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天風の剣

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右目が金色、左目が黒色という不思議な瞳を持つ青年キアランは、自身の出生の秘密と進むべき道を知るために旅に出た。幼かった自分と一緒に預けられたという「天風の剣」のみを携えて――。 … もっと読む
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【創作長編小説】天風の剣 第125話

【創作長編小説】天風の剣 第125話

第九章 海の王
― 第125話 悲しみの向こうの光 ―

 吹き荒れた嵐が嘘のように、晴れ間が広がっていく。

 花紺青は――。

 パールの尾に弾かれ、意識を失ったまま落下してしまった花紺青。キアランは、彼が無事かどうか、一刻も早く知りたいと切に願った。カナフとシルガーに尋ねようと急いでキアランが口を開いた、まさにそのとき――。

「キアラン、無事でよかったー! 心配したよー」

 大きく手を振

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【創作長編小説】天風の剣 第124話

【創作長編小説】天風の剣 第124話

第九章 海の王
― 第124話 携行食 ―

「花紺青っ!」

 鈍い音がした。
 パールの尾が、花紺青の操る板を直撃し、そこから続けざまに花紺青の後頭部にも激突していたようだった。
 板もろとも花紺青、キアランは落下する。

 花紺青――!

 垣間見えた花紺青の表情は、うつろで――、意識を失っているようだった。

 うっ!

 強い風と共に、なにかが迫る。それは鱗に覆われた、パールの尾。

 

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【創作長編小説】天風の剣 第123話

【創作長編小説】天風の剣 第123話

第九章 海の王
― 第123話 雷鳴と、涙と ―

 ギャアアアア……!

 四天王パールの絶叫が、響き渡る。
 パールの姿が、一瞬にして巨大な半身蛇の姿に変化した。まるで見上げる壁のように高く長く続く尾が、轟音と共に大地を打ち、土埃を上げる。

「あっぶね!」

 ライネが愛馬グローリーの手綱を引き、とっさに左方向に跳ね避ける。判断がわずかでも遅ければ、パールの尾の下敷きになるところだった。ダン

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【創作長編小説】天風の剣 第122話

【創作長編小説】天風の剣 第122話

第九章 海の王
― 第122話 笑う首 ―

「キアラン!」

 ダン、ライネは、なにもない空中から突然現れたキアランを見て驚く。
 キアランは、愛馬フェリックスに乗り天風の剣を構え、四天王パールを見据えていた。

「へえ。君、空間から自在に姿を現すなんてことができるんだ」

 パールは感嘆の声――のように聞こえる――をあげた。

 こいつ……、楽しんでやがる……!

 ギリ、とキアランは歯を食い

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【創作長編小説】天風の剣 第120話

【創作長編小説】天風の剣 第120話

第九章 海の王
― 第120話 最高の食事 ―

 美しい夢を見ていられればそれでいい、そう思っていた。
 海の底でずっと静かに眠り続けていたい、そう思っていた。
 しかし、様々な魂と出会ってしまった。様々なエネルギーを、心を知ってしまった。
 夢を見続けるための食事が、いつの間にか変わっていた。

 今、僕の心は熱く、喜びに震えている――。

 もっと刺激を、と思った。
 もっと新しい体験を、自

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【創作長編小説】天風の剣 第121話

【創作長編小説】天風の剣 第121話

第九章 海の王
― 第121話 あと何秒 ―

 どす黒い液体が四天王パールの足首から流れ落ち、ゆっくりと大地に染み込んでいく。
 足元から伸びる黒い影が、一層濃密な闇をまとう。
 四天王パールは、ふふっ、と軽く笑い声をたてた。そして、自分の足元に目をやりつつ、かすかに顔をしかめた。

