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【成功基準は何ですか?🌈】「日本の為替介入の分析」:経済論文解説 No.20 2023/08/17

Introduction:卒業論文は早めに仕上げたい💛


私もいよいよ卒業論文の執筆に
取りかかる時期がやって参りました👍

何事もアウトプット前提のインプットが
大事であると、noteで毎日発信してきました

これは、どのような内容で
あっても当てはまります👍

論文を一概に読んでも
記憶に残っていなかったり
大切な観点を忘れてしまっていたりしたら
卒業論文の進捗は滞ってしまうと思います

だからこそ、この「note」をフル活用して
卒業論文を1%でも
完成に向けて進めていきたいと思います

私の卒論執筆への軌跡を
どうぞご愛読ください📖

今回の参考文献📚

今回、読み進めていく論文は
こちらのURLになります👍

『日本の為替介入の分析』 伊藤隆敏・著
経済研究 Vol.54 No.2 Apr. 2003

前回のお復習い💚

介入のタイプ別の効果判定🌟

為替介入政策が「為替レート」に対して、効果をもったかどうかを判断するにあたって、そもそも前提としてどのような意図でその介入が実施されたのか、ということを明確にする必要があるのです📝

ここで、介入効果の分析にとって、重要なことは介入があった場 合となかった場合の比較になります

しかし、為替レートの動向のモデル化そのものが困難を極めていますので「その為替介入なかりせば」という反実仮想のような想定、すなわち、Counterfactual の設定が難しいのです💦

しかし、このような困難を承知のうえで、卒業論文執筆に取り組まなければなりません

そこで今回の投稿では、今一度、介入意図の分類を復習していくことにします🔥

反実仮想との比較による成功基準🔥

介入の「意図」は、介入を行った事により、介入が実施されなかった場合よりも、当初の経済状態(為替レート)が改善した(円売り介入の場合、円安の程度が大きい)と判断される場合には、この介入政策は「成功=有効」であったと解釈されます

しかし、この判断基準の最大の問題は「介入が実施されなければ」という Counterfactual の特定が難しい点です📝

為替レートの動きは、短期には(日次はもちろん、週次のデータにおいても)ランダムウォークに近いことが知られています!

すなわち、変化の期待値がゼロである仮説を棄却できない、という統計的な結果が知られています

そこで、私たちは以下のような考察をすることになるのです

もし、「介入がなかったら」為替レートは変化しないと事前には期待されていたものとします
そうすると、介入政策実施による「成功」基準は、シンプルに円売り介入であれば、円安になることであると言えます👍

しかし、その一方で、為替レートがごく短期(数時間から一日)には、その直前のトレンドが、そのまま継続すると考える投資家や取引主体が多いというケースも充分想定されます

すなわち、t日からt+1日にかけ ての円・ドルレートの変化の期待値E(et)は、t‐1日からt日にかけての変化ΔE(et)に等しいという仮説です

これは、期待形成の理論に従えば、外挿的期待形成(Extrapolative Expectation)と呼ばれます📝

「モメンタム系」と呼ばれる取引者達は「円高になれば円を買い、 円安になれば円を売る」という行動を選択するとされています

すなわち、このような取引手法の基礎には、外挿的な期待があると言えるのです📝

「介入の意図」という判断基準

このように、「介入の意図」として示した成功・失敗の判断基準は、介入がなかった場合における自然な為替レートの動きはどのようなものか、についてどのような仮説をおき、 それに対して介入が、意図して方向に影響を与えたかどうか、という判断と、対応していることがわかりますね👍

したがって「介入の意図」という判断基準が、理論的な判断基準と対応していることがわかります

以下では「介入の意図」という言葉を多用します
しししこれは「介入なかりせば」基準と、互換的に読み替えることが可能であるということをご留意いただきたいです👍

また参考文献において「介入なかりせば」の為替ダイナミクスについては、二つのケースしか想定されていませんが、実際には、いろいろな形が考えられるのも事実です💦

「傾向継続」は、ラグ項を1項だけ考え、 そのラグ項の係数に、1 を想定しているが、本来は、一般的なk次の自己回帰過程(AR(k)プロセス)を考えていきます

そして、回帰式におけるその係数も、アプリオリに想定するのではなく、実際のデータから推定することが望ましいとされています🌟

さらに、よりモデルを一般化するならば、金利差の変数、株価の変数など、日 次で得られる変数のうち、為替レートに影響を与えそうなものを全て、右辺に入れて、「介入なかりせば」の為替レートを推定することが望ましい、と参考文献で言及されていたので、実証分析で活用したいと思います📝

