JW537 青葉の山
【垂仁天皇編】エピソード66 青葉の山
第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。
紀元前7年、皇紀654年(垂仁天皇23)冬。
垂仁天皇の皇子(みこ)、誉津別(ほむつわけ)(以下、ホームズ)が言葉を発しないのは、神の祟(たた)りが原因だと判明。
祟りを鎮(しず)めるため、「ホームズ」一行は、出雲国(いずも・のくに:島根県東部)に向かう。
大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)の社(やしろ)を大きく立派なモノに改築(かいちく)する使命を帯(お)びて、曙立王(あけたつ・のきみ)(以下、アッケン)と、菟上王(うなかみ・のきみ)(以下、うなお)は解説をおこなうのであった。
うなお「大きな社を建てねばなりませぬな。」
ホームズ「・・・・・・(二人を見つめる)。」
アッケン「うむ。そのためには、まず、皇子が住まう、行宮(あんぐう:仮の宮)を建てねば・・・。」
うなお「行宮? 何処(いずこ)に建てられると?」
アッケン「それが、よく分からぬ。檳榔長穂宮(あぢまさのながほ・のみや)という名は、分かっておるのじゃが・・・。」
するとそこに、出雲国造(いずも・のくにのみやつこ)の襲髄(かねすね)(以下、カネス)がやって来た。
カネス「読者の皆様、お久しぶりにござる。エピソード506以来の登場にござる。」
うなお「おお! カネス殿! この物語では、近頃、出雲国造になられたと聞き及んでおりまするが・・・。」
カネス「左様。なにゆえ、代替わりをしたのか・・・。それは、我(われ)の息子、岐比佐都美(きひさつみ)こと『さつみ』を登場させるためにござる。」
さつみ「お初にお目にかかりまする。我(われ)が『さつみ』にござりまする。」
カネス「我(わ)が子『さつみ』が、皇子の世話役となり、御饗(みあえ:食事のもてなし)の支度(したく)など、執(と)りおこないまする。気兼ねなく、何でも仰(おっしゃ)ってくださりませ。」
アッケン「かたじけのうござる。」
カネス「行宮についても、御心配、召(め)されるな。すでに建てておりもうす。」
うなお「なっ!? まことにござるか?」
カネス「嘘(うそ)を吐(つ)いても、仕方がありませぬからな・・・。肥川(ひのかわ)に、黒い皮を残した丸太橋(まるたばし)を作り、そこを渡った先に、行宮を建てもうした。」
さつみ「肥川とは、斐伊川(ひいかわ)のことにござりまする。そして、宮の跡と伝わるのが、富能加神社(ほのかじんじゃ)にござりまする。」
アッケン「大王(おおきみ)の宮は、石碑だけの有様(ありさま)というに、行宮は、社となるのか・・・。」
カネス「ちなみに、祭神(さいじん)は、大国主大神にござる。」
さつみ「二千年後の地名で言うと、島根県出雲市(いずもし)の所原町(ところはらちょう)に鎮座(ちんざ)しておりまする。」
うなお「・・・となると、行宮が建てられた地は、所原町ということになるが、肥川こと斐伊川から、かなり離れておるのではないか?」
カネス「橋を渡った先・・・という点では、嘘は吐いておりませぬ。」
アッケン「そ・・・そうなるのか・・・。」
さつみ「では、御一行に、御饗を献上致しましょう。」
うなお「おお・・・ありがたい。腹が減っておったのじゃ。」
ホームズ「・・・・・・。」
このとき「さつみ」は、川下(かわしも)に青葉(あおば)の山を作り、食事を献上した。
アッケン「これは、どういうことにござる?」
カネス「よく分かりませぬが、飾り立てて、歓迎の意を表したのやもしれませぬな。」
さつみ「二千年後で言う『デコレーション』とか、そういうヤツかもしれませぬな。」
ホームズ「か・・・川下の青葉の山・・・山に見えて、山にあらず・・・。」
うなお「えっ? 皇子?」
ホームズ「もしや・・・大国主様を祀(まつ)る、祝(はふり:神を祀る人たち)の祭場・・・磐境(いわさか)では?」
アッケン「み・・・皇子が喋(しゃべ)った・・・。」
唐突な展開。
一体、どうなるのか?
つづく
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