ＪＷ６４５　速津媛

【景行征西編】エピソード16　速津媛

第十二代天皇、景行けいこう天皇てんのうの御世みよ。

西暦82年、皇紀こうき742年（景行天皇12）10月。

船路ふなじを進む、景行天皇こと、大足彦忍代別尊おおたらしひこおしろわけ・のみこと（以下、シロ）の一行は、ある島にて、休息していた。

そのとき「シロ」が、美しい海藻を発見。

兵士たちに、採とってくるよう命じたのであったが・・・。　

筑紫行幸参加者名簿

地図（海へ）

海藻

もち「潜もぐるのは、不得手ふえてやじ！」　

シロ「どうするのじゃ！　これでは、伝承が成なり立たたぬではないか！」　

兵士（い）「成なり立たちまする。」　

シロ「なにゆえ、そう申もうせる？」　

兵士（ろ）「潜もぐるのを得手えてとしている御方おかたがおりますれば・・・。」　

シロ「何なに？」　

兵士（は）「百足ももたり様！　海人あまの長おさとしての御力おちから、見定みさだめさせていただきまする！」　

百足ももたり「呼よばれた上うえは、出ねばなるまい！　刮目かつもくせよ！　我わが力ちから！」　

シロ「そ・・・そうか！　これまで語られておらなんだが、百足ももたりは、海神わたつみの子孫で、海人あまの長おさなのであったな。」　

百足ももたり「左様さよう！　兵つわものたちに成なり代かわり、採とって参まいりまする！」　

そう叫ぶと、百足は、兵士たちが成し遂げるべきことを、やってのけたのであった。　

百足ももたり「『海藻め』は、これくらいで、よろしゅうござりまするか？」　

シロ「うむ。見事みごとじゃ！　褒ほめてつかわす。」　

百足ももたり「勿体もったいなき言ことの葉は・・・。」　

影媛かげひめ「き・・・きれい・・・(〃艸〃)。」　

やぁちゃん「まことに美うつくしゅうござりまするなぁ・・・(⋈◍＞◡＜◍)。✧♡。」　

シロ「うむ。これよりのちは、この島を『最勝ほつ海藻めの門と』と名付なづけようではないか。」　

えっさん「優すぐれた海藻めの港みなと・・・という意味にあらしゃいます。」　

ヤヌシ「秀ほ津つ芽め之の門と・・・とも、書くなり！」　

たっちゃん「後のちの世よには、名なが、短くなったようじゃな？」　

ワオン「左様さよう。保戸島ほとじまになりもうした。」　

いっくん「短くなった？　どこがやねん？」　

おやた「『いっくん』・・・。字を、よく見てくだされ。」　

いっくん「えっ？　字？」　

モロキ「初めの字と、終わりの字・・・。」　

いっくん「『ほ』と『と』やな？」　

野見のみ「なるほど・・・。『ほと』か・・・。」　

いっくん「えっ？　初めと終わりをくっ付けて、保戸ほとってこと？　これって、短くなったって言ゆう？　原型げんけい、留とどめてないと思うんやけど・・・。」　

シロ「これで、良いのじゃ。」　

いっくん「大王おおきみ？！　バ〇ボンのパパになってますよ！」　

小左おひだり「これが、大分県津久見市つくみしの保戸島ほとじまに伝わる、地名ちめい説話せつわにござる。」　

地図（保戸島）

保戸島（近景）

なにはともあれ、一行は、更に船路ふなじを進み、ある浦うらに辿たどり着ついた。　

シロ「して、ここは何処いずこじゃ？」　

舟木ふなき「ここは、宮浦みやのうらにござりまする。」　

シロ「二千年後の地名で申もうせば？」　

タケ「大分県佐伯市さいきしの米水津よのうづ宮野浦みやのうらじゃ。」　

地図（宮浦→佐伯市米水津宮野浦）

シロ「米水津よのうづ！？」　

ナッカ「どうしたんすか？」　

シロ「『ナッカ』・・・。米水津よのうづじゃ。あの・・・米水津に参まいったのじゃ。」　

もち「『おい』たちの御先祖様ごせんぞさまが、東征とうせいを始めた折おり、米と水を補給ほきゅうしたと考えられちょる土地やじ。」　

ナッカ「あっ！　エピソード3の話っすね？」　

シロ「そうじゃ。神武じんむ天皇てんのうの息吹いぶきを感じるような・・・。そんな気がするぞ・・・。」　

リトル「うぎゃう！　うぎゃ！」　

シロ「ん？　どうしたのじゃ？」　

夏花なつはな「あっ！　出迎でむかえが、来ておりまするぞ！」　

小左おひだり「かなりの人数にござりまするな。」　

一行を出迎えた一団の中から、一人の女が進み出る。　

女「お待まちしちょりました。」　

シロ「何者なにものじゃ？」　

女「『うち』が、速見邑はやみ・のむらの魁帥ひとごのかみ（首長しゅちょうのこと）、速津媛はやつひめこと『はやや』っちゃ。迎むかえに来きたに。」　

ウナ「おい！　『はやや』！　何なんしちょるんかえ？！　なしなぜ、ここに居おるんじゃ？！　あっちあられん考えられん！」

はやや「そげんコツ言われても『豊後国ぶんご・のくに風土記ふどき』に、宮浦みやのうらで迎むかえたじ、書かれちょるに。仕方しかたねぇっちゃ。」　

シロ「待て、待て・・・。まず、速見邑はやみ・のむらとは、二千年後の地名で申もうせば、何処いずこになるのじゃ？」　

はやや「大分県日出町ひじちょうや別府市べっぷしの辺あたりと言われちょります。」　

地図（速見邑→日出町・別府市）

タケ「前回の碩田国おおきた・のくにこと大分市おおいたしよりも、北になるのじゃな？」　

はやや「そうです。けんどだけど『日本書紀にほんしょき』では、大分市おおいたしに立ち寄ったあと、速見邑はやみ・のむらに来たことになっちょるんです。おかしいじゃろう？」　

野見のみ「たしかに・・・。『日本書紀にほんしょき』では、我われらは、長峡県ながお・のあがたこと福岡県行橋市ゆくはししより参まいったのであるから、先に、碩田国おおきた・のくにに訪おとずれたとなると・・・。」　

おやた「速見邑はやみ・のむらを、一度、素通すどおりし、改あらためて、向かったことになるのう・・・。」　

地図（速見邑を素通り）

はやや「じゃろう？　おかしいじゃろう？」　

シロ「それゆえ『豊後国ぶんご・のくに風土記ふどき』の方ほうを採用したというわけじゃな？」　

はやや「はい。そげんコツになりました。」

新たな出会い。

一体、どうなるのであろうか？

次回につづく