また、以下の先行研究もしっかり読破し、知見を深めていきたいと思っています👍

介入の水準に与える効果

表①は、このような介入意図、介入の水準に与える効果、介入効果の成功・失敗の判断基準をまとめたものであると論文に述べられていました

表①

また、表②は「介入なかりせば」基準と「意図」 基準の対応を示しているという非常に重要な表です📝

表②

以上のような介入意図の説明を概念図にすると、図1のようになることが考えられます

図① 為替レートの動き
介入目的と意図

現実問題、「風に逆らう」介入のうち「円滑化介入」を意図したか、「反転介入」を意図したか

あるいは「風に乗る」介入のうち、「押上げ介入」を意図したか、「駄目押し介入」 を意図したかは、通貨当局以外には知る由もありません💦

また、通貨当局としても、これら 2 つのうちどちらの意図と明確に決めないで介入する場合も多いと推測されるのです

しかし、介入の成功・ 失敗を論ずるには、この区別はとても重要であることに間違いはないでしょう

榊原英資氏は、その著書(榊原(2000))のなかで、介入のスタイルを論じられています

榊原氏は、1995年6月に国際金融局長に就任後「為替介入の基本的哲学を変更した」 (120頁)と自ら言及されています📝

「それまでの為替介入の基本的考え方は、市場の過度の変動をなくすという、スムージング・オペレーション(円滑化操作)であった。たとえば、急速に円高になってきたとき、小規模な介入でこれに対抗し、急激な変化をならす、スムーズ・アウトするというわけである。市場が基本的に安定的なものであって、均衡からの乖離が一時的なものであれば、この種の介入は効果があるだろう。」(120頁)と述べられています

これに対して、榊原氏は、1995年4月から5月にかけての状況が、安定的な市場の動きではないと考察していました
「均衡は複数存在するだろうし、均衡の近傍を離れた場合、システムは不安定である場合が多い」 (121頁)と断定し、為替介入の手法の変更を行ったという記述が確認できます

1995年の為替介入政策については、こちらの記事で詳しく考察していますので、ぜひお復習いにご活用ください💚

「介入の頻度を極端に少なくし、 一回ごとの介入は大量の資金でいわゆる押上げ介入をすることだった」(120頁)という文章もみられ、介入政策の在り方や方針が変わったように思います👍

押上げ介入については、以下のように解説されています

「まず、介入は市場の動きをよく見ながら、 市場のパーセプションを変えるような情報を流し、かつ、市場にサプライズをあたえるよ うなやり方で市場の不安定な動きを止めることが必要である。そして、もし市場がこちら の思う方向に動いてきたら、これを徹底的に押し上げていく。」(121頁)
ここから、介入の意図と手法について、現場における判断を、垣間見ることができるように思います👍

円滑化介入、反転介入、押上げ介入などが、決して観念的なものではなく、介入の決断を行う現場でも、 意識されていることがわかります


本日の解説は、ここまでとします
為替介入政策におけるその効果の判定や、成功基準を設定する上で大切な観点についてアウトプットできたと思います👍

今回、私が卒業論文執筆において取り上げる
24年ぶりの「円安是正」介入は本当にレアな経済政策
ということを再認識できたような気がします💖

私の研究テーマについて🔖

私は「為替介入の実証分析」をテーマに
卒業論文を執筆しようと考えています📝

日本経済を考えたときに、為替レートによって
貿易取引や経常収支が変化したり
株や証券、債権といった金融資産の収益率が
変化したりと日本経済と為替レートとは
切っても切れない縁があるのです💝
(円💴だけに・・・)

経済ショックによって
為替レートが変化すると
その影響は私たちの生活に大きく影響します

だからこそ、為替レートの安定性を
担保するような為替介入はマクロ経済政策に
おいても非常に重要な意義を持っていると
推測しています

決して学部生が楽して執筆できる
簡単なテーマを選択しているわけでは無いと信じています

ただ、この卒業論文をやり切ることが
私の学生生活の集大成となることは事実なので
最後までコツコツと取り組んで参ります🔥

本日の解説は、以上とします📝

今後も経済学理論集ならびに
社会課題に対する経済学的視点による説明など
有意義な内容を発信できるように
努めてまいりますので
今後とも宜しくお願いします🥺

マガジンのご紹介🔔

こちらのマガジンにて
卒業論文執筆への軌跡
エッセンシャル経済学理論集、ならびに
【国際経済学🌏】の基礎理論をまとめています

今後、さらにコンテンツを拡充できるように努めて参りますので
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます📚


最後までご愛読いただき誠に有難うございました!

あくまで、私の見解や思ったことを
まとめさせていただいてますが
その点に関しまして、ご了承ください🙏

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考え方の引き出しが増えた!
読書から学べることが多い!
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大変嬉しく思いますし、投稿作成の冥利に尽きます!!
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今後とも何卒よろしくお願いいたします!

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