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PTSDの理解を深める! 『トラウマのことがわかる本』を読みました #複雑性PTSD


まえがき

 筆者は複雑性PTSDです。
 当事者の方や、その周囲におられる方の参考になればと思い、この記事を執筆しました。
 他にも記事を投稿してますので、興味があればご一読ください。

症状

 災害や事件など、非日常的な恐怖体験によるトラウマを負ったPTSDの方には、以下の症状が出やすくなります。

  • 再体験

 トラウマの記憶が勝手に蘇る、記憶の調節障害の一つで、「フラッシュバック」と呼ばれる。

  • 回避

 トラウマを思い出すような状況を避け続ける。適切な行動がとれない状態。

  • 脅威感

 神経のたかぶりが続く。体の状態をうまくコントロールできなくなる。

 それに追加して、以下の症状がみられる場合を、「複雑性PTSD」としています。

  • 感情の調節障害

 感情をコントロールできなかったり、自分の気持ちがわからなくなったりする。

  • ネガティブな自己概念(認知の調節障害)

 物事の捉え方に歪みが生じ、極端な自己否定感を持ちやすい。自分に対してだけでなく、他者、世界を見る目も変わってしまう。

  • 対人関係の障害

 他者との関係を維持し、親しくなる事が難しくなる。

再体験・フラッシュバック

 トラウマは、時間が経っても薄らぐことはありません。記憶を思い出す度に、まるでその場にいるような苦痛を伴います。
 何が起きているか、言葉にしにくいのも特徴の一つです。
 それが夢の中で再現され、うなされてしまうほどの『悪夢』になることもあります。
 また、意図したわけではないのに、トラウマの事が急に思い出される症状、『侵入症状』に苦しみやすいです。
 自分の意思を無視して頭の中に入り込んでくるような感じがある為、「侵入」という言葉が使われています。
 また、侵入症状が激しい形で現れたものが、『フラッシュバック』です。
 突然、過去のトラウマが今まさに起きているかのように生々しく感じられ、現実感を失ってしまいます。
 そのとき見えていたものが見え、聞こえていたことが聞こえます。
 上記の症状を、周囲から見た様子が、下記になります。

  • 急に表情が変わり、苦しそうになったり、無表情になったりする。

  • 急に黙り込む。

  • 体の動きが止まる。避けよう、逃げようとするような仕草をする事もある。

  • 声かけに反応しない。体に触れるとビクッとしたり、叫んだりする。

 そばにいる人の穏やかな声かけで、現実に戻りやすくなります。

解離性健忘・物忘れ

 記憶が抜け落ちてしまうこともあります。
 記憶の蘇りとは逆に、「重大な事を忘れる」という形で記憶の調節障害が現れる事もあります。

 解離性健忘とは、トラウマになった出来事についての重要な側面を思い出せなくなる症状。
 トラウマが脳の奥底にしまい込まれ、長い時間が経ってから、断片的に記憶が戻ってくる事もあります。

 物忘れもあります。過剰な記憶を抱えている分、日々の記憶が抜け落ちてしまう事もあります。再体験の繰り返しと物忘れは、セットで現れる事もあります。

回避

 回避の症状は、思考と行動の両面に現れます。半ば自動的に起こるもので、自分では分かりにくい症状です。
 思い出すとつらくなるから、考える事を避ける場合があります
 トラウマやそれに関連する事について、考えることそのものを避けてしまいます。トラウマに向き合うことが難しく、回復の大きな妨げになります。
 また、きっかけになりそうな事を避ける場合もあります
 考えないようにしていても、トラウマの蘇りは止められません。記憶が蘇るきっかけになりそうな場所、状況、人、もの、会話、活動を避ける結果、行動が大きく制限される事もあります。

 自分のトラウマに関連する話題を徹底的に避ける→話をしなくなる
 トラウマに関連する場所に決して近付かない→部屋にこもりがちになる
 加害者と共通する要素を感じる人を避ける→人付き合いを避ける

 回避を続けてもトラウマの記憶から逃れられず、感情麻痺に行き着く事もあります。

感情の調節障害

 複雑性PTSDの症状の一つ。『気分の否定的な変化』も、感情の調節障害の一種といえます。
 以下にその症状を記します。

  • 調節の仕方が分からない。

 感情を調節していく能力は、生まれながらに備わっているわけではなく、幼少時に身近な大人とのやりとりを通じて育まれていくものです。
 子供時代にそうした関りを持てない状況に置かれていた場合、自分の気持ちが分からない、調節の仕方も分からないという状態に陥りがちです。

  • ポジティブな気持ちが分からない。

 喜び、幸せ、満足感、楽しさなどを感じにくくなります。

  • ネガティブな感情が消えない。

 恐怖、旋律、怒り、恥辱ちじょく、不安、悲しみ、罪悪感など、トラウマ体験後に生じやすいネガティブな感情が、いつまでも続く状態です。

  • 現実感がなくなる。

 自分の事なのに現実感がなく、どこかよそごとに感じられる状態は、解離の現れの一つです。耐え難い感情を「私」から切り離し、やり過ごしている状態です。

  • 感情麻痺。

 感情の調節障害が行き着く先は、何も感じない状態、つまりは感情の麻痺です。ポジティブな感情を残して、ネガティブな感情だけを排除する事は出来ません。全ての感情を感じないようにするしかないのです。

