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赤いパーカーのフードと、始まりの記憶

コミュニケーションのことを考えると、思い出す原体験があります。1980年代、昭和の終わり、同じ幼稚園に通っていた幼馴染の女の子と、小学一年の時に、同じクラスになりました。

近所の利発な子。ミュージシャンのYUKIの公式サイトにいる赤いパーカーの女の子のイラストと、かなり似ています。

幼稚園の頃は制服かスモックがあるから、プライベートなファッションは分かりません。
小学校はそれぞれ、自分のセンス、あるいは保護者のセンスで、思い思いの服を着てきます。

ある時、幼馴染が赤いフードが印象的なバーカーを着て来ました。よく似合っており、可愛い。赤ずきんちゃんみたいな感じ。

私としては何か言いたいけど、小学生になりたてだから、言葉が出てこないのです。

「可愛いパーカーだね」
「赤がよく似合ってるね」

どうということがない一言が、どうしても探せない。無理もないです。当時、小学校1年の春だから、数ヶ月前までは幼稚園の年長さんだったので、いろいろ言葉が足りない。

そう言えないから髪の毛を引っ張ることはいません。たまたま、そのフードに小さいチャックが付いており、フードのデザインを調整できるのです。パーカーのフードのセンターに、おしゃれな感じにファスナーがついており、アクセントになっています。

そのファスナーを5センチぐらいジジジっと動かし、「何なの」って言われ、「べつに」と答えました。

だから、小学校1年生の男の子が、意味もなく何かするときは、言葉が足りないのかもしれませんね。40代後半になっても、幼い頃のコミュニケーションがうまくできなかったことは、覚えているものです。

あの頃を考えると、我々はよくやっているとも思います。上手い下手はともかく、言葉にしようとしますから。
どれだけ言葉を尽くしても伝わらないこともあるし、言葉にしなくても伝わることもあるし、言葉にしないと本人が自覚できないということもあったりするんですよね。 コミュニケーションって奥が深いし、人間関係って難しいなぁと思わされるのです。

「可愛いパーカーだね」
「赤がよく似合ってるね」

と、気負わずに伝えられるようになったけれど、あの頃の私より、どの程度成長できたのか、本質は変わったのか、自問自答する日もあります。


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