記事一覧
2023年春。『ミュータンス・ミュータント』百景(ももけい)、始めました。
2017年に単行本、2021年に文庫改訂版が出版された私の長編ミステリー小説『ミュータンス・ミュータント』(幻冬舎ルネッサンス新社、現・幻冬舎ルネッサンス)。
昨年2022年の9月には長編の続編小説『ミュータンス・ミュータントⅡ 珊瑚の欠片(さんごのかけら)』を、このnoteにて公開しました。
そしてこのたび、新たに『ミュータンス・ミュータント』の仮想世界に新たな息吹を吹き込むべく、本編の物語
『ミュータンス・ミュータント』百景episode10…「奈江の天体観測」
北の夜空に目を向けると、ペルセウスの輝きがぼんやりと白い天の川の流れに垣間見える。すぐ近くには、カシオペアのWの形が二等星である北極星の道標となり、真北の方向を教えてくれている。
「とすると…」
そう呟きながら菊地奈江はくるりと180度ターンして、夜空を再び見上げた。
「あった、あった!」
彼女は歓喜の声を上げた。周りには誰もおらず、彼女一人きりである。
2033年、7月28日。
高校生の彼女
「ミュータンス・ミュータント」百景episode9…「真相の深層」
「歴史的背景からすると、このような奇妙な事態が起きることは、ある意味で必然と言えるかもしれませんな」
「と申しますと?」
「いやね。この村の古くからの言い伝えで『滝の近くで下駄を脱ぐべからず』というのがありましてな。雁木村の者は誰一人として、滝の近くでは下駄どころか靴さえ脱ぎません。しかも、『近く』というのが実際にどの程度の距離を表しているのか、実に曖昧な言葉でしてな。結局、裸足になって滝で水
『ミュータンス・ミュータント』百景episode8…「譲れない柚子」
「へい、お待ちぃ」
藍色の作務衣を羽織った大将の威勢のいいひと声で出された黒牛の炙り寿司は、仄かに黒光りするオブジェの如き石の器に、色とりどりで鮮やかな旬の春野菜の焼き物の傍らへ優雅に盛り付けられた。
桜鯛や稚鮎といった旬の魚の一品が美味いと評判のこの小料理屋はカウンター席だけのこぢんまりとした佇まいだが、もはや定番となった薩摩の黒牛を使った炙り寿司などのメニューも人気が高く、舌の肥えた食通が隠
『ミュータンス・ミュータント』百景episode7…「偽りなき虚偽」
「何だって!殺人ミュータンス菌!?」
自宅のダイニングで夕食の下ごしらえをしながらテレビのニュースを見ていた柿井沙羅は、速報のテロップに目が釘付けになった。
1998年12月18日、年の瀬。
色とりどりの飾りに彩られたクリスマスツリーが灯りを点滅させているリビングでは、息子の悟がジグソーパズルに夢中で、ニュースは耳に入っていないらしい。
しかし、沙羅の驚きの声にはさすがに反応したようで、「ママ
今年になってすでに13雑誌で記事掲載、10雑誌で連載掲載。その執筆ノウハウとは?
