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JW613 非時の香菓

【景行即位編】エピソード2 非時の香菓


西暦71年、皇紀こうき731年(景行天皇元年)3月12日。

ここは、纏向珠城宮まきむくのたまき・のみや

地図(纏向珠城宮)

田道間守たじまもり(以下、モーリー)が、蜜柑みかんたずさえて、常世国とこよのくにから帰ってきた。

日嗣皇子ひつぎのみこ大足彦忍代別尊おおたらしひこおしろわけ・のみこと(以下、シロ)や、大連おおむらじ大夫たいふたちが居並いならぶ中、「モーリー」は、不思議なことをべるのであった。

蜜柑
系図(モーリー)
系図(シロ)
人物一覧表(大連、大夫たち)

モーリー「『古事記こじき』の記述にしたがって、八竿やほこ八縵やかげのうち、四竿よほこ四縵よかげ大后おおきさきささたてまつり、残りを、大王おおきみみささぎの入り口にそなえたいと思います。」 

シロ「大后おおきさき?」 

モーリー「はい。大后おおきさきささげようと・・・。」 

ちね「なにうてんねん。大后おおきさきなんて、らんでぇ。」 

モーリー「えっ? しかし、『古事記こじき』では・・・。」 

オーカ「『古事記こじき』では、大后おおきさきが、おかくれではないようですなぁ。」 

シロ「なんじゃと!?」 

するとそこに、垂仁すいにん天皇てんのうきさきで、大后おおきさき日葉酢媛ひばすひめ(以下、ひばり)の妹たちが、自身の子供たちを連れてやって来た。 

系図(亡き大后の妹と子供たち)

マー「姉上が、おかくれになってるんだから、ここは、私たちの出番でしょ?」 

シロ「叔母上おばうえ? そうなりまするか?」 

バタ子「だって、誰かが食べなきゃいけないんでしょ? だったら、私たちをいて、ほかにいますか?」 

ちね「せ・・・せやね。」 

あざみ「それじゃあ、いただきまぁぁす!」 

円目つぶらめ「おお! 美味おいしゅうござりまするぞ! 日嗣皇子ひつぎのみこ!」 

シロ「そ・・・そうか。」 

ヌテシ「本当に、美味おいしくて、これで、こころきなく引退出来できまする。」 

くにお「なっ! 初登場で、引退なされると?」 

ヌテシ「はい。われは、名のみの登場なのです。ちなみに、われの子孫は、和気氏わけ・しとなります。よろしく御願い致します。」 

シロ「あいかった。」 

イッカ「ま、いっか、私も引退しちゃお!」 

カーケ「そうなるのかね?」 

イッカ「はい。私も、名のみの登場なんで・・・。」 

バタ子「ごめんね。私が、活躍しなかったばっかりに・・・(´;ω;`)ウッ…。」 

シロ「叔母上おばうえは、なにわるくありませぬぞ。」 

バタ子「ありがとうね。じゃあ、私も、子供たちと一緒に、引退します。」 

オーカ「そうなるので、あらしゃいますか?」 

イケイケ「エピソード541以来の登場にござりまするが、われも引退となりまするぞ。」 

武日たけひ「イケイケ様も?」 

イケイケ「うむ。ちなみに、われ御墓おはかは、三重県みえけん伊賀市いがし阿保あおに有りまするぞ。息速別命墓いこはやわけ・のみことのはかとなっておりまするが、われ別名べつめいですので、しからず・・・。」 

あさ「兄上? 遺跡としての名前は、西法花寺にしほっけじ古墳こふんなんですよね?」 

イケイケ「その通り! いつでも、おまいりにてくだされ。」 

地図(池速別命墓:西法花寺古墳:息速別命墓)
池速別命墓(拝所)

あさ「そういうことで、私も、引退しちゃいます。」 

あざみ「二人とも、引退しちゃうのね。だったら、私も、引退しちゃうわ。」 

ちね「どういう、展開やねん。」 

マー「そっか・・・。『バタ子』も『あざみ』も、引退するのね。それじゃあ、私も、引退するわ。」 

シロ「か・・・かしこまりもうした。」 

円目つぶらめ義母上ははうえ。お達者たっしゃで・・・。」 

マー「えっ? 円目つぶらめ? なれは引退しないの?」 

円目つぶらめ「まだ、出番が残っておりますので・・・(;^_^A」 

マー「そ・・・そういうことなら、仕方しかたないわね。」 

こうして、大后おおきさきの妹たちと、産まれてきた皇子みこ皇女ひめみこたちも、クランクアップとなったのであった。 

くにお「とにかく、食べていただけて、良かったな。」 

モーリー「そうですね。では、残りの蜜柑みかんささたてまつるため、大王おおきみみささぎに向かいたいと思います。」 

オーカ「菅原伏見東陵すがわらのふしみのひがし・のみささぎにあらしゃいますよ。遺跡としての名前は、宝来山ほうらいさん古墳こふんにあらしゃいます。」 

武日たけひ「二千年後の地名で言えば、奈良県ならけん奈良市ならし尼辻町あまがつじちょうになるっちゃが。」 

地図(垂仁天皇陵:菅原伏見東陵:宝来山古墳)
垂仁天皇陵(拝所)

モーリー「御説明、ありがとうございます。」 

そして「モーリー」は、みささぎに到着した。 

モーリー「大王おおきみ・・・(´;ω;`)ウッ…。常世国とこよのくにの、非時ときじく香菓かくのみかえりましたよ。御前ごぜんささたてまつります。しかし・・・(´;ω;`)ウッ…。もう・・・大王おおきみは、られないんですね。大王おおきみに、こと出来できないだなんて・・・。私が生きていても、なんえきが有るでしょうか!」 

そうさけぶと「モーリー」は、自害じがいしたのであった。 

つづく

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