マガジンのカバー画像

愛鐔紹介

59
運営しているクリエイター

記事一覧

成木鐔⑰道歌鐔(信家写)

成木鐔⑰道歌鐔(信家写)

今回紹介する鐔は無鑑査鐔工、成木一成氏により平成4年に作られた信家写の道歌鐔。
刀連全国大会の天位賞で送られた鐔と箱書きがあります。

この本歌は以下になります。

表裏それぞれ並べて見ます。
櫃孔は後世開けられたものと思われるので、写の方は製作当初の形を再現するためか櫃孔は開けられていません。

この鐔は平成作でいわゆる成木氏の作風が確立した頃の作と見られ、トロンとした艶やかな地鉄をしている。

もっとみる
成木鐔⑯ 刀匠鐔(鎌透)

成木鐔⑯ 刀匠鐔(鎌透)

今回紹介するのは昭和54年(己未)に作られた古刀匠鐔を写した鎌透かしの板鐔。成木氏は昭和53年から自家製鋼による鐔作りを開始している。
箱は無いが銘の形はこの時期のものと一致しているし、まず成木氏が製作した鐔で間違いないと感じる。
縦104㎜、横103㎜、厚み2㎜(耳、切羽台共)と大型。

こちらは常に見る成木鐔とは鍛が明らかに異質で、一言で言えば泥を乾燥させたような肌をしている。
爪ではじくとカ

もっとみる
成木鐔⑮ 赤坂初代忠正  鉢木透写

成木鐔⑮ 赤坂初代忠正 鉢木透写

好きすぎる成木鐔の紹介が止まりませんが、手元にある成木鐔でまだ紹介していない物がいくつかあるので気が向いた時に載せていきます。
今回は有名な赤坂鐔の鉢木透写の鐔になります。
謡曲の「鉢木」の物語を比喩した図柄です。

箱書きは無いのですが、鉄の質感や銘の書体から平成頃の作と思われます。

成木さんの作は高温で熱する為か側面に鍛割れが出ているのが多いのですが、こちらの作も出ています。
むしろこれがあ

もっとみる
梟鐔

梟鐔

「かわいい」

ただそれだけで選んだ鐔と言っても過言でもないかもしれません。

刀屋さんで買っても2~3万円位の安鐔とは思いますが、以外と梟が夜たたずんでいる景色に入り込めるというか、趣が感じられたのでつい手が出てしまいました。

梟(ふくろう)の顔も昔のものは大体このような少しデフォルメされた可愛らしい顔をしています。

耳部は段を付けて一見凝っているように見えるのですが、以前全く同じ外形の鐔で

もっとみる
成木鐔⑫ 繊細な肉彫「蛇図鐔」

成木鐔⑫ 繊細な肉彫「蛇図鐔」

成木鐔で個人的に多く見るのは透かしの鐔だろうか。
尾張や赤坂、京透など、様々見る。

今回は鉄地でここまで凝った肉彫を施した作もあるのかと驚いた事もあり、購入した品。個人的には傑作の部類に入る1つに感じられる。

昭和57年というと、成木氏が炭焼きからたたら作業を一貫して行うようになった年で、昭和57年11月~昭和58年1月まで連日けら押し作業と記録作成を行っていた。
本作はこの2ヶ月後の作である

もっとみる
古正阿弥鐔①

古正阿弥鐔①

少し前に購入してみた古正阿弥鐔。
室町時代頃の作と見られており、この時代は応仁鐔や平安城象嵌鐔など装飾性に富んだ鐔が製作されている、と見られている。

尚、室町時代から江戸後期まで埋忠派と並び長く繁栄した正阿弥派。
室町~桃山の物は古正阿弥と呼ばれている。
江戸期以降は全国各地に移り住み、京正阿弥、伊予正阿弥、阿波正阿弥、会津正阿弥、秋田正阿弥、庄内正阿弥、などなど派生。

葵の葉もしくは河骨葉か

もっとみる
成木鐔⑨紛れる無銘の成木鐔2

成木鐔⑨紛れる無銘の成木鐔2

以前書いた現代鐔工、成木一成氏による信家の亀甲紋写の鐔。

よく見る成木氏独特の艶ある錆色とは異なり古風でしっとりした風合いの本鐔は、個人的にもとても良く出来ているように見え、仮にここに信家と銘があったら信家と信じてしまいそうな出来に見えるほど。もしくは江戸期の明珍あたり。

そんな折、信家鐔を詳しく知る方にお会いする機会があったので本鐔を実際に見て頂き、本歌信家との違いについて聞いてみたところ、

もっとみる
古金工 家紋小物袋鐔①

古金工 家紋小物袋鐔①

室町時代ごろと思われる比較的小振りな山銅地の鐔。
小物の入れ物と家紋が高彫されたような意匠をしている。
大きさは横59.4×縦59.9×切羽台厚3.3、耳厚3.7mm。

櫃穴は山形と角形をしており、古い形状の櫃孔である事が分かる。

丸櫃孔の鐔③ 書かれた文字を解読

丸櫃孔の鐔③ 書かれた文字を解読

丸い櫃孔を有したちょっと変わった鐔には文字が金象嵌のような感じで書かれています。
この文字を個人的にも調べていたのですが、正直全く分からず…。

こんな時は以前鐔の文字解読に役に立った崩し字アプリ「miwo」を試してみる。
しかし…金象嵌であるからか、そもそも文字を認識してくれず断念。

・「ココナラ」で崩し字の翻訳を依頼という事で専門家に翻訳を依頼しようと思い、辿り付いたのが「coconala(

もっとみる
黒柿の鐔箱に入った鐔

黒柿の鐔箱に入った鐔

昨日のブログの続きで、今回は珍しい黒柿の鐔箱に入った中身についてです。

尚、通常鐔箱は左のような桐箱になります。
今回のような黒柿で出来た鐔箱は私も初めて見ましたが、箱その物が素晴らしい作品に見えます。

・鐔の表裏埋忠極めの無銘鐔です。
葡萄の葉や蔓(つる)を真鍮地に赤銅象嵌、部分的に金象嵌にて施されています。埋忠明寿や光忠に見られる独特の皺も見られ、桃山時代の物と考えられます。

古墳時代の鐔①

古墳時代の鐔①

個人的には桃山時代もしくはそれより時代の上がる鐔が好きなのですが、中でも一番古いのがこの古墳時代の鐔です。

そう…鐔は実は古墳時代から既に刀身に付いているのです。

そして面白い事に古墳時代の鐔には銀象嵌が施されている物が多く発見されています。七星剣などにも象嵌は見られますが、古墳時代から既に象嵌技術があったのですね。

以下は、小丸山古墳から出土した鐔のX線写真を撮った物だそうですが、X線によ

もっとみる
古金工 素文鐔②

古金工 素文鐔②

今回は角形、山形と言われる古い様式を示した櫃孔を持った大振りな打刀鐔についての鑑賞記録です。
①はこちら↓

①素材と構成について

丸櫃孔の鐔②

丸櫃孔の鐔②

以前紹介した以下の丸櫃孔を有した鐔について、微かに見える鞘当たりの跡から付いていた拵の大きさを想像してみる。

多少のずれもあるかもしれないが、光に当てながら鞘当たりの部分に赤線を入れてみると、縦41mm、横25mm程になる。
上下方向かなり刀身と近く鞘が割れてしまいそうにも見えるので実際はもう少し分厚いかもしれないがかなりギリギリのラインを攻めている印象を受ける。

裏面の方が分かりやすいかもし

もっとみる