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星の王子様 読書記録 第11節 うぬぼれ男との出会い

星の王子様の著作権は2005年に切れました。ここは私のフランス語学習の場であるとともに、文学を研究する場です。

  La seconde planète était habitée par un vaniteux : <Ah! Ah! Voilà la visite d'un admirateur!> s'écria de loin le vaniteux dès qu'il aperçut le petit prince.
  Car, pour les vaniteux, les autres hommes sont des admirateurs.
<Bonjour, dit le petit prince. Vous avez un drôle de chapeau.
--C'est pour saluer, lui répondit le vaniteux. C'est pour saluer quand on m'acclame. Malheureusement il ne passe jamais personne par ici.
--Ah oui? dit le petit prince qui ne conprit pas.
--Frappe tes mains l'une contre l'autre >, conseilla donc le vaniteux.

🌈訳
第二の星は自惚れ男が住んでいた。
<おお!おお!僕のファンが来たな!>

 王子様を見るやいなや遠くから自惚れ男が叫んだ。
 というのは、自惚れ男にとって、他の人間は皆自分のファンなのである。

<こんにちは。変な帽子を付けてますね。>王子様は言った。
<挨拶をするためさ。><人が僕に拍手喝采を送るときに挨拶をするためだよ。残念なことにここは誰も通らなくてね。>
ああ。はい?理解が出来ないまま王子様は言った。
<拍手してくれよ。>自惚れ男は勧めた。

🌈単語
admirateur
♢名詞 ファン、賛美者
acclame
♢acclamerの現在形第3人称
①・・・を歓呼して迎える、に喝さいを送る
②(~qn+属詞)(挙手または歓声によって)・・・を・・・に満場一致で選ぶ。
✅frapper
♢他動詞
①・・・を打つ、たたく、殴る
②[物が]・・・に衝突する、当たる、ぶつかる

loin
♢副詞 
((空間的に))遠くに、遠方に、離れて
((時間的に))隔たって;遠い過去[未来]に
♢熟語
de loin
(1)断然、はるかに、とびぬけて
(2)遠くから、離れて
(3)(古風)昔から、古くから
saluer
♢他動詞
①・・・にあいさつをする、会釈をする;別れを言う

vaniteux
♢名詞 男性形
うぬぼれの強い人、見栄っ張り
♢形容詞 うぬぼれた、虚栄心の強い

 Le petit prince frappa ses mains l'une contre l'autre. Le vaniteux salua modestement en soulevant son chapeau.
<Ça, c'est plus amusant que la visite au roi>, se dit en lui-même le petit prince. Et il recommença de frapper ses mains l'une contre l'autre. Le vaniteux recommença de saluer en soulevant son chapeau.
  Après cinq minutes d'exercice le petit prince se fatiqua de la monotonie du jeu :

🌈訳
王子様は拍手をした。自惚れ男は、恭しく帽子を持ちあげながら、挨拶をした。
<こりゃ、王様を訪ねるよりも面白いぞ。>
王子様は内心そう思った。
そして彼は再び拍手をした。自惚れ男は、またもや帽子を持ち上げながら挨拶をし始めた。
5分も行動していたら王子様はその単調な遊びに疲れてきた。

🌈単語
exercice
♢男性名詞
①練習、訓練
②運動、体操
jeu
♢男性名詞
1⃣
①(子供の)遊び

monotonie
♢女性名詞
(嫌になる)単調さ、変化の無さ
soulever
♢他動詞
①・・・を少し上げる、持ち上げる

  <Et, pour que le chapeau tombe, demanda-t-il, que faut-il faire?>
  Mais le vaniteux ne l'entendit pas. Les vaniteux n'entendent jamais que les louanges.
<Est-ce que tu m'admires vraiment beaucoup? demanda-t-il au petit prince.
--Qu'est-ce que signifie "admirer"?
--"Admirer" signifie reconnaître que je suis l'homme le plus beau, le mieux habillé, le plus riche et le plus intelligent de la planète.
--Mais tu es seul sur ta planète!
--Fais-moi ce plaisir.
Admire-moi quand même!
--Je t'admire, dit le petit prince, en haussant un peu les épaules, mais en quoi
cela peut-il bien t'intéresser?>