タイトルのように、5月始めの時点ですでに13の異なる雑誌で私の記事が掲載され、10の異なる雑誌で私の連載が掲載されました。
毎月出る連載なら1〜5月号で5記事、隔週なら月2のペースなので、今年執筆した記事数はトータルで…とにかくいっぱいです。笑
雑誌名や何月号などの説明はここでは割愛しますが、私のTwitterアカウントやブログ『由流里舎農園』ですべて記載しておりますので、もしご興味がありまし
『ミュータンス・ミュータント』百景episode6…「老田のあくま」
1999年5月末。京都、貴船。
馴染みの料亭で季節の川床料理に舌鼓を打ちながら、老田は妻の加奈子と語らっていた。
頭上には青もみじが一面を覆い、初夏の日差しを浴びて爽やかな新緑の風情を醸し出している。手を伸ばせば届く距離にある川の流れは、キラキラと輝きながら静かなせせらぎを奏でている。
「学生時代、米国のボストン美術館に行った時に…」
老田は、その時出会った不思議な絵画について語り始めた。
私の創作の原点となるミステリー小説『金属年数』…近日全文公開予定。
この『金属年数』という小説は、私が13年前に初めて文学賞に応募した作品です。その文学賞は、第2回創元SF短編賞(2010年公募〜2011年大賞発表)。
応募作品総数594。その時のサイトには「予想を大幅に上まわる応募数」と記されています。そして、私の作品は一次選考を通過した56作品に運良く(初応募なので)選ばれました(現在でもサイトに掲載されています)。
今思えば、この時に落選していたら、もう
『ミュータンス・ミュータント』百景episode5…「冷製と除熱のあいだ」
外からの雨音が、途切れることなく続いている。
朝にラジオできいた天気予報では、「昼過ぎから雨模様でしょう」と話していた。天気予報を鵜呑みにするつもりは毛頭ないが、午前中は大丈夫だろう、と鷹を括っていた。
しかし、である。
11時を過ぎた辺りからポツポツと降り始め、間もなく14時になる今は、本降りの風情だ。
もはや畑の作業はできないので、畑の傍らにある丸太小屋に避難した。そして今は、ゆったり
『ミュータンス・ミュータント』百景episode4…「鷲と鷹」
「捜査本部が示した資料によると、巣鴨の被害者は24歳の男性、独居でした。昨夜23時過ぎに帰宅したのを、アパートの隣人が確認しています」
「確認?てことは、実際に彼が帰宅してきた姿を目で見たわけじゃないんだな」
「はい。隣に一人で住む32歳女性によると、その時間に玄関のドアを開ける音が聞こえた、と話していました。いつもだいたい22時を過ぎる時間帯が多かった、とも話していました」
「俺はマンショ
『ミュータンス・ミュータント』百景episode3…「わたしの綿菓子」
「また、ポッキー?」
西野は阿部に向かい、ニヤリとしてみせた。
「うん。毎朝、駅前のコンビニで買うからね。もう日課みたいになっちゃって、店員さんにも顔馴染みになってる」
阿部は穏やかに笑った。
「たぶん、『ポッキーのお姉ちゃん』とか、陰で呼ばれてるよ」
西野は声をひそめた。
かつての活気に満ちた編集部のオフィスでは、そこかしこで仕事や私語の会話が繰り広げられていたが、不況の煽りを受けて最近
『ミュータンス・ミュータント』百景episode2…「見えざる胸囲」
「うんめい、これ。やっぱり定番にハズレはないよな」
隣にある病理学講座で大学院生をしている同期の澤田から学会土産としてもらった伊勢名物の赤福餅を口に頬張りながら、水津は思わず唸った。
「久しぶりに食べてみたいな、なんて思っていた絶妙なタイミングで思わぬ差し入れ。これもスイーツ好きの僕に定められた運命なんかな。やっぱり、うんめい」
下らぬ駄洒落を呟くと、甘党の彼が美味しいものに出会うことに運命的な
『ミュータンス・ミュータント』百景episode1…「麻衣の舞」
「やっぱり違うな。さようなら」
書きかけの歌詞を消しゴムで丁寧に消しながら、イメージと違った言葉の羅列に麻衣は別れを告げた。
中華料理店の2階。ところどころ破けた畳に胡座をかいて机に向かう。
曲作りは、寝る前の毎日の日課だ。メロディーから先に思いつくこともあるし、歌詞が突然降ってくることもある。
2022年は雑誌掲載三昧でした。
令和4年、2022年の今年は春以降、多くの雑誌で私が執筆した記事が掲載された1年でした。
今日現在、12雑誌で記事掲載、6雑誌で連載掲載。
ジャンルは医療系、介護・福祉系、農業系など、本業の歯科医師関連から野菜ソムリエの肩書きでも執筆させて頂きました。
ブログ「由流里舎農園」(12月23日配信)でも記載しましたが、こちら附属note畑でも簡単ですが、載せておきますね。(掲載順。何月号などはブロ
続編『ミュータンス・ミュータントⅡ珊瑚の欠片』全文公開・完全版。
2017年に単行本、2021年に文庫改訂版が出版された私の長編ミステリー小説『ミュータンス・ミュータント』(幻冬舎ルネッサンス新社)。写真は文庫改訂版ですね。
2021年7月には映画作品『ミュータンス・ミュータントTHE MOVIEー20年越しの正義ー』のYouTubeでの一般公開が始まり、8月には横浜の小劇場・STスポットにて演劇作品の舞台公演が実現しました。さらに今年3月に京都で開催された映