吉岡果音
右目が金色、左目が黒色という不思議な瞳を持つ青年キアランは、自身の出生の秘密と進むべき道を知るために旅に出た。幼かった自分と一緒に預けられたという「天風の剣」のみを携えて――。 闇と光が交差する、異世界ファンタジー。 ◆小説家になろう様、pixiv様、アルファポリス様、ツギクル様掲載作品◆
新天地で働く会社員、勇一。勇一は、自分をごく普通の人生を送ってきた、そしてこれからもいわゆるごく普通の人生を歩んでいく、平凡な人間と思っていた。 特殊能力があるなんて、思うはずもなく――。 突然現れた不思議な存在、幽玄と共に、勇一は化け物退治をする羽目に……! 幽玄の謎、出会う奇妙な存在たち――。日常と非日常を飛び回り、栄養ドリンクを片手に勇一は今日も戦う……! ◆小説家になろう様掲載作品◆
【あらすじ】 ルシルが母からおつかいを頼まれ、早五年。 魔法使いである母から依頼されたおつかいは、「赤ドラゴンの卵一パック、人型樹の実三個、夜行石亀の尾一束、りんごとはちみつカレーの究極ルー一箱」など、とんでもない内容だった。 きっと、これはおつかいではなく魔法使いの修行の旅。そう推察するルシルだったが、魔法というより武術の技が磨かれるいっぽう。 このおつかいには、異なる意味が含まれている……。 旅の剣士ヒューや、かつて勇者と呼ばれ放浪の旅に出た父と遭遇しつつ、ルシルの運命が動き出す――! ◆小説家になろう様掲載作品◆
昔むかし。人を襲い、害をなす悪鬼と間違えられ、小さな瓶の中に封じ込められてしまった、名もない子どもの小鬼。 長い歳月のあと、封印から解き放って救い出し、レイという名前まで付けてくれた魔法使いレイオルは、親切な人間なのだと思ったが――。 レイオルの旅は、「人間を卒業するための旅」という。 かつてこの世界を二度も滅ぼした、眠れる怪物ウォイバイルを、レイオルは自らが怪物となって喰らおうとしていた。 小鬼のレイと、レイオル、そして道中出会う仲間たち。 冒険の末訪れるのは、光差す未来か、それとも新たな闇か。異世界冒険ファンタジー。 ◆小説家になろう様掲載作品◆
翔太は、通学路に「道」を見つけた。 あるはずのない、不思議な道。好奇心から、道へと迷い込む。 そこは、異界への入り口だった――! 異界の住人たちと織りなす、不思議な冒険ファンタジー。 ◆小説家になろう様掲載作品◆
第十章 空の窓、そしてそれぞれの朝へ ― 第144話 ひとりでできることなど、ほんのわずかだ ― 「シルガー……!」 キアランは、息をのむ。 雪に覆われた森に降…
第10話 銀硝空間、架夜子とよる まるで、おもちゃのような町並みだった。 高い空からは建物も道路も、嘘みたいに小さく見える。 この町に住み始めて日が浅いので、…
第九章 海の王 ― 第143話 藍色の夢の世界へ ― 長い銀の髪が、厚い雲を割って差し込む光を受け、透けるように輝く。 どさっ、そんな音が、時を止めたような純白…
第9話 傘、白玉、アグレッシブ 太陽が高く昇っていた。 少女が、小学校の門を通り抜ける。少女の背に、ランドセルはない。 「こちらから探しにくいなら、向こう…
第九章 海の王 ― 第142話 私に、託してくれた ― 雪空のかなたに消えゆく、唯一無二の特別な剣。それはアステールという名の、魂を宿し、世界に安定をもたらすとい…
第8話 語る傘 「ぶはあっ!」 息苦しさに、目が覚めた。顔面に、ちょっとした謎の重みと体温、そしてこそばゆい感じ。 「白玉っ……、お前か……!」 顔の上に、…
第九章 海の王 ― 第141話 課された運命の重り ― 空が、震えている。 激しい戦いの波動を感じる。 カナフは、険しい表情で雪空を見上げていた。 「ようやく見…
第6話 廃屋の人影 星が、出ていた。 「いらっしゃいませー」 自動ドアが開くと、大学生らしきバイト君による、ほぼ棒読みの挨拶。 今日も昨日同様、夕方以降が…
第九章 海の王 ― 第140話 暗黒の怪物 ― 雪がすべてを覆い隠すことはできない。 恐ろしい光景も、時間も、止めることなくただ降り続ける。 パールの腕が、シト…
第6話 鉄傘 アバターって……、つまり仮の自分、現実世界でないところで活動する、自分の分身みたいなもの……? 勇一は、紫月の言葉を心の中で反芻する。本物の紫…
第九章 海の王 ― 第139話 あの日の、約束 ― 流星の中を行くように、雪が後ろへと流れていく。 キアランと花紺青は、猛スピードで雪の降りしきる空を飛んでいた…
