南海キャンディーズとオードリーとを評価したM1審査員

放送中のドラマ「だが、情熱はある」の南海キャンディーズとオードリーが両コンビともM1で名を上げたところまで進み、いよいよ佳境を迎えつつあります。
南海キャンディーズは男女漫才の新しい形を、オードリーはいわゆるズレ漫才という独自のスタイルを確立したと言われています。昨今お笑い競技の審査委員問題というのが話題になっていますが、2004年(南キャン)と2008年(オードリー)、両コンビはどのような評価を受けたのか、そこに注目して気になったことを書いてみたいと思います。

まず2004年。実はこの年、審査員に異変があった。審査委員長の島田紳助が暴力事件で謹慎となり、事件とは関係ないが松本人志も欠席している。その中で南海キャンディーズの得点は以下のとおり。

中田カウス 94
ラサール石井 95
島田洋七 90
春風亭小朝 92
大竹まこと 86
南原清隆 92
西川きよし 90
合計 639(2位)

大竹まことの評価がやや低いが、それ以外は安定して高得点を獲得した。最高得点はラサール石井の95点。
西川きよしは開口「しずちゃん、ボクとコンビ組んで」から入り、漫才とコントの融合の評価した。島田洋七は「今まで見たことない、最初のサイでつかんでいた」と褒め、ラ・サール石井は「山里君の言うことがひとつも外さない」と絶賛し、中田カウスは「女の子の扱いが優しくて感じがいい」として、新しいタイプの男女コンビであることを評価した。この審査評の時間、山里亮太は満面の笑みを浮かべ続けていた。
決勝はアンタッチャブルの圧勝となったが、唯一南海キャンディーズに票を入れたのが中田カウスであった。

次に2008年。2005年に島田紳助・松本人志体制に戻って4回目、敗者復活戦から上がってきたオードリーの得点は以下のとおり。

中田カウス 98
大竹まこと 92
オール巨人 91
渡辺正行 92
上沼恵美子 92
松本人志 95
島田紳助 89
合計 649(1位)

島田紳助の低評価を押しのけてそれ以外の高評価を受けて1位となる。最高得点は中田カウスの98点。
大竹まことは「こんな漫才見たことない」と絶賛。島田は渋い顔で「僕はあまり評価しなかった…どうみるかというところ」と言葉を絞り出し、「昔見た嫌なのりおよしおさんを思い出した」と笑いに変えてその場を収めた。最後は松本人志が「どんどん面白くなってきて」と高評価で締めくくった。若林正恭は高得点を叩き出した瞬間は目が点となり固まっていたが、審査評の時間は山里同様笑みが止まらず、島田紳助が渋顔の時も素直に澄んだ顔で評価を聞いていた。
決勝はNON STYLEの圧勝だったが、中田カウスと大竹まことがオードリーに票を入れた。

両コンビに共通していたのは、高得点がある一方で一人だけ低評価がいる点と、審査評に今まで見たことのない漫才である、というコメントが寄せられた点であろうか。新しいものが評価される瞬間というのはこのようなものなのかもしれない。

ところで、両コンビのどちらとも評価している審査員が一人だけいる。中田カウスだ。高得点を入れ、決勝でも圧勝した優勝者には入れなかった。もし2004年に松本人志がいたとして、南海キャンディーズを低評価にするとは思えないが、決勝で優勝者として押していたかどうかは分からない。

島田紳助・松本人志・中田カウスの審査員体制は2010年まで続くが、M1グランプリはここで一旦終了する。2015年にM1は復活するが、その時の審査員席に三人の姿はなかった。翌16年に松本人志は復帰するが、島田紳助はすでに芸能界にはおらず、身辺のことで諸々微妙な報道をされていた中田カウスもM1に帰ってくることはなかった。

2008年のM1で中田カウスのオードリー評を聞くことはできなかったが、元気なうちに、たとえば「あちこちオードリー」のような場でオードリーの漫才について語ってもらうことはできないものだろうか。一ファンとして密かに夢想している。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?