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鐔鑑賞日記

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#鍔

京金工極めの理由を探る

京金工極めの理由を探る

先日大刀剣市にて手に入れた真鍮鐔を改めて鑑賞。

横81×縦85×切羽台厚3.5(耳厚4.5㎜)

この手の鐔は時々見るもので大体「古金工」の極めが付いています。
しかしこれには「京金工」の鑑定書が付いていました。
京金工という事は恐らく江戸時代頃のものとして鑑定を受けたという事になります。
購入時から感じていた「なぜ?」という疑問を探るため改めてじっくり鑑賞してみます。

まず「鐔+小柄 目貫

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成木鐔㉙ 日光下での鉄色比較

成木鐔㉙ 日光下での鉄色比較

成木鐔について早くも29回目となってしまいました。
どうしても自身の好きな金工だけに鑑賞頻度も高まり、故にブログの内容も偏ってしまいます。
これだけ時間をかけて追い求められる鐔工を見つけられたというのはある意味幸せな事かもしれないですが…。

という事で29回目は日光下での成木鐔の見え方を比較してみます。
鉄鐔などはよく日光下で見るのが良いなどと言われますが、成木鐔も鉄色の違いが分かり易かったので

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法安鐔① 車透

法安鐔① 車透

今まで鉄鐔といえば成木一成氏(現代)の物にしか手を出していなかったのだが、比較的手頃な価格で鉄質の良さそうな鐔を見つけたので手元に置き鑑賞してみる。
鉄鐔に手を出さなかったのは「良く分からないから」の一言に尽きる。
現代の錆付けも非常に巧妙な物があり、古い物との区別、または古いものに新しく錆付けを行っているかなどの判断がなかなか難しい、という事が理由である。こうした鉄鐔の良さを分かるようになる為に

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成木鐔㉘ 巴透鐔(信家写)

成木鐔㉘ 巴透鐔(信家写)

ずっと探していた成木鐔と同手のものを見つけたので購入。
成木鐔で良い物が見つかった時は大刀剣市前だから…などとは言ってられない。財布の紐を緩める時である。

横79.5×縦81×耳厚5.1mm(切羽台厚4mm)

表と裏

アルファベット鐔?

アルファベット鐔?

先日少し変わった鐔を発見。
直径7㎝、厚み8㎜ほど、蓋のような形状をして頂点部には紐を通せるようなフックが取り付けられている物に、茎孔と櫃孔が開けられ鐔のようになっている。

鐔というよりは何かの工業製品を変わり者が鐔に仕立て直して見に付けていたと見た方が良いかもしれない。

鐔として使用するには蓋のような形状ゆえに手の甲への当たりが痛く実用にも疑問が生じる故、刀を使う必要があまり無かった時代のも

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埋忠明真の九年母図鐔

埋忠明真の九年母図鐔

以下のような「埋忠二字銘」の鐔の作者について調査する過程で埋忠明真の九年母鐔の存在を知ったのは今から1年程前、昭和53年に東京国立博物館で開催された「埋忠明寿とその周辺」という展示会資料を見て、である。

これに2点、明真の九年母鐔の作例が載っている。

この図録では白黒で載っているだけで色味が分からず、かつ銘を見ると明寿の「埋忠」の字になんとなく類似している様子も見て取れる。
以下は同じく上記の

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鏡師鐔③ 鶴亀紋 鏡の製作時代について

鏡師鐔③ 鶴亀紋 鏡の製作時代について

②はこちら

和鏡をそのまま鐔に仕立て直した鏡師鐔について、本日トーハクに行ってきて和鏡を見てきたのですが、鏡師鐔の元になっている和鏡の製作時代のヒントが得られたのでまとめておこうと思います。
それが以下の和鏡。

二羽の鶴と亀が描かれています。

素材はなんとなく同じ白銅にも見えます。
耳の立ち上がりの高さがこちらの和鏡はかなり高く1㎝程あるように見えますが、それよりも目を引いたのは解説にある一

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平安城鐔 鹿紅葉図② 鹿の意匠について

平安城鐔 鹿紅葉図② 鹿の意匠について

以前手に入れた以下の室町頃の平安城鐔には鹿が描かれているわけだが、同時期とされる蝦夷や古美濃、金家などの鹿のデザインを見てみることにする。
何か共通性が見られるかも、と期待して。

①蝦夷鹿の体毛が丸や線で描かれていたりなど敢えて異なる表現をされているのが興味深い。よく見ると角の有るオスは体毛を棒線で、メスは丸で描かれている事が分かる。

②古美濃金工美濃彫りより抜粋

・秋草に鹿図小柄(古美濃)

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古金工 アイヌ鐔?①

古金工 アイヌ鐔?①

「371g」とやたらと分厚くやたらと重い銀の覆輪がかけられた実戦に使うには向いていなさそうな山銅鐔。
家紋のような銀の紋様が取り付けられている。
アイヌ鐔によく見られる特徴に似ている気がする。
北海道のお店で購入したのでその可能性も高いかもしれません。

横85.9×縦84×耳9.9(切羽台厚7.9㎜)、371g

覆輪の接続部。

覆輪の接続部が茎孔の真下にくる鐔は多いが、この鐔は少し右方にずれ

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平戸鐔① 双龍唐草図

平戸鐔① 双龍唐草図

平戸鐔と言えば代表的な金工で江戸初期の平戸住国重を思い出すが、この金工は真鍮地を用いて双龍図の描かれる事の多い特徴的な鐔を多く作っている。中には珍しくアルファベットを彫り込んだ物も存在しており、南蛮の影響を受けていたように感じる作が多い。
今回紹介する鐔は無銘で鑑定書も取っているわけではないものの、出来からして平戸鐔の印象を強く受ける。

・全体写真横82.5×縦82.9×耳厚8.9㎜(切羽台厚4

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丸櫃孔の鐔④ 薄すぎる厚みについて

丸櫃孔の鐔④ 薄すぎる厚みについて

個人的に結構古そうに感じている丸櫃孔のある鐔について。
以前のブログで描かれた文字の解読まで出来ました。

暫く仕舞っていたのですが久々に取り出し鑑賞。
改めて見るとその薄すぎる厚みについて引っ掛かかる。

厚みで言えば2.5~2.7mmしかない。

案の定というか横から見るとだいぶ歪んでいる。

以前もブログには書いたが、茎孔がやたらと大きく、普通にそのまま考えるとするならば3.5~4尺近い大太

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鏡師鐔② 鶴亀紋 外形について

鏡師鐔② 鶴亀紋 外形について

前回のブログの課題として残していた事の1つに鏡そのものが作られた時代を推定する、がある。
この事を考えるにあたり、形状(サイズ)、紋様、材質、の3点を調べていく事で大まかな時代を推定できるのではないかと仮説を立てている。
しかし和鏡については知識が現時点で皆無であり、暗中模索、まさに海の中をもがいているような状態で何から手を付けて良いかわからない。
全く同じような紋様、サイズの鏡が見つかれば良かっ

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鏡師鐔① 鶴亀紋

鏡師鐔① 鶴亀紋

少し前に以下のブログを書いたのだが、無事海外から取り寄せる事が出来た。円安もあり想像しているよりも高くついてしまったが、里帰りさせることが出来たとでもいうべきか。

白銅地の古鏡に茎孔と櫃孔をあけ、茎孔は鉛が埋め込まれている。
紋様は鶴と亀、亀甲紋に菊と思われる。
横76.5mm×縦75.9mm×耳厚6.6mm(切羽台厚4.3mm)