ＪＷ５６５　忌部氏登場

【伊勢遷宮編】エピソード24　忌部氏登場

第十一代天皇、垂仁天皇すいにんてんのうの御世みよ。

紀元前4年、皇紀こうき657年（垂仁天皇26）。

天照大神あまてらすおおみかみ（以下、アマ）の鎮座地ちんざちを求める、倭姫やまとひめ（以下、ワッコ）一行は、ついに、約束の地に辿たどり着ついた。　

登場人物一覧表（倭姫の一行）

登場人物一覧表（五人の大夫）

地図（三重県伊勢市宇治中之切町）

地図（おかげ横丁）

地図（聖地へ）

ワッコ「それでは、この地に宮みやを建たてる。まずは、草や木の根を刈かり取とり、石で凸凹でこぼこしている地を平たいらかにするのじゃ。」　

カーケ「かしこまったんだぜ。」　

ワッコ「そして、遠くの山や近くの山の大きな谷や小さな谷に生える木々を、忌部氏いんべ・しが清めた聖なる斧おので切り取るのじゃ。」　

インカ「忌部氏いんべ・し？」　

ワッコ「忌部氏いんべ・しを知らぬのか？　代々だいだい、祭祀さいしを司つかさどる一族じゃ。」　

するとそこに、忌部和謌富奴いんべ・の・わかとみぬこと『わかとん』がやって来た。　

わかとん「お初にお目にかかりまする。初代、神武天皇じんむてんのうの橿原宮かしはらのみやを建てた、天富命あめのとみ・のみことの孫まご『わかとん』にござりまする。」　

系図（忌部氏：わかとん）

オーカ「ちっ。ついに登場したのであらしゃいますなぁ。」　

わかとん「この日を、どれだけ待まち望のぞんでいたことか！」　

市主いちぬし「これは如何いかなる仕儀しぎにござりまするか？　祭祀さいしを司つかさどるのは、中臣氏なかとみ・しではありませなんだか？」　

武日たけひ「じゃがそうだよ。じゃっどん、祭祀を司つかさどる一族は、もう一つ、存在したんやじ。」　

カット「もう一つ？　なにゆえ、二つの一族が司つかさどっておるのですか？」　

オーカ「我われは、大伴氏おおとも・しと久米氏くめ・しの関係性と、同じではないかと考えておりますぅ。」　

わかとん「何なに？　大伴おおともと久米くめ？　どちらが、大伴で、どちらが、久米なのじゃ？」　

乙若おとわか「たしか・・・大伴氏は、軍全体を指揮しきする一族で、久米氏は、兵士たちを指揮する一族でしたな？」　

武日たけひ「簡単に言えば、大伴おおともは将軍で、久米くめは侍大将さむらいだいしょうといった感じになるっちゃが。」　

オーカ「祭祀においても、同じことが言えると思うのであらしゃいます。我わが中臣なかとみは、祭祀の全体を司つかさどり、忌部氏いんべ・しは、祭祀の道具を支度したくするとか、社やしろを建たてるなどの務めを司つかさどっていたのではないかと・・・。」　

わかとん「忌部氏いんべ・しが、中臣なかとみの風下かざしもに立つじゃと？　気に入らん！」　

オーカ「違いますぅ。分担ぶんたんにあらしゃいます。」　

わかとん「モノは言いい様ようじゃ！　中臣なかとみの奴やっこと思うておるのではないか？」　

オーカ「そのようなこと・・・あらしゃいません。されど、我われは大夫たいふで、汝なれは、ただの忌部いんべ・・・。もう言わずとも知れたことでは？」　

わかとん「嗚呼ああ！　その言い方が、何なんか腹はら立たつ！」　

おしん「でも、どうして、これまで忌部氏いんべ・しが登場してなかったんだ？」　

わかとん「うっ！　それは・・・。」　

ちね「まあ『記紀きき』において、子孫がほとんど登場せぇへんからなぁ・・・。しゃぁないやろ。」　

アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」　

ワッコ「と・・・とにかく、切り取った木の、根っこと枝葉えだはは、山の神である、大山祇神おおやまづみのかみに捧ささげ、中間なかさだを用もちいて、社やしろの柱はしらを作るのじゃ。」　

ねな「清めた聖なる鋤すきを使うのが、ポイントよ。」　

わかとん「ポインツ？」　

ワクワク「ちなみに、社の柱は、天あめの御柱みはしらとも、心しんの御柱みはしらとも言うよ。」　

ワッコ「うむ。高天原たかまのはらに届とどかんばかりの千木ちぎ高たかい柱を作るのじゃ。」　

くにお「高い柱ということは、太い柱ということでもありますな。」　

ワッコ「その通りです。そして、土中どちゅう深ふかくの岩に、大宮柱おおみやばしらを広く敷しき奉たてまつり、『アマ』様の荒魂宮あらみたま・のみやと和魂宮にきみたま・のみやを並べ建て、鎮しずめ奉たてまつるのじゃ。」　

一同「御意ぎょい！」×１４　

そこに大勢の人たちがやって来た。　

大勢の人「おおい！　おおい！　来ましたぞ！」　

ちね「おっ！　物部八十友諸もののべの・やそとものおやで。大工だいくのおっちゃんたちっちゅうことやな。」　

こうして、建造が始まったのであった。　

つづく