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人類の自己家畜化と現代

20240331

人類の過去から現在に至る歴史や進化の過程を知ることによって、その特徴や生存戦略を明らかにする。そのためには、人類の生物学的起源と身体特徴を明らかにするとともに、人類特有の文化の発展と多様性を知る必要がある。

食物の軟化という文化現象、人類が石器で食物を切ったり砕いたり、あるいは火で焼くことによって食物を軟らかくし始めた。その影響を受けて人類の顔が小さく変化してきた。つまり人類では、文化が進化の方向を左右するため、身体的進化を論ずる場合にも文化の影響を無視することはできないのである。

人類の「自己家畜化」という現象は、このような身体と文化との相互作用に関わる問題である。

家畜とは、人間に飼育され、その繁殖・成長のパターンが人為的にコントロールされている動物である。
野生動物を家畜化することは、文化的現象であり、家畜は文化環境の中で生まれ育ち、そして集団として進化する。

身体特徴が文化の影響を受けるという点では、人類も家畜も本質的に同じと考えることもできる。ただ両者が異なる点は、家畜が文化の影響を他動的に受けるのに対して、人類は文化の創造者であると同時に担い手であり、自らを文化環境の中に置いていることである。したがって人類の場合は単なる家畜化ではなく、自らを家畜化してきたことになる。

野生動物が家畜化されたときの変化
→自然選択が弱まる反面、人為選択の力が著しく強くなる結果
・変異の幅が大きくなる
・体色が白くなる
・脳の重さが減少する
・歯や顎骨が縮小する
・縮毛が多くなる
現象であり、これらは人類にも当てはまる点が多い。

我々現代人の体は、心理的な側面を含めて、一万年以上前の旧石器時代の環境にしか適応していない。

家畜とは、人類が利用するために野生動物から遺伝的に改良したものであり、自己家畜化とは、人類が自らを改良していく過程である。

人類は、文化によって環境に適応することで、無意識に自己家畜化していった。

文化とは、遺伝ではなく学習によって、世代から世代へと受け継がれた生活や行動様式である。

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ローレンツは、動物行動学の観点からは、ヒトが現代文明という環境に適応できないとした。


人口過剰
過密がヒトの社会に与える影響、社会的接触が多くなり過ぎることから、攻撃性が高まり、紛争の原因になる。


生活空間の荒廃
ヒトが自然を支配できると考え、自然破壊を行っている。


人間同士の競争
動物の世界では、食物連鎖の枠内で、異なる種の個体間では「殺し」が存在するが、同種の個体間での殺しは一般に本能によって抑制されている。ヒトはこの点で例外であり、同種内での殺し合いが頻繁に行われている。

また、権力や財力を求める個人間競争も激化している。


感性の衰退
現代文明下で工学や薬学の過大な進歩によって、ヒトはわずかな不快にも耐えられないほど精神的に虚弱化している。


遺伝的な退廃
ヒトの集団では、もはや自然淘汰が働かなくなっていて、人間はますます遺伝的に衰弱してゆく。


伝統の崩壊
急激な価値判断の変化のため、世代間の対立が生ずる。


教化されやすさ
教育・マスコミによって画一化された世界観を植え付けられやすく、個性が欠如する傾向が強い。これはもともと、価値判断を伴う文化によって学習されるヒトの特性によるものである。

独裁者ならずともマスコミ等によるある種の操作によって、個人は一定の価値観に洗脳されてしまう。

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自己家化現象は、自然淘汰の圧力から大幅に自由化した今日の我々に当てはまる。家畜はひとたび自然に戻せば生きていくことはできない。
今日のヒトも、科学技術という小屋と人口飼料にて保護されているが、ひとたびその補給がつかなくなれば、絶滅する可能性がある。
現在、家畜化の程度の低い国々の人たちが争って家畜化を望んでいる。

人間は様々な家畜を「有用さ」という価値判断によって改良してきた。同時に、人間は、互いに個人または集団を「有用さ」 という基準によって差別するようになった。

現代の文明の基本である都市文明の歴史は6千〜7千年である。 仮に1万年と考えても、生物の進化にとっては、ごく短時間である。
ヒトが動物である以上、行動のもとになるのは、脳にある遺伝的プログラムである。遺伝的プログラムはヒトの進化の歴史上、時間的に99%を占める採集狩猟の段階に形成された。1万年という文明の時間は、 この遺伝的プログラムの基本を変化させるには短すぎる。
1万年前のヒトが仮にこの世に生まれて、我々と同じ学習・教育を受けたとして、そのヒトが現代人と著しく異なる行動をするとは考えられない。我々は、1万年前の遺伝子で現代文明下の急激な環境変化に耐えねばならない。

動物の家畜化は、一つの種の動物がもつある特性を、人間の利益に適うように人為的に発達させた過程である。この過程を経ることで、その種は次第に、人工的に調整された生活条件に依存しなければ生きられないようになってしまう。ヒトも自分自身に対して自己家畜化を行ってきた。元来は、極めて多面的であったはずのヒトの性向や能力のうち、ある社会に役立つと考えられる面を、教育によって意図的に開発し、他の面は抑圧して、文明の進歩を実現してきた。一方で、ヒトはその社会が調整した生活条件に依存しなければ、生きられなくなってきている。この自己家畜化の過程には、ある社会が持つ文化によって大きな違いが生まれる。









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