「家族介護者の支援について、改めて考える」⑭「占い」と「カウンセリング」。
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私は、臨床心理士/公認心理師の越智誠(おちまこと)と申します。
家族介護者の支援について、改めて考える
この「家族介護者の支援について、改めて考える」では、家族介護者へ必要と思われる、主に、個別で心理的な支援について、いろいろと書いてきました。
これまで、「家族介護者の心理的支援の必要性」について、このシリーズだけではなく、他のnoteの記事でも繰り返し書いてきました。
ただ、今回は、その必要性を伝える前に、心理的支援そのものが、いかに理解されていないか。それを実感することがありましたので、改めて伝えるべきことがあるのではないか。そうしたことを含めて、考えたいと思いました。
配信
私自身は、インターネットに関しては「情報弱者」になると思いますので、日々、接している動画に関しては、とても限られていると思っています。
それでも、様々な社会的な話題について、毎回、専門家を招いて、かなりじっくりと話を聞くことで、全く知らないことに対しても理解を深めたり、興味を持つきっかけを与えてくれるので、時々、見ているのが「ポリタスTV」です。(いつも無料で見ている視聴者にすぎないので、微妙に罪悪感はありますが)
(2022年10月28日 「瀧波ユカリのなんでもカタリタスTV#8」)
この時の配信では、漫画家の瀧波ユカリ氏が、社会学者の橋迫瑞穂氏と、占いやスピリチュアルをテーマに語り合うという内容でした。
不安の多い現代では、大事な話だと思いました。
「占い」
この時に、社会学者の橋迫氏が、自身も占いを活用している、という話に触れていて、それに対して、視聴者から、カウンセリングや、心療内科ではダメなんですか?といった質問が来たようで、それに対して、このように答えていました。
占いについて、解決するものと思われているけれど、橋迫氏の感覚では、それは違うと述べていた。ズバリ答えを言ってもらうのではなく、問題や悩みを整理するものとして占いを捉えている。
視聴しながらメモをとっていたので、詳細は違っていたら申し訳ないのですが、それを聞いて、微妙にショックを受けていました。
心理的支援への理解
問題や悩みを整理する、というのは、カウセリングや面接などで、もっとも基本的な要素だと思っていたのですが、それが、理解されていないことを、改めて知ったせいでした。占いを、そうした方法で活用するのであれば、カウンセリングも利用して欲しいと思っていました。
個人的な感覚に過ぎないのかもしれませんが、社会学と、社会心理学は違うけれど、それほど遠いものではなく、社会心理学は、心理学ですから、そこから臨床心理学までの距離も、やや近いのではないか、と思っていました。
ですから、社会学者の発言に対して、微妙にショックを受けたのは、その学者の知らなさを責めたいわけでは全くなくて、臨床心理学がどういうものなのか?それを伝えることが、まだ足りないのではないか。私は、その分野の片隅で細々と仕事をしている人間に過ぎませんが、そのことを改めて思いました。
つまり、現在、家族介護者に関して、個別な心理的支援が必要と考えて、その方法をベースとした「介護者相談」も続けていて、その現場では、心理的支援については、具体的なこととして理解をしていただいている感触はあります。
だけど、その一方で、その動画を見て、情報や知識として、「心理的支援」というものが、どういうものなのか?が、社会に伝わっていないと思いました。
家族介護者に心理的支援が必要、ということを伝える前に、「心理的支援」自体がどういうものなのか?その理解は、まだ社会に、本当に浸透していないことを、改めて見せられた気がしました。
誤解
現在、自分自身は、まだ力が足りないことを自覚し、また、その質については検討の余地があるとしても、臨床心理学の「中の人」の一人になっていることは間違いないと思っていますが、臨床心理学を学び始めた頃は、本当に無知でした、というよりも、かなり誤解が多かったように思います。
例えば、臨床心理士については、一種の恐れのような感覚を持っていました。
実際に会ったりすると、こちらの心を読まれてしまうのではないか。もしくは、「面接」という名前で1対1で密室で行われているのが、どんなことなのか分からないから、ちょっと怖い。
そんな感覚を持っていましたが、学ぶことで、また資格を取得して、仕事を始め、仕事を続け、その間にも、さらに学ぶことは多くなり、様々な人と会うことで、そうした思いはほぼなくなっていきました。
