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悪辣の魔法使い

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昔むかし。人を襲い、害をなす悪鬼と間違えられ、小さな瓶の中に封じ込められてしまった、名もない子どもの小鬼。  長い歳月のあと、封印から解き放って救い出し、レイという名前まで付けて… もっと読む
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記事一覧

【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第34話

第34話 最初で最期の宴  旅館の売店には、ド派手な広告文と共に饅頭の箱が並べられていた。…

吉岡果音
3日前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第33話

第33話 目の数と竪琴 『ただし――、怪物の目の数には、くれぐれもお気を付けください』  …

吉岡果音
10日前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第1話

【あらすじ】   昔むかし。人を襲い、害をなす悪鬼と間違えられ、小さな瓶の中に封じ込めら…

吉岡果音
7か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第2話

第2話 レイオル、そしてレイオル  逃げ出したほうが、いいのかな。  レイは、ぼんやりと…

吉岡果音
7か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第3話

第3話 旅の目的、俺の存在  窓から差し込む、柔らかな朝日。テーブルの上に運んだお膳には…

吉岡果音
7か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第4話

第4話 当たり前じゃないものだから、当たり前に  黒い大蛇の姿の怪物が、襲い来る。  レ…

吉岡果音
7か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第5話

第5話 半身の契り  木の葉の間から降り注ぐ日の光は、川面で踊るように輝く。  太陽は、真上近くにあった。 「とうーっ!」  盛大な水しぶきを上げ、川に飛び込んだ。  レイのお目当ては、魚。レイオルに買ってもらった服は脱ぎ、たたみこそしなかったが、それなりにきちんと川岸に置いてきた。  お昼は、もっとご馳走を食べてもらうんだ!  流れの中、水泡を生み出しながら光る鱗たち。小鬼であるレイは、脅威の身体能力で川魚を一匹は口にくわえ、一匹は右手、もう一匹は左手と合計三匹も

【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第6話

第6話 せめて勇者に  ざわ、ざわ、ざわ。  囁かれる、声。人ではない者たちの。  ほと…

吉岡果音
6か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第7話

第7話 少女救出作戦に、乾杯  旅人たちが宿屋を探し、働き終えた大人たちが酒場に繰り出す…

吉岡果音
6か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第8話

第8話 朝の光、夜の光  ホットミルクの乾杯は、甘い秘密。ほんのり大人の味がするような気…

吉岡果音
6か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第9話

第9話 帽子収集家 「俺も、情報を得たぞ!」  おはよう、より先に出た旅人アルーンの第一…

吉岡果音
5か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第10話

第10話 それは幸いだったと思う  うっそうと連なる緑が途切れ視界が開けたとき、小高い丘の…

吉岡果音
5か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第11話

第11話 賑やかな旅のはじまり 「私も一緒に連れて行ってください」  晴天の朝に見る一面の…

吉岡果音
5か月前
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【創作長編小説】悪辣の魔法使い 第12話

第12話 剣と怪物退治 「レイオル……! お前も剣を使えるのか!」  大剣を構えたアルーンが、レイオルの背に声を掛けた。青く光る剣を持つレイオル。  旅の剣士アルーンは、剣を手にしたレイオルの立ち姿を一目見て、レイオルが凄腕の剣士であるとすぐに理解した。  それにしてもアルーンとって不思議だったのは、レイオルの右手にしっかりと馴染んだ様子の美しい剣が、どう見ても突如なにもない空間から現れたようにしか見えないことだった。 「まあな」  レイオルの剣が、鋭く大きな青い軌跡