みんなのうた
高校を卒業して、彼女は髪を染めた。
高校を卒業して、彼はピアスを開けた。
高校を卒業して、彼女は化粧を覚えた。
高校を卒業して、彼は酒を飲むようになった。
偶然街中でばったりあったあの子に、僕はまったく気づけなかった。
地元で待ち合わせたあいつに、僕はまったく気づけなかった。
鏡を見る。
僕の見た目はまるで、あの卒業アルバムの中から飛び出して来たみたいに変わらない。
全然変わらないね、と、
変わった彼らは、彼女らは、僕にそう声をかける。
僕は、
よく言われる、
と言って笑う。
僕が大好きだった彼らの中身は、僕が大好きだったあの頃のままだけど、
彼らの見た目は、もうあの頃には戻らない。
せめて僕だけでも、変わらないでいたいと思う。僕が気づけなくても、僕が大好きだった彼らが、全然変わらないねと言って僕に気づいてくれるように。