🌈
<ねえ。帽子が落ちるようにするにはどうすればいいの?>
でも自惚れ男は聞いていなかった。自惚れ男は賛辞以外は聞こえないのだ。
<本当に君は僕に敬服しているのかね?>
ーー<敬服するってどういう意味?>
ーー<敬服するっていうのはね、僕がこの星で最も容姿端麗で、最高にドレッシーで、最もお金持ちで、最も賢い人であると認めることさ。
ーーでも、あんたの星にはあんたしかいないよ!
ーー僕を楽しませてくれよ!
それでも僕を敬愛してくれ!
僕は敬服するよ、肩をすくめながら王子様は言った。
でも、いったい何のためにそんなことに興味を持っているの?

🌈単語
✅épaules

♢女性名詞 複数形
①肩
♢熟語
hausser les épaules
(無関心、不満、軽蔑を示して)肩をすくめる、肩をそびやかす
♢女性名詞
①((複数で))賛辞
②((文章))賞賛
③((複数で))[カトリック]頌詩、ほめ歌
✅reconnaître

③・・・を認める;認知する
haussant
♢hausserのジェロンディフ
①・・・を上げる、高くする
②[音、声]を高める、上げる
intéresser
♢代動名詞
s'intéresser
・・・に興味を持つ、好意を寄せる

Et le petit prince s'en fut.
<Les grandes personnes sont décidément bien bizarres.>
se dit-il simplement en lui-même durant son voyage.

🌈
それから王子様は去って行った。
大人って、どう考えてもおかしいよな。
旅の途中で、ただただ王子様は心の底からそう思った。

🌈単語
✅bizarres
♢形容詞 複数形
奇妙な、風変わりな、普通ではない;不可解な
décidément
①((多く文頭で))まったく、確かに;どう考えても、つまり、結局
②(古)断固として、決然として


🌈文学 解説 自惚れ男の心理

 人は「虚」を追いかける生き物だ。これは私がnoteの記事で再三述べていること。前の星では、「権力」という「虚」に酔いしれた王様の話だった。

 では今回は何だろう。「自惚れ」って何だろう。
私の持っている対訳本は、「見栄張り男」と訳してある。虚栄心が強い男ということだ。だけど、「虚栄心」については、既に「薔薇」の話で語ったし、この男の行動から見ても、見栄っ張りというよりは、「自惚れ」の方が適切な表現であるように感じる。

 vaniteuxという単語は、見栄っ張りと、自惚れどちらの訳も可能であると辞書には書いてある。

 私は、「自惚れ男」と訳した。しかし、果たしてこの訳も正しいかどうか・・・。日本語の「自惚れ」と「見栄」の定義も曖昧なのである。

 まず、この男の行動を見て不思議に思うことは無いだろうか。仮にこの男が「自惚れ」ているのであれば、自分のそばを誰も通らなかったとしても、この人は自分で自分に満足ができるはずなのである。なぜならば、自惚れているからだ。

 自惚れというのは、自分で自分の魅力に取りつかれているような人間を言うのが、常識的な考え方だ。いわゆるナルシストである。ナルシストは、自分の姿を見てその美しさに酔いしれるように、自分のすばらしさに自分で満足するのだから、これも正確ではないように思うのだ。

 なぜならば、王子様に対して、自分を賞賛するように要求するわけである。自惚れているなら、一人でも別にいいではないかと、そうは思わないだろうか?

