見出し画像

『「介護時間」の光景』(169)。「富士山」。8.14.

 いつも読んでくださっている方は、ありがとうございます。おかげで、こうして書き続けることができています。

(※この「介護時間の光景」シリーズを、いつも読んでくださっている方は、よろしければ、「2001年8月14日」から読んでいただければ、これまでとの重複を避けられるかと思います)。

 初めて読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
 私は、臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。


「介護時間」の光景

 この『「介護時間」の光景』シリーズは、介護をしていた時間に、私自身が、家族介護者として、どんなことを考えたのか?どんなものを見ていたのか?どんな気持ちでいたのか?を、お伝えしていこうと思っています。

 それは、とても個人的で、断片的なことに過ぎませんが、それでも家族介護者の気持ちの理解の一助になるのではないか、とも思っています。

 今回も、昔の話で申し訳ないのですが、前半は「2001年8月14日」のことです。終盤に、今日「2023年8月14日」のことを書いています。


(※この『「介護時間」の光景』では、特に前半部分は、その時のメモをほぼそのまま載せています希望も出口も見えない状況で書かれたものなので、実際に介護をされている方が読まれた場合には、気持ちが滅入ってしまう可能性もありますので、ご注意くだされば、幸いです)。

個人的で、しかも昔の話ですが、1999年に母親に介護が必要になり、私自身も心臓の病気になったので、2000年に、母には入院してもらい、そこに毎日のように片道2時間をかけて、通っていました。妻の母親にも、介護が必要になってきました。

 仕事もやめ、帰ってきてからは、妻と一緒に、義母(妻の母親)の介護をする毎日でした。

 入院してもらってからも、母親の症状は悪くなって、よくなって、また悪化して、少し回復して、の状態が続いていました。
 だから、また、いつ症状が悪くなり会話もできなくなるのではないか、という恐れがあり、母親の変化に敏感になっていたように思います。

 それに、この療養型の病院に来る前、それまで母親が長年通っていた病院で、いろいろとひどい目にあったこともあって、医療関係者全般を、まだ信じられませんでした。大げさにいえば外へ出れば、周りの全部が敵に見えていました。
 ただ介護をして、土の中で息をひそめるような日々でした。私自身は、2000年の夏に心臓の発作を起こし、「過労死一歩手前。今度、無理すると死にますよ」と医師に言われていました。そのせいか、1年が経つころでも、時々、めまいに襲われていました。それが2001年の頃でした。

 周りのことは見えていなかったと思いますが、それでも、毎日の、身の回りの些細なことを、メモしていました。

2001年8月14日。

『午後1時30分頃に、介護保険の認定の人が来るというので、早めに家を出る。

 入院している病院は、医療保険で、だから、使うかどうかも分からないけれど、でも、認定を受けていないと、何かの時に介護保険が使えないから、ということを聞いて、なんだか心配になって、手続きをすることにした。

 午後1時15分頃に病院に着く。

 この病棟で母が友人になった患者さんもいて、話をするが、微妙にずれていく。

 その後、約束の30分遅れで、介護認定の調査の人がくる。

 微妙な症状を3つくらいに分けているように思う。

 そんなに大雑把でいいのだろうか。

 そんなことを、介護保険の認定調査の質問で、ずっと思っていた。

 そのあと、調査員が帰るところを追いかけて、母がいないところで、症状がひどいときの話をする。それは、特記事項ですね、みたいなことを言われる。その症状はどれくらいですか?時々は、1ヶ月に一度、という基準を教えてもらう。そんな機械的ではないのは、こうした精神症状を知っていれば、常識だと思っていたのだけど、なんだか話が通じにくい。

 そして、なぜか、介護の一般的な話に移って、気がついたら、在宅介護がベストのような話になっている。そういう考え自体をやめてほしい。それで、どれだけ家族を追い込むのかを考えてほしい。

 そんなことを思って、言えなかった。今度は伝えようと思う。

 それから、母はみんなで体操をしたり、花を作っているところに合流する。

 そのレクリエーションというか、リハビリというか、それが終わってから、病室に母は戻ってきたけれど、トイレによく行く。

 30分に2〜3回。
 それで、1回あたりのトイレの時間も長くなっていて、大丈夫だろうかと思う。

 そういえば、母の友人になった患者さんに、私の顔を見るたび「お子さん欲しいわね」と言われ、その人が悪いわけではないけれど、ここにも世間があって、なんだか嫌になることはある。

 今日は、母のトイレがとても多いので、大丈夫か?と思っていたら、どうやら、トイレに行ったことを忘れていて、だから、やたらと行くようだ。でも、さっき行ったばかりだと伝えても、やっぱり行く。

 夕食が終わって、食後にすぐトイレに行っても、その10分後に、またトイレへ向かった。

 ここにいる患者さんたちとも、いろいろ話すようになったけれど、「おとなしそうなお婿さんね」と言われることが少なくない。その度に一応「息子です」と言ってはいるけれど、特にある年齢以上の女性は、「おとなしい」が好きなのか、と改めて思う。

