見出し画像

JW595 高志で暴れる者

【垂仁経綸編】エピソード17 高志で暴れる者


第十一代天皇、垂仁すいにん天皇てんのう御世みよ

そんなある日のこと・・・。

ここは、纏向珠城宮まきむくのたまき・のみや

地図(纏向珠城宮)

垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊いくめいりひこいさち・のみこと(以下、イク)の元に、高志国こし・のくに(現在の北陸地方)から、ある人物が参内さんだいしていた。

その人物とは、能登国造のと・のくに・のみやつこ(現在の石川県北部)となっている、大入杵おおいりき(以下、リキ)である。

大連おおむらじ大夫たいふたちが見守る中、「リキ」は、語り始めるのであった。 

地図(高志国と能登国)
系図(リキ)
人物一覧表(大連、大夫たち)

リキ「大王おおきみ・・・。ひさしぶりやなぁ。」 

イク「義兄上あにうえ・・・。お久しぶりです。」 

リキ「立派な大王おおきみになって・・・。わてを、泣かす気か・・・(´;ω;`)ウッ…。」 

イク「ありがとう、義兄上あにうえ。それで、国中くんなか(奈良盆地)まで来た理由わけを、聞かせてしいんだけど・・・。」 

リキ「ああ・・・。じつは・・・ぞくあばれてるんや。」 

イク「えっ!?」 

ニック「いつごろから、暴れておりますのや?」 

リキ「分からん。ただ、凶賊きょうぞくとしか、書かれてへんのや。」 

くにお「そもそも、なんという書物しょもつに書かれておるのですか?」 

リキ「はじめにうとくけど、長いで。」 

ちね「勿体もったいぶらんで、はようてください。」 

リキ「その名も『豊受太神宮・禰宜・補任・次第とようけたいじんぐう・ねぎ・ぶにん・しだい』やで。」 

カーケ「な・・・長いんだぜ。」 

オーカ「省略しょうりゃくして『禰宜次第ねぎしだい』で、よろしいのではあらしゃいませんか?」 

ちね「勝手に、省略しょうりゃくして、ええんか?」 

イク「ゆるす。」 

武日たけひ「して、高志こしものたちでは、そのぞくつことあたわぬと?」 

リキ「せやっそうだ。そこで、おちからえをいただきたく、まかしましたる次第しだいっちゅうことやな。」 

ニック「高志こしものたちでしずめられんっちゅうことは、それなりのごうものっちゅうことですな?」 

リキ「せやでその通り阿彦あひこうて、高志国こし・のくに縦横無尽じゅうおうむじんに暴れまわってんのや。」 

イク「よし! それじゃあ、ただちに人数にんずうを送ろう! ひきいる将軍は、誰が、いいかな・・・。」 

武日たけひ「そんげなコツ、考えるまでも無いっちゃ。『おい』をいて、ほかに誰が・・・。」 

イク「よし! 大若子おおわくごこと『ワクワクさん』にしよう!」 

武日たけひ「なっ!? なしてなぜ、そんげなコツになるんや?」 

イク「なぜって? そう書かれてるからだよ!」 

武日たけひなしてなぜ、『禰宜ねぎなんちゃら』は『おい』の名前を書いちょらんのや!」 

するとそこに、二人の皇子みこが乱入してきた。

五十瓊敷入彦いにしきいりひこ(以下、ニッシー)と、日嗣皇子ひつぎのみことなった、大足彦忍代別尊おおたらしひこおしろわけ・のみこと(以下、シロ)である。 

系図(ニッシー、シロ)

ニッシー「いくさかおりをいで、やって来ました!」 

シロ「討伐とうばつには、いのようのはず・・・。われ副将ふくしょうをば!」 

ニッシー「なに、言ってんの? なれ日嗣皇子ひつぎのみこでしょ? ここは、僕が・・・。」 

シロ「いやいや、兄上だけでは、心許こころもとのうござれば・・・。」 

ニッシー「はぁ? なれに、もしものことが有ったら、どうするの? 兄の想いが、からないかなぁ。」 

リキ「二人とも、『イク』にてへん、たのもしい若人わこうどやなぁ。」 

シロ「こ・・・これは、伯父上おじうえ。お初にお目にかかりまする。」 

リキ「気付きづいてなかったんかい!」 

ニッシー「だって、それどころじゃないでしょ!?」 

リキ「それどころって・・・。」 

イク「よし! それじゃあ『ニッシー』をいのにんじよう!」 

ニッシー「やったぁぁ!」 

シロ「お・・・大王おおきみ得心とくしん出来できませぬ。」 

イク「『ニッシー』の言う通り、『シロ』は、日嗣皇子ひつぎのみこなんだよ? どうしても行きたいって言うのなら、日嗣ひつぎ退しりぞいてからに、してしいな。」 

シロ「そ・・・そのような・・・。ちちう・・・大王おおきみ!」 

一方、伊勢国いせ・のくにでは・・・。

ここは、五十鈴宮いすずのみや

二千年後の伊勢いせ神宮じんぐう内宮ないくうである。

倭姫やまとひめ(以下、ワッコ)と「ワクワクさん」は、困惑こんわくしていた。 

地図(五十鈴宮:伊勢神宮内宮)
伊勢神宮:内宮
系図(ワッコ)

ワクワク「どうして、僕なの?」 

ワッコ「なにゆえかとわれても、私には、そう書かれているから・・・としか言えぬ。」 

ワクワク「そういうことなら、仕方しかたないね! 僕、頑張がんばるよ!」 

ワッコ「う・・・うむ。よろしく頼む。」 

なにはともあれ、阿彦あひこ討伐軍とうばつぐん編成へんせいされたのであった。 

つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?