 前回の王様は、「権力者」と銘打っていたが、実体は、一人じゃ何にもできない男だった。

 私の目でとらえたこの男の正体は、「自分に自信のない男」である。つまり、自分が自分であることによって成り立っているのではなく、この人間は、全てが周りの評価によって成り立っているのである。

 周りの人間が、あなたは素晴らしい!と言えば、自分は素晴らしい。
 周りの人間が、あなたを尊敬する!と言えば、自分は尊敬に値する。
 周りの人間の評価こそが、自分を測る物差しであり、自分とは、周りの評価次第で変化する生き物なのである。

 自分では、自分のことが何一つわからないのだ。

 彼が立派な身なりをしているのは、周りの人間が、それが立派な身なりであると、ほめたたえた格好だからである。

 彼が恭しく礼をするのは、立派だと言われた人が行っていた礼だからである。

 皆が評価を与える「何らかの立派な存在」を目指して、彼は一生懸命なのだ。彼は自分自身から完全に目を背け、「何らかの立派な存在」と同じ存在になろうとしているのである。

 だから、王子様が誉め言葉以外のことを言っても、その言葉を信じないのである。
 
 どういうことかというと、自分が行っている、ありとあらゆることは、過去誰かの賞賛を受けた人たちと、全く同じことをやっているからである。

 そうした、伝統があるのだ。その伝統の中に自分が身をゆだねていて、自分が誰かから馬鹿にされるということなどありえない。そこにはとてつもない自信があるのである。他者が確かに賛美し、賞賛していた行動だという自信があるのだ。それも結局他人から与えられた自信なのである。

 だから、自分に何らかの非難が発生しても、結局は脳内で「嫉妬しているんだ。」と変換が行われたりする。そうではなかったとしても、自分が正しい。その正しさに文句を言うということは、そいつは間違っている、と考えるのだ。
 
 「自信がない」。「自分がない」。自分がないから、過去に賞賛を受けた人のまねばかりをする人生を進んでいく。結局は、他者の人生である。
 自分があこがれたそういった人々は、立派な服装をしていて、その人は、恭しく帽子を取ってお辞儀をして、皆に賞賛されている。(実際のところ、別に立派な服を着ていなくても立派だった人は多いのだが、彼の目にはそういう人は目に入らないようだ。)

 やばいのが、その表面しかとらえていないということだ。その人たちがそれだけ賞賛されているのはどうしてか。陰でどれほどのことを成し遂げてきたのか、ということは、彼にはさっぱりわからないのである。立派だと言われている人たちが、そうしてきたから、彼はその皮相な情報だけを頼みとして、このような行動を繰り返しているのだった。

 彼はそれで気持ちよくなれるのだし、彼はそれで幸せだったのだ。しかし、どこか空虚な気持ちを抱えているに違いない。

 例えば、小学校に入り、中学校は中高一貫!大学は東大や外国の名門校に行き、将来は外資系企業などに入って!という、立派だと言われた人の人生を必死で追いかけている人間たちである。

 彼らは彼ら自身の人生が本当はあるはずだったのに、自分達に自信がないがために、立派だと言われている他人の人生に自分の人生全てをゆだねてしまうのである。

 そうして結局、自分のない自惚れ男へと変化してしまうのだ。

彼らにとって、自分達が讃えられるのは当然なのである。なぜならば、皆がすごいと評価してきた道を、自分は進んできたからである。

 確かに、虚栄もかなり手伝ってはいるものの、自惚れと虚栄は同義であるとはいえない、というのが私の見解だ。

 自惚れる人間は、自分自身に満足をしているのではない。誰かが賞賛を与えてきたものに対して、自分がそれに到達していると思えているからこそ、ご満悦になっているのである。そして、その幸福感を得た以上、それを手放したくはなくなるし、より賞賛を求めることにより、自分を何度も再確認しようとするのである。何度も再確認しようとするのは、やはり自信がないからである。

🌈昔出会ったことのある自惚れ男(具体例)

まぁ、読まなくてもいいけど、すごいひどい事例だから・・・報道規制w

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