公認で東京6区から立候補する調整に入った、と報道されている。

河村元官房長官の長男、維新から出馬で調整 21・22年は自民公認(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230620/k00/00m/010/325000c

この3年間での政治家としての河村家の没落は少々気の毒で、21年の衆議院選挙で林芳正(現外相

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南海キャンディーズとオードリーとを評価したM1審査員

放送中のドラマ「だが、情熱はある」の南海キャンディーズとオードリーが両コンビともM1で名を上げたところまで進み、いよいよ佳境を迎えつつあります。
南海キャンディーズは男女漫才の新しい形を、オードリーはいわゆるズレ漫才という独自のスタイルを確立したと言われています。昨今お笑い競技の審査委員問題というのが話題になっていますが、2004年(南キャン)と2008年(オードリー)、両コンビはどのような評価を

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安倍家岸家考⑥(兄の存在)

本稿シリーズ2回めにも書いたとおり、安倍家には長男・寛信がいる。祖父・安倍寛、岸信介の字をそれぞれもらっており、名前からして長男への期待は明らかに高い。
寛信と晋三はふたりとも成蹊学園を小学校から大学まで学び舎にしている。小学校に上がる前(5歳時)、寛信は全寮制(ただし土日は自宅)のインタナーショナルスクールに両親の意向で入らされている。しかし、いきなり放り込まれた外国の子ばかりの環境に馴染めず登

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エルピス牛丼考

秋葉原へ行くと牛丼専門店サンボに入ることが多い。特別に美味い訳ではないが、あの味はサンボにしかないため、ついつい暖簾をくぐってしまう。一般的に外食においては旨いは甘いの原則があり、チェーン店の牛丼は甘みが強いが、サンボの牛丼はしょっぱさの方が上回る。繰り返すが特別に美味い訳ではない。しかし、どこでも食べられる味でもない。
今でこそ接客は優しくなったが、昔は電気街であるにも関わらず携帯電話利用禁止で

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