 それで、時間がたった』

富士山

 午後7時頃、病院を出る。

 出るのは、いつもと同じ。

 少しだけの夕焼け。

 富士山を見ようとして、見られなかった。

                      (2001年8月14日)。


 それからも、その生活は続き、いつ終わるか分からない気持ちで過ごした。

 だが、2007年に母が病院で亡くなり「通い介護」も終わった。義母の在宅介護は続いていたが、臨床心理学の勉強を始め、2010年に大学院に入学し、2014年には臨床心理士の資格を取得し、その年に、介護者相談も始めることができた。

 2018年12月には、義母が103歳で亡くなり、19年間、妻と一緒に取り組んできた介護生活も突然終わった。2019年には公認心理師の資格も取得できた。昼夜逆転のリズムが少し修正できた頃、コロナ禍になった。

2023年8月14日

 台風が近づいている。

 最初は関東直撃だったのが、西にずれたけれど、台風には変わりがなく、その進路は当然だけど、ずっと気になる。

 思ったよりも、晴れ間が広がる。

 と思ったら、急に雨が降ってくる。干してある洗濯物を、室内に入れたり、外へ出したりを繰り返すしかない。

 なんだか落ち着かない。台風の進む速度は、ゆっくりだった。

 テレビには「台風7号 接近中」という文字がずっと出ている。

お盆

 恥ずかしい話だけれど、「お盆」というものが、本当はどういうもので、特に、新盆や旧盆みたいな言葉もあって、さらに、本当は今年の「お盆」がいつからいつまで、というのも、はっきりとはわかっていない。

 それでも、お盆休みの最中らしく、それで高速が渋滞したり、といったニュースが流れているのは知っている。

 ただ、これだけ、人が移動して、しかも、コロナが「5類移行」によって、感染予防対策が緩んでいるから、このあとに感染が増大してもおかしくはない。

 それでも、それは重症化リスクのある人や、その家族など、一部の人しか、すでに気にしなくなっているような印象もあって、その孤立感も含めて、不安は大きい。

お盆休み期間中の新型コロナの感染動向について、千葉大病院(千葉市中央区)の猪狩英俊感染制御部長は10日、千葉日報社の取材に応じ「(帰省や旅行先で)飲み会を開く抵抗感が以前よりなくなっている。会食を通じて感染が増加する恐れはある」との見解を示した。会食時は換気をするよう呼びかけたほか、新型コロナと考えられる症状がある場合は旅行などを控えることが重要とした。

(「千葉日報」より)

図書館

 最初は、図書館の返却期限は、明日の15日だったのだけど、それが最も台風が接近すると言われているので、もしかしたら外出すること自体が困難になるかもしれないので、いろいろと考えたのだけど、今日、行くことにした。

 それで、読んだ本の内容はメモし、借りたけれど、読めなかった本は諦め、荷物を整理し、帰りにスーパーに寄ってくると妻に伝えて、買ってくるものをメモしてもらい、天気予報を確かめても、ところによってにわか雨があるという情報は変わらないので、今の空模様を見ながら、出かけるしかない。

 それでも日差しがさすと、暑い。

にわか雨

 このあたりは、午後5時くらいから雨が降り出すと、明日までずっと降り続く、という天気情報を妻に聞いたので、午後2時半くらいに家を出た。

 自転車に乗って、ヘルメットもかぶって、そうしたら、すぐに雨が降ってきたので、ちょっと迷ったけれど、いったん戻った。

 しばらく雨が降るのか、にわか雨なのか、よくわからないけれど、もう少しゆっくりしようと思ったら、雨が上がって、午後5時には雨が降ってくると思うから、と妻が早く行くのを促してくれたので、出かけた。

 一度、自転車の青いゴムのカバーを落とし、また信号が変わるのを待って、道路の向こうに拾いに行ったり、なんだかバタバタしたのは、また雨が降るのかという焦りがあったけれど、まず図書館に行って、本を返して、また借りる。

 そのあと、スーパーにも寄って、買い物をして、帰ってきた。

 すっかり太陽が出ていて、なんだか暑かった。

 これから台風が近づいてくる。




(他にも、介護のことをいろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。




#介護相談       #臨床心理士  
#公認心理師    #家族介護者への心理的支援    #介護
#心理学       #私の仕事  
#家族介護者   #臨床心理学   #介護者相談
#介護負担感の軽減    #介護負担の軽減
#自己紹介   #介護の言葉     #介護相談
#家族介護者支援   
#家族介護者の心理   #介護時間の光景
#通い介護  #コロナ禍   #定点把握
#感染対策緩和



この記事が参加している募集

 この記事を読んでくださり、ありがとうございました。もし、お役に立ったり、面白いと感じたりしたとき、よろしかったら、無理のない範囲でサポートをしていただければ、と思っています。この『家族介護者支援note』を書き続けるための力になります。  よろしくお願いいたします。