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本の背表紙のお話~研究室より

E5号館からE2号館への研究室の引越しの時期が近づきました。少しずつ本の段ボール詰めを始めています。本自体をろくに読まず表紙ばかりを見ている今日この頃です。そこで今回は、本の背表紙の話を少し。

1.下の写真は(1冊を除き)英語の本です。書名の文字が横向きになっているところが、和書と明らかに異なります。ただし下の部分の出版社名のように、読者にとって副次的な情報は、字を横に倒さず、小さい字で左から右に綴(つづ)っているものもあります。1冊故意に和書を含めましたが(右端)、字を倒さないで済む日本語の便利さが分かります。(いつも当たり前に見ていますが)

英語の本(右向き)

2.下の写真はドイツ語の本です。書名の文字はやはり横向きですが、英書と逆向きです。この場合下から上に読むことになります。少し不自然に感じます。ただ私でも読むのにそこまで苦にならないので、幼い頃から慣れている人たちであれば、全く問題無いのでしょう(でもどうして英語と逆向きなのかは?です。ちなみにフランス語の本も文字は左向きとのことです)。

ドイツ語の本(左向き)

3.下の写真は少ないですが英語の本です。これらは、上の2のドイツ語の本と書名の文字の向きが同じです(左向き)。左の3冊はドイツの出版社発行の本で、同じシリーズの中にはドイツ語の本の方が格段に多いので、揃えているのだろうと思われます(並べた時向きを揃えたいでしょうから)。一番右のものは、ベルギーの出版社発行のものですが、やはり同じシリーズの中にドイツ語やフランス語の本が含まれているので、同じ理由だと推測します。このように、書名の文字の向きは、一概に言語による違いとは言えない事情もあるようです(ただしドイツの出版社発行の英語の本でも字を右向きにしているものもあるので、自由度はあるようです)。

英語の本(左向き)

4.ところで洋書は、下の写真のように背表紙がそこまで広くなくても、文字のサイズを小さくして、字を横に倒さないものも結構あります(古い本に比較的多い)。横にしない方が自然だということなのでしょうか? ただしシリーズものなどよく似た体裁の本は、遠くからは書名の判別がつきづらいきらいがあります。

洋書(小さい文字のタテ向き)

5.では、和書は、と言えば、ほとんど全ての本の書名は字を横に倒さず上から下に綴られています(あまりにも当たり前なので写真無し。上の1の写真を参照)。ただし下の部分の出版社名は、少なからずのものが左から右に綴られています(日本語は便利だ)。

6.研究室にある本の中で左から右に書名が書かれている唯一の和書は、下の写真の通り、聖書だけでした。聖書は洋書でもそういうものが多いので、その影響でしょうか? ちなみにちょっと調べてみたところ、和書でこのパターンは他に事典や全集など、背表紙の幅がそれなりに広いものだけでした(図書館だとほぼ禁帯出のもの)。この点(書名の文字が下に行くか横に行くか)は洋書の方に柔軟性があるようです。日本語の文字は、アルファベットより幅があるのと漢字は小さくすると大事な書名が読みづらくなるといった事情があるのではないかと思ったりします。

聖書(洋書と和書:タテ向き)

本の表紙やデザインについては他にも興味深いことがあるのですが、本は内容について書くのが本来的だと思うので、この辺までにしておきます。
                              石渡浩司