第5話 先制パンチ 「勇一!」 謎のふわふわ毛玉に乗って空間を移動する勇一に、銀の髪を風になびかせながら並走して飛ぶ幽玄が、声をかけた。 それは、厳しい口調…
第九章 海の王 ― 第138話 愚かで、無様で ― 鉛色の空から、絶え間なく生み出される純白の結晶たち。 炎の剣を構えたシルガーと、人間の大きさの姿の四天王パー…
第4話 座像、そして、ふわふわ 町のはずれ、昼なお暗い、山の中。 ひっそりと、小さなお堂があった。 「幽玄……、やはり厄介な存在……」 格子戸の向こう、お…
第九章 海の王 ― 第137話 お前を目の前にして ― 「アマリアおねーちゃん!」 シトリンの長い髪が、うねりながら伸びていく。アマリアを抱えて空中を落下し続ける…
第3話 迷惑な予言 自転車を、買おう。 会社まで徒歩圏内とはいえ、こういう非常時の際はさすがに困る、と勇一は思った。幸い無料の駐輪場も設置されている。これは…
2024年10月1日 22:54
第十章 空の窓、そしてそれぞれの朝へ― 第144話 ひとりでできることなど、ほんのわずかだ ―「シルガー……!」 キアランは、息をのむ。 雪に覆われた森に降り立ったキアランと花紺青の前には、シルガーとシトリン、翠、蒼井がいた。 降り注ぐ一筋の日差しを浴び、堂々とした姿勢で佇むシルガー。その手にしっかりと掴まれていたのは天風の剣。そして、足元には巨大な怪物の死骸。それから、シルガーの背
2024年9月29日 18:41
第10話 銀硝空間、架夜子とよる まるで、おもちゃのような町並みだった。 高い空からは建物も道路も、嘘みたいに小さく見える。 この町に住み始めて日が浅いので、おそらくではあるが、取引先のビルは通り過ぎている。「白玉……、どこまで飛ぶ気だよっ!?」 勇一は上空の風の中、自分を乗せて空を飛ぶ毛玉怪物、白玉に向かって声を張り上げた。 すると人間の言葉を話せない白玉に代わり、傘からの返事
2024年9月25日 15:48
第九章 海の王― 第143話 藍色の夢の世界へ ― 長い銀の髪が、厚い雲を割って差し込む光を受け、透けるように輝く。 どさっ、そんな音が、時を止めたような純白の森に響き渡る。梢に積もった雪が、地面に落ちたのだろう。 シルガーは、目の前に立つ四天王パールを、じっと見据える。 手にした、天風の剣を構えようとせずに。 「立っているのもやっと、そんなふうに見えるなあ」 パールは、金のま
2024年9月22日 19:15
第9話 傘、白玉、アグレッシブ 太陽が高く昇っていた。 少女が、小学校の門を通り抜ける。少女の背に、ランドセルはない。 「こちらから探しにくいなら、向こうから出て来てもらえばいいのよ」 少女は、一人呟く。 校門近くのクスノキの前。立ち止まりゆっくりと、両手を挙げた。 そして、振り下ろす。 ドンッ。 大きな音に、付近の鳥たちが一斉に飛び立つ。 土埃。校舎ほど近い場所に、大
2024年9月18日 15:20
第九章 海の王― 第142話 私に、託してくれた ― 雪空のかなたに消えゆく、唯一無二の特別な剣。それはアステールという名の、魂を宿し、世界に安定をもたらすという、希望の剣。天風の剣――。「アステールッ!」 キアランは叫んだ。空の窓を永遠に閉ざすという大切な道具を見失う焦りからではなく、アステールという大切な友を守りたい一心で。「キアラン! ひとまず、アステールのほうへ行くよっ」
2024年9月15日 18:30
第8話 語る傘「ぶはあっ!」 息苦しさに、目が覚めた。顔面に、ちょっとした謎の重みと体温、そしてこそばゆい感じ。「白玉っ……、お前か……!」 顔の上に、ふわふわ毛玉怪物、白玉が乗っていた。勇一が慌てて起き上がったため、白玉は布団の領空から弾かれてしまった。 寝起きで機嫌の悪い顔の勇一に睨まれた白玉だったが、特に悪びれもせず、ふわりふわりと体を上下させながら浮かんでいる。 これ
2024年9月11日 22:31
第九章 海の王― 第141話 課された運命の重り ― 空が、震えている。 激しい戦いの波動を感じる。 カナフは、険しい表情で雪空を見上げていた。「ようやく見つけましたよ、カナフ」 カナフの目の前に、黒い髪の高次の存在が立っていた。 「……今は、私のことを構っている場合ではないのではないでしょうか」 カナフは、キアランと花紺青がパールのほうへ向かったことを、離れた場所から感
