国家財政を考えてみよう その13 プライマリーバランスは黒字化しなければならないのか?
大手マスコミで日本の財政再建が報道される時必ず言われるのが、「プライマリーバランスの黒字化目標時期が先送りされるのは問題だ」ということ。実際政府はプライマリーバランスを黒字化すると宣言し、目標時期もコミットしている。
そもそもプライマリーバランスって何?
初めてでもわかりやすい用語集
SMBC日興証券
https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/fu/J0277.html
プライマリーバランス(Primary Balance)とは、国や地方自治体などの基礎的な財政収支のことをいいます。一般会計において、歳入総額から国債等の発行(借金)による収入を差し引いた金額と、歳出総額から国債費等を差し引いた金額のバランスを見たものです。プライマリーバランスがプラスということは、国債の発行に頼らずにその年の国民の税負担などで国民生活に必要な支出がまかなえている状態を意味します。逆に、プライマリーバランスがマイナスということは、国債等を発行しないと支出をまかなえないことを意味します。
ワンポイント
近年の日本は、プライマリーバランスがマイナス(赤字)の状態が続いています。国債残高の増加傾向に歯止めがかからない状況からも、早期のプライマリーバランスのプラス(黒字)化を目指していますが、政府が掲げている2025年度の黒字化の実現も困難だということが2019年1月の経済財政諮問会議に提出されました。
どうでしょう?初めてでもわかりやすかったでしょうか?
わかりにくいですね~。わざと分かりにくく難しくして、国民を煙に巻いて騙そうとしているかのようです。
本当に分かりやすく言おうと思えば、もっと簡単に言えるはずです。
プライマリーバランス=基礎的財政収支=その年の一般歳出(借金返済分を除く歳出)が税収で賄えるかどうかのバランス。賄えれば黒字、賄えなければ赤字。
どうですか?かなり分かりやすいでしょう?
それでもまだ分かりにくければ、プライマリーバランス=歳出<税収で黒字、と理解してください。歳出>税収なら赤字。
これを民間企業の会計に照らしてみるとどうかというと、企業活動の費用や投資を一切の借入金なしの自己資金(資本)でまかなう、ということです。
民間企業として、それは良い経営なのでしょうか?ありえません。最悪の経営です。必要十分な資本金と立派な経営計画と信用のある経営者がそろっていれば、銀行はお金を借りてくださいと言ってきます。ちなみに日本国債はその格付けからして発行すればすぐに売れる、お金を借りてくださいという状態です。そのお金を借りずに、わざわざ自分の財布を傷めて費用を払ったり投資をしたりすることは「資本効率の悪い経営」です。
たとえば資本金1000万円の運送会社を設立する時に、自己資金で1000万円のトラックを買っちゃったら、運転手に給料を払えなくなり、ガソリンも入れられなくなり、会社設立と同時に営業停止です。
しかし、同じトラックを200万円の頭金と800万円の4年ローンで買えば、営業開始時に手元に800万円残り、給料やガソリン代を払いながら売上と利益を上げて企業活動を継続することが可能です。きちんと売上と利益が上がれば、そこから株主には配当を、経営者と社員には給料を、銀行には返済と利息を払いながら、利益の中からまた頭金を払って新しいトラックを買って、それを繰り返して会社を大きくして、お金がお金を生むサイクルを作り出せます。
どちらが良い経営でしょうか?どちらが資本効率が高いでしょうか?
言うまでもありません。後者です。
それって国も同じではないでしょうか?いや、言いきっちゃいましょう。同じです。
自己資金には限りがあります。例外は地面からお金が湧き出てくる資源国くらいでしょう。無理に自己資金だけで運営すれば、全体が成長できないサイクルにハマり込むのは、国家財政も民間企業も同じです。
分かりやすい資料としてはちょっと古いけれど下記リンク。
OECDの財政収支(対GDP比)ランキング(過去: 2015年)
https://ecodb.net/ranking/old/group/XK/imf_ggxcnl_ngdp_2015.html
OECD諸国でプライマリーバランス黒字は7ヶ国だけ。筆頭は資源国、次いでタックスヘイブン国、そしてEU域内から富を吸い上げているドイツ。プライマリーバランス黒字の国はそのような特殊な金ヅルがある国くらいであり、それ以外の国はプライマリーバランスは赤字です。でも赤字だからといってそれらの国が破綻すると問題になっているわけではありません。
こう考えれば、プライマリーバランス黒字化、つまり政府活動の自己資金化、は全く必要が無いことが分かるでしょう。それどころか、プライマリーバランス黒字化は、経済成長=その国の国民を豊かにする行為、の妨げにすらなるということも分かるでしょう。
日本政府が目指している、「プライマリーバランス=基礎的財政収支、の黒字化」は、実現する必要などない、むしろそんなことしたら国民を貧しくする、間違った目標なのです。
結論、プライマリーバランス黒字化など必要ない、ということをこの稿では確認しておきたい。
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