 虐待を受けている場合などは、感情を押さえつけながら育ちます。抑圧しなくてもよい状況に置かれた時には、爆発的な行動に結びつきやすいです。

認知の調節障害

 認知とは、物事や人に対する見方、考え方のこと。
 トラウマ体験は、自分自身や相手、世界を見る目を変えて、歪ませてしまうことがあります。
 トラウマを負うと世界への信頼感が覆され、認知の根底に否定感が固定されます。また、子供時代に経験すると、そもそも信頼感が育ちにくいこともあります。
 また、自分や世界を否定的に捉えがちになります
 理不尽なことが起きたこと、誰にも守られない、安心できる人も場所もないと感じることで、世間・世界への信頼感は損なわれていきます。
 あまつさえ、相手を否定的に捉えがちになります
 虐待などがトラウマになっている場合、人を信頼すること大変難しくなります。一方、知らず知らずのうちに加害者の考えを取り込み、加害者を理想化してしまうこともあります。

対人関係の障害

 感情や認知、行動などの調節がうまくいかないと、安定した人間関係を築くことも難しくなります。トラウマは、対人関係の在り方にも影響を及ぼすのです。

  • ほどよい距離感を保ちにくい

 誰に対しても、この人は安全か危険か、信用できるか、裏切られるのではないかという思いを持ちながら接しているので、人とのほどよい距離感は取りにくくなります。

  • 相手への期待・評価が両極端になりやすい

 信用できると思う相手には完璧さを求め、どこまでも受け入れてほしいと無制限に期待してしまいます。しかし、その期待に応えられる人は少なく、裏切られたという思いを抱きがちです。

  • 過去の関係をなぞってしまう

 「いやだな」と思うことがあった時、それを相手のせいにして一方的に責め立てていると、関係は壊れてしまうこともあります。相手と自分を、過去に経験した加害者と被害者の関係に当てはめてしまうと、こうした事態が起こりやすくなります。

  • 支配・被支配の関係から逃れにくい

 人との関りがもたらすトラウマは、様々な力の差のもとで生じます。支配・被支配の関係もその一つです。
 自分よりパワーのある人に操られることで、対等な関係とは何か、どうやって自己調節すればよいかわからなくなります。
 支配・被支配の関係を逃れるには、まず対等な関係とは何か認識しつつ、自分をコントロールする力をつけていく必要があります。それがうまくいかないと、再び支配・被支配の関係にはまり込みやすくなります。

 トラウマによる各種の調節障害は、対人関係をより難しいものにします。人とかかわる機会を避けたり、いつもイライラしていたり、安心できる相手には怒りをぶつけてしまったり――
 こうした状態が続けば、安定した関係は結びにくくなります。
 さらに自己否定感やネガティブな感情が強まっていくことにもなりかねません。

トラウマは三つの反応を引き起こす

 危険を感じた時にはストレス反応が起こり、身体的な変化が生じます。そのパターンは三つあり、英語の頭文字をとって、「三つのF」といわれています。

  • 闘争(Fight)

 危険に立ち向かい、脅威を与えるものや状況、人を攻撃し、打ち負かすことで現状を打破しようとする反応です。
 過活動、攻撃的な言動、反抗的になる、限界を試すなど。

  • 逃走(Flight)

 危険な状況から逃げ出すことで、命を守ろうとする反応です。人付き合いを避けるといった回避行動は、逃走反応が固定化した症状の現れ方の一つです。
 引きこもり、孤立、回避など。

  • 凍りつき(Freeze)

 あまりの恐怖に立ちすくみ、凍りついたように動けなくなってしまう状態。闘うことも、逃げることもできない子供が用いることのできる唯一の方法といえます。副交感神経のうち、古い神経回路の働きが強まった状態です。
 ぼうっとすることが多い、記憶の抜け落ちが目立つ、無感情など。

誰が治すのか?

 「治すのは自分」という意識が回復を促します。ただ、自覚が大切とはいえ、「一人で何とかしなければならない」というわけではありません。
 トラウマの影響で家庭生活や職業生活、学生生活が損なわれていたり、調節できない睡眠障害や感情調節の障害があるなどといった場合は、専門家の助けを借りながら、回復を促していく必要があります。

  1. まずは福祉センターや保健所の相談窓口に相談する。

  2. 精神科で診断・治療をしてもらう。

  3. トラウマの専門家に心理療法など、各種のセラピーを受ける。

 自分を嫌ったままで回復の道を歩むのは困難です。自分を大切にすること、今の自分を認め、受け入れることから回復は始まります。

読書感想文

 複雑性PTSDの当事者や、この障害を持っている方と接する機会のある人に、オススメの1冊です。
 全て図解で読みやすく、難しい言葉を使わず、簡潔に記されています。なので頭に入ってきやすかったです。
 「あ、これ私のこと的確に表してる!」と思える表現に多々出会えました。
 複雑性PTSDの方は、自分で自分を理解していない方が多いと思います。かく言う私もそうです。だからこそ、こういった本で自己理解を深め、1歩でも回復に近付けると良いかと思いました。

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