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財政の話

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記事一覧

国家財政を考えてみよう その1 財政の決算

しばらく前、下記リンクの記事が目に留まった。

25年度の財政収支、赤字拡大へ
3.6兆円、税収減が響く
2020/1/16 13:41 (JST)
https://this.kiji.is/590367463566607457?c=113147194022725109

財政収支の赤字拡大という。では財政の赤字とは何か?

この財政というものについて、何回かに分けて書いてみたい。

普通の企業で

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国家財政を考えてみよう その2 予算は本当に赤字なのか?

前回の稿で、「巨額の財政赤字が積みあがっている」と言われる日本の国家財政の一般会計は、決算で見れば実は巨額の黒字であることを確認した。

では予算はどうなっているのだろう?

予算が赤字か黒字かと言われる基準は、基礎的財政収支(プライマリーバランス)と呼ばれるもので、財務省による定義は以下の通りだ。

「基礎的財政収支(プライマリー・バランス)とは、税収・税外収入と、国債費(国債の元本返済や利子の

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国家財政を考えてみよう その3 巨額の地方交付税という歪み

赤字赤字と騒がれる日本の国家財政一般会計は、歳入と一般歳出だけのバランスを見れば黒字であることを前稿で確認した。言い方を変えれば、一般歳出以外の歳出=16兆円もの巨額な地方交付税という本来は国の税金で賄う必要のないはずの費目、が基礎的財政収支を赤字にさせているとも言える構造だ。

では財政が健全と言われるドイツや、その他諸外国はどうなっているのだろう?

第2部 主要国における地方財政の財政調整:

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国家財政を考えてみよう その4 アベノミクスを振り返る① 行政の長が中央銀行の仕事を自分のものかに言う愚

現在の財政を考えるうえで避けて通れないのは「アベノミクス」でしょう。

ではアベノミクスってなんだったのでしょうか?首相官邸の公式ホームページでのアベノミクスの定義を読んだことがある人、どれくらいいるのでしょうか?

アベノミクス「3本の矢」 | 首相官邸ホームページ

第1の矢 大胆な金融政策:市場のお金を増やしてデフレ脱却!金融緩和で流通するお金の量を増やし、デフレマインドを払拭

第2の矢 

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国家財政を考えてみよう その5 アベノミクスを振り返る② インフレ率と失業率

前稿ではアベノミクスを振り返ろうとして大脱線してしまいました。今回は仕切り直しで、アベノミクスが成功したのかどうかを見てみたいと思います。

アベノミクスの目標は、当初2年以内にインフレ率2%を目指すとされていました。結果としてのインフレ率の推移はどうでしょうか?

2009 ▲1.35% (リーマンショック翌年、民主党政権発足、白川日銀総裁)
2010 ▲0.72% (民主党政権、白川日銀総裁)

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国家財政を考えてみよう その6 アベノミクスを振り返る③ 額でも率でも減り続ける歳出

前項で、一部のマスコミや野党が言う、アベノミクスは失敗だというのは、濡れ衣であり、目標に達していないものの、効果は出ている、ということを数字で確認しました。ではその結果を導くために何がなされたのか?この稿の主題は財政なので、財政に絞ってみてみます。

財政はアベノミクスの第2の矢として首相官邸ホームページで以下のように宣言されています。

「第2の矢 機動的な財政政策:政府支出でスタートダッシュ!

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国家財政を考えてみよう その7 アベノミクスを振り返る④ 増え続ける税収

前稿では、アベノミクス第2の矢は機動的な財政政策、10兆円規模の経済対策で需要を政府が創出と声高に主張しながら、実は安倍政権になってから歳出は一段減ってそのままの状態が続いていることを確認しました。

では税収はどうでしょうか?一般会計の税収の決算実績を見てみます。

    一般会計税収決算額 前年比
2009   38兆7331億円      (民主党政権発足)
2010   41兆4868

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国家財政を考えてみよう その8 特別会計、健康保険、厚生年金・国民年金の負担はどれくらい増えているのか

前項までで振り返ってきたアベノミクス第2の矢=機動的な財政政策は国家財政の一般会計でした。

国民負担、要するにサラリーマンが給料から天引きされるお金やその他の日常生活で払っている税金、は一般会計だけではありません。それ以外に大きく分けて特別会計、年金保険料、健康保険料があります。

それらの国民負担はどうなっているのでしょうか?

まず、特別会計を見てみます。

平成21年度(2009年度)特別

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国家財政を考えてみよう その9 「国の借金1100兆円超、国民1人当たり871万円」の嘘①

「国の借金1100兆円超、国民1人当たり871万円」2019年2月9日注目記事:NHK政治マガジン
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/14051.html

上記のような記事、マスコミでも、あるいは政治家の言葉からも、頻繁に見聞きします。でもこれ、本当なのでしょうか?

日本では国民が主権を持っているので、主語を「国」とするなら、それ

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国家財政を考えてみよう その10 「国の借金1100兆円超、国民1人当たり871万円」の嘘②

前稿では、日本国は借金まみれというのは真っ赤な嘘、日本は世界一の金貸し大国であることを確認しました。

とは言え、国債の残高が1100兆円あること自体は、これは事実です。

これはいったいどういうことなのでしょうか?

下記リンク1ページ「(図表1)部門別の金融資産・負債残高」が日本のマクロ経済の概況を理解するのに分かりやすい資料だと思います。

2019年第3四半期の資金循環
(速報) 2019

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国家財政を考えてみよう その11 「子どもたちの未来に負債を先送りしないために消費税増税が必要」の嘘

昨年10月にとうとう消費税が10%にまで増税されました。おかしなことです。アベノミクス第1の矢で金融緩和したのなら、第2の矢では大型財政出動か大型減税をするはずなのに、この一連の稿で確認したように歳出は増えるどころが絞っている上に、減税どころか二度にわたる消費増税です。これではアベノミクスではなく、アベコベノミクスです。

消費増税を訴える政治家がしばしば「子どもたちの未来に負債を先送りしないため

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国家財政を考えてみよう その12 先に進む前にこれまでの11稿の振り返り

今まで11稿にわたり、国の財政の数字や事実を確認してきました。これより先は「考え」も混ざってくるので、その前に立ち止まって今まで見てきた11稿の「事実」を振り返っておきたいと思います。

その1;

財政の赤字、黒字という言葉を使う時に、基礎的財政収支を指して赤字だ赤字だと騒ぎ立てるが、企業決算に相当する財政の決算は巨額の黒字である。

その2;

日本の一般会計の基礎的財政収支は、歳入と本来の国

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国家財政を考えてみよう その13 プライマリーバランスは黒字化しなければならないのか?

大手マスコミで日本の財政再建が報道される時必ず言われるのが、「プライマリーバランスの黒字化目標時期が先送りされるのは問題だ」ということ。実際政府はプライマリーバランスを黒字化すると宣言し、目標時期もコミットしている。

そもそもプライマリーバランスって何?

初めてでもわかりやすい用語集
SMBC日興証券
https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/fu/J02

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国家財政を考えてみよう その14 国債(政府の借金)はいつか返さなければならないという通説は本当か?

前回noteに財政の話を書いたのが3月2日なので、それから4ヶ月以上が経ってしまいました。その間に世界をコロナ禍が襲い、経済活動が強制的に止められ、人々の生活や企業活動を底支えするために、世界中の政府が財政出動した。ドイツをはじめ減税を断行する国もあります。

日本でも補正予算が組まれ、(遅すぎるとは言え)給付金や補助金が支給され、巨額の予備費も計上されています。

その議論の過程でまたもや出てき

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