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いのちの削ぎ落とし

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短編、掌編小説など。
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#恋愛

小説「細い光」

小説「細い光」

 土曜の朝、私は体の痛みに目をさました。

 左半身が布団に沈みこみ、頬にふれると枕の縫い目がついていた。昨夜床についた時も同じ姿勢だった。どうやら一晩中寝返りも打たずに眠っていたようだ。ここ数日、同じような寝覚めをむかえていた。こちらを向いていなければならないと、無意識に思っているのだろうか。

 目の前には、美晴の寝顔があった。

 あおむけになり、軽くこちらに首を曲げて眠っていた。額に汗がう

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小説 「街をこぐ」

 ふたりの車いすが、寄り添っている。

 今日も、並んで街をこいでいた。歩道がせまいときは咲希(さき)が直幸(なおゆき)の後ろに電車ごっこのようにぴたりとついていく。はみ出て進路のじゃまになる自転車は、そしらぬ顔でたおしながら。

 路地裏に、照れくさそうにドアを開けている小さな古着屋を咲希が見つけた。乗っている車いすにブレーキをかけた。店の前に飾られたTシャツに、子犬をなでるようにふれた。

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小説「なにもない日」

 あれ、これって……。

 玄関先の掃除を終えてほうきを物置にかたづけていると、シートがかけられたそれがみえた。
 シートをめくると、車いすがのぞいた。
 私は外にひっぱりだし、広げようとした。しかしさびついていてなかなか広がらない。体重をかけてシート部分を押し込んだ。お年寄りが乗る自転車のような甲高い音がして、ようやく車いすは広がった。
「なにしてんの」
 後ろからあくびまじりの声がした。妹がや

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小説「冬の部屋」

小説「冬の部屋」

「今日、誕生日なんですね」
 CT検査をおえて身支度をととのえていると、男性技師がカルテをみながら言った。
 おれはCT室の壁にさげられたカレンダーに目をやった。日付の下に製薬会社のロゴだけが書かれた、愛想のないものだ。今日の日付は十二月二十七日、たしかに誕生日だ。
「しかも記念すべき三十歳の誕生日ですね。先輩として歓迎しますよ」
 技師はいたずらっぽく言った。浅黒い肌に白い歯を持った健康の見本の

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