他人の心は、誰であっても分かりきることはない。
面接が密室で行われ、そのことが詳細に語られないのは、そこに来るクライエントの心理的な安全性のためであり、守秘義務が守られることによって、ようやく有効に機能するという必然的な理由がある。
ですので、心理的支援についても、(もちろん万能ではありませんが)その必要性については、あまり疑うことも減っていきました。
理解
それでも、分かってきたのは、相手の気持ちをどんな状況でも理解しようとするのが、心理士(師)の役割でもあり、それは広い意味ではカウンセラー全般に言えることだと思うようになりましたし、優しくない人間は、こういう仕事をしてはいけない、と何十年も臨床の現場で働いてきた精神科医が言っていたことも、仕事をするようになって、本当にそうだと納得するようになってきました。
私は、臨床心理士として学んできて、資格も取得し、公認心理師の資格も取りましたが、他のカウンセラー資格のことは詳しく知りませんので、広く語ることはできません。それでも、臨床心理士も、公認心理師も、カウンセラーでもありますし、どのカウンセラーでも、こうしたことは共通することだと思ってきました。
ただ、「占い」の話をする社会学者の言葉を聞いて、私は学んだり仕事をすることによって、いつの間にか、カウンセラーや心理士(師)のことを、社会でも、ある程度分かってもらっている前提に立ってしまっていることにも、改めて気がつきました。
ライバル
振り返れば、臨床心理学を学び始めた頃は、仕事を始めた際には、ライバルは「占い」と「エステ」だと思っていました。
それは、心理的サポートには、いろいろとあって、人によって、何を選ぶかが違ってくるけれど、「占い」と「エステ」の方が、「カウンセリング」や「面接」や「心理療法」よりも、社会的には馴染みがある、という理由でした。
自分にとっては、「カウンセリング」に関しては、その距離感が変わったとしても、いわゆる世間では「カウンセリング」も「面接」も「心理療法」も、まだ縁遠く、とっつきにくいものかもしれないと、動画を見ていて、改めて気がつきました。
(臨床心理士や、精神科医、さらにはカウセリングが、社会からどのように見えているかについて、かなり分かりやすく書かれていると思ったのが、この作品↓でした)
聞くこと
私は、臨床心理士として仕事をしてきて、公認心理師でもあるのですが、心理的サポートをどのようにしているか?を説明するにしても、自分自身の能力の限界もあります。(そのことを語るには、もっとふさわしい優れた心理士の方々がいらっしゃるので)
それでも、改めて、少し触れたいと思います。
今は、カウンセリングと同様に、傾聴、という言葉も、以前よりも一般的になったと感じています。それでも、それが何を表しているかについては、かなり幅広く、あいまいな部分があるかと思います。
そして、いつの間にか、「聞くこと」は当たり前の前提のように扱われているかもしれません。
それでも、仕事をする時間が長くなるほど、「聞くこと」の難しさは感じ、そのことに対して、いつも、もっときちんと聞こう、と思うのですが、その繰り返しで、かろうじて、少しはちゃんと聞けているかもしれない、と考える日々です。
そうした時間の中でも、傾聴に関しては、「相手のことを、相手よりも理解しよう」と思って、聞いていますし、少なくとも、気持ちを整理することに関しては、貢献できるのではないかとも思っています。
ですので、今回は、心理的支援やサポートが必要な場合、それも、「解決をすぐにして欲しいわけではない。まずは気持ちの整理をしたい」と考えられている時は、できれば、カウンセリングも検討して欲しいということは、お伝えしたいと思いました。
それは、もちろん家族介護者の個別な心理的支援としても、有効なことだと考えています。
(実際の家族介護者への心理的支援については、この記事↓も参考になるかと思います)。
それでも、カウンセリング、もしくは「面接」については、まだ重要なことがたくさんあるのですが、そこから、さらに語る能力は自分に足りていないので、興味がある場合は、こうした本↓を読んでいただければ、確実に理解は深まると思います。
「河合隼雄のカウンセリング入門」
「面接法」熊倉伸宏
(他にも、介護に関して、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。
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