こなごな

暇潰し、あるいは教科書に書いた消せない落書き

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記事一覧

夏の忘れ物

僕は昔から夏という季節に対し、過度な思い入れをいている節がある。 中学生のとき、8月も終わりごろになると、今年の夏もなにもせず終わってしまう、という奇妙な焦りを…

こなごな
4年前

飛行機

夏の、とても暑かった日のこと。 ようやく日が落ちて暗くなった後、ぽつりぽつりと雨が降りだした。 空気はまだ熱を帯びたまま、僕の肌のうえを生ぬるい感触を残しながら…

こなごな
4年前

僕たちはまだ

僕たちはまだなんにでもなれる。 果たしてそうかな? まだなにもしていない僕らは、一方では可能性に溢れているといえるけど、一方ではただ先を見るのを怖がっているだけ…

こなごな
5年前

みんなのうた

高校を卒業して、彼女は髪を染めた。 高校を卒業して、彼はピアスを開けた。 高校を卒業して、彼女は化粧を覚えた。 高校を卒業して、彼は酒を飲むようになった。 偶然…

こなごな
5年前
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年齢を重ねるごとに、夜の長さを知るようになる。 小学校高学年になり、21:00からのTVを観るようになった。 中学生になり、塾から帰るのが22:00過ぎになった。 高校生に…

こなごな
5年前
夏の忘れ物

夏の忘れ物

僕は昔から夏という季節に対し、過度な思い入れをいている節がある。
中学生のとき、8月も終わりごろになると、今年の夏もなにもせず終わってしまう、という奇妙な焦りを強く感じていた。
それはいまでも大きくは変わっていない。なにか特別なことをしたくなるし、どこか特別な場所へ冒険したくなる。
自転車に乗って空を見上げてみる。
青空が広がっている。
明日どこへ行こう。

飛行機

飛行機

夏の、とても暑かった日のこと。

ようやく日が落ちて暗くなった後、ぽつりぽつりと雨が降りだした。
空気はまだ熱を帯びたまま、僕の肌のうえを生ぬるい感触を残しながら這う。
すこしだけ冷たい雨の粒が、熱をもった腕に、首筋に、ぽつりと落ちる。

空を見上げる。

飛行機が、赤や黄色の光を点滅させながら上空を横切っていた。
この雨は続くだろうか。

僕たちはまだ

僕たちはまだなんにでもなれる。

果たしてそうかな?
まだなにもしていない僕らは、一方では可能性に溢れているといえるけど、一方ではただ先を見るのを怖がっているだけということもできる。

僕たちはほんとうにまだ、なんにでもなれるのだろうか?

ひとりでいる夜、唐突に不安になる。
僕にはなにができて、なにができないのか?
無性に走り出したくなる。ゆっくり歩いていたらこの夜に取り残されるような気がするの

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みんなのうた

高校を卒業して、彼女は髪を染めた。

高校を卒業して、彼はピアスを開けた。

高校を卒業して、彼女は化粧を覚えた。

高校を卒業して、彼は酒を飲むようになった。

偶然街中でばったりあったあの子に、僕はまったく気づけなかった。

地元で待ち合わせたあいつに、僕はまったく気づけなかった。

鏡を見る。

僕の見た目はまるで、あの卒業アルバムの中から飛び出して来たみたいに変わらない。
全然変わらないね

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年齢を重ねるごとに、夜の長さを知るようになる。

小学校高学年になり、21:00からのTVを観るようになった。

中学生になり、塾から帰るのが22:00過ぎになった。

高校生になり、あの人からのLINEを待って日付を跨いだ。

これから僕が知ることになる夜は、どのくらい長いのだろう。僕は何をきっかけにその長さを知るのだろう。

そして極限まで夜の長さを知ったあと、僕はたぶん朝の尊さを知るのだろう

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