「浅い傷でも、やっぱり急所は痛いなあ」

 ダンが、愛馬バディの背の上で魔法の杖を構える。集中し、強い魔法を唱え

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【創作長編小説】天風の剣 第119話

【創作長編小説】天風の剣 第119話

第九章 海の王
― 第119話 ドーナツの向こうの青空 ―

 キーン――。

 愛馬バームスの手綱を握っていたアマリアは、強いめまいを感じていた。
 肌が泡立ち、まるで雷に打たれたような感覚が体中を走る。

「来る……!」

 背後から迫る、巨大な魔のエネルギー。
 アマリアは、それが父母や親族の仇であると感じ取っていた。

「四天王パールが……!」

 魔導師オリヴィアも、ダンも同様に気付いて

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【創作長編小説】天風の剣 第118話

【創作長編小説】天風の剣 第118話

第九章 海の王
― 第118話 強くなるんだ ―

「キアラン! 僕、新しい魔法を使えるようになったよ!」

 ルーイがキアランの両手を取り、顔を輝かせた。
 とはいえ、ルーイの笑顔には今までと比べ、暗い影のようなものが感じられた。
 オニキスの襲撃を受け、たくさんの人々が犠牲となり命を落とし、そしてたくさんの人々が負傷したところを目の当たりにし、深い悲しみと恐怖を心に抱えてしまったのだろうとキア

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【創作長編小説】天風の剣 第117話

【創作長編小説】天風の剣 第117話

第九章 海の王
― 第117話 様々な立場 ―

「皆、無事で本当によかった――!」

 四聖の皆やソフィアとテオドルの変わらぬ笑顔に触れ、キアランは深い喜びに声を震わせた。

「キアランも花紺青も、無事で本当に嬉しいよ……!」

 ルーイも皆も、涙ぐむ。
 守護軍の陣営の中でも、皆がいるこの場所は洞窟になっていた。入り口は、人一人通るのがやっとで狭かったが、中は広い。
 洞窟内は、魔法の光で明る

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【創作長編小説】天風の剣 第116話

【創作長編小説】天風の剣 第116話

第九章 海の王
― 第116話 守護軍 ―

「ルーイ! ソフィアさん! ニイロ! フレヤさん! ユリアナさん! テオドル……!」 

 キアランの皆を呼ぶ叫び声は、激しい吹雪にかき消される。
 そこにあったはずの守護軍の陣営は、すでになかった。この場所に張られていたはずの結界も、ない。
 闘いの痕跡は雪に隠されたのか、かすかに爪痕がうかがい知れるのみ。オニキスの攻撃を受け、四聖と守護軍は、ノース

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【創作長編小説】天風の剣 第115話

【創作長編小説】天風の剣 第115話

第九章 海の王
― 第115話 ぼろぼろの翼 ―

 まさか――。

 朝もやに包まれた森の中、キアランたちは時を見失う。
 シルガーは、呆然とする皆に構わず言葉を続ける。

「王都は壊滅状態だ。それより――」

 壊滅状態……! と、いうことは――!

 キアランは思わず、シルガーの言葉を遮るようにして尋ねていた。

「白の塔は……! 白の塔は、どうなって……!」

 シルガーは、首を左右に振っ

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【創作長編小説】天風の剣 第114話

【創作長編小説】天風の剣 第114話

第九章 海の王
― 第114話 王都は、もう ―

 夜空は、黒い雲に覆われていた。
 暗闇の中、いくつもの金の光が飛び続けている。
 金の光に照らされ、ほの白く浮かぶ、白い肌。その下部に続く、白銀に輝く鱗。長い尾を城全体に張り巡らすように巻き付け、城壁を抱きしめるようにしてそれは眠っていた。
 体の線に沿って流れるような長い髪が妖しい美しさを放つ――、四天王パールだった。
 そして、パールの周り

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【創作長編小説】天風の剣 第113話

【創作長編小説】天風の剣 第113話

第九章 海の王
― 第113話 一緒だね ―

 若い魔導師と年老いた魔導師が結界の外である、吹きすさぶ純白の景色を見つめていた。
 ノースストルム峡谷は、いまだ吹雪に包まれている。

「お師匠様。天風の剣で永遠に空の窓を閉じられるという彼らの話は、本当でしょうか?」

 若い魔導師が、自身の師である老魔導師に尋ねる。

「おそらく、真実であろう。キアラン殿とすれ違った際、とても力強く神聖な波動を

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【創作長編小説】天風の剣 第112話

【創作長編小説】天風の剣 第112話

第九章 海の王
― 第112話 最期の時間くらい ――

「これは、あのときの術……」

 四天王パールは、うつろな瞳で呟いた。
 四天王アンバーの術「封印の鎖」が、パールの尾の部分からすぐに全身へと広がっていく。
 やがて、パールの動きが止まった。

「よかった……。一応、術が効いているようですね」

 冷静な声でアンバーは呟く。

「この前のときより、私自身の状態はよいですが、やつの力自体が格

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