2024年9月8日 18:40
第6話 廃屋の人影 星が、出ていた。「いらっしゃいませー」 自動ドアが開くと、大学生らしきバイト君による、ほぼ棒読みの挨拶。 今日も昨日同様、夕方以降が彼のシフト勤務時間なのだろう。 つい、入ってしまった。 少なくともしばらくは通わないようにしようと思ったコンビニに、勇一は立ち寄ってしまっていた。 勇一のそばには、勇一以外の存在。白玉だ。 勇一の右肩の上には、スマホほどの
2024年9月3日 22:49
第九章 海の王― 第140話 暗黒の怪物 ― 雪がすべてを覆い隠すことはできない。 恐ろしい光景も、時間も、止めることなくただ降り続ける。 パールの腕が、シトリンへと襲いかかる。 四天王パールは、まるで野の花を摘むように、たやすくシトリンの首をもぎ取ることができるだろう――。「シトリンーッ!」 キアランは叫んだ。雪空を斬る、一筋の光と共に。 一筋の光。 それは、天風の剣だっ
2024年9月1日 18:44
第6話 鉄傘 アバターって……、つまり仮の自分、現実世界でないところで活動する、自分の分身みたいなもの……? 勇一は、紫月の言葉を心の中で反芻する。本物の紫月は、現実世界にいて、目の前の女性は幻影みたいなものか、とおぼろげながら理解する。「幽玄は、突然現れた弁慶みたいな大男を、『化身』って表現してました。ということは、あの大男も本体となる人間がいるってことですか?」「ええ。そうよ」
2024年8月28日 12:55
第九章 海の王― 第139話 あの日の、約束 ― 流星の中を行くように、雪が後ろへと流れていく。 キアランと花紺青は、猛スピードで雪の降りしきる空を飛んでいた。「花紺青っ。もっと、速度を上げられないかっ?」「キアラン、振り落とされない? 大丈夫?」「ああ! 私は平気だ! もっと、速く……!」 速く、と思った。雪が全身を打ち付ける。痛いほどの冷たさに痺れる皮膚を、熱い血潮が鼓
2024年8月25日 18:53
第5話 先制パンチ「勇一!」 謎のふわふわ毛玉に乗って空間を移動する勇一に、銀の髪を風になびかせながら並走して飛ぶ幽玄が、声をかけた。 それは、厳しい口調だった。「前言撤回。予定を変更する」「え……?」「嗅ぎ付けられた。傘を、持て」 幽玄は傘を勇一に投げ渡す。「わっ」 慌てて勇一は傘を手に掴んだ。「ば、化け物が、また現われたのか……!?」 この傘は、化け物
2024年8月21日 15:39
第九章 海の王― 第138話 愚かで、無様で ― 鉛色の空から、絶え間なく生み出される純白の結晶たち。 炎の剣を構えたシルガーと、人間の大きさの姿の四天王パールは、空中で向かい合う。 シルガーの瞳は、遮る雪ではなく、目の前の四天王パールを見据えていた。「やれやれ。どうしても君は、僕を殺したいんだね」 ふう、とパールは肩をすくめ、ため息をつく。 パールの滑らかに輝く白い肌についた
2024年8月18日 19:02
第4話 座像、そして、ふわふわ 町のはずれ、昼なお暗い、山の中。 ひっそりと、小さなお堂があった。「幽玄……、やはり厄介な存在……」 格子戸の向こう、お堂の中に一人座る男が呟く。 ろうそくに照らされた、男の手には、すすけたお札のような紙。男は、身じろぎもせず床の上に正座したまま、持っている紙を眺めている。 炎であぶられてしまったかのように、黒と茶色の染みが広がってしまっているその
2024年8月14日 17:32
第九章 海の王― 第137話 お前を目の前にして ―「アマリアおねーちゃん!」 シトリンの長い髪が、うねりながら伸びていく。アマリアを抱えて空中を落下し続ける、オニキス、そしてアマリアへ向けて。 地上は木々が生い茂り、その間を蛇行した川が流れているのが見える。オニキスはともかく、このまま地上に激突したら、アマリアの命はない。 アマリアおねーちゃんを助けるには、オニキスごと、捕まえる
2024年8月11日 18:51
第3話 迷惑な予言 自転車を、買おう。 会社まで徒歩圏内とはいえ、こういう非常時の際はさすがに困る、と勇一は思った。幸い無料の駐輪場も設置されている。これは活用しない手はない。 田舎は車必須だよ、と言われたが、車を持つのは費用の面でためらわれ、もう少し様子を見ようと思っていた。ちなみに、免許はすでに取得済み、ペーパードライバーだった。 そんなことを考えながら、勇一はひた走る。会社まで。