記事一覧
百花繚乱のエリチェレン(第1話)【ベツレヘムの星】
あらすじ
博物学者のカリアスと共に、アウグストゥス帝の治めるローマ帝国を駆けずり回るのは、植物を操る力を持つ少女、エリカ。二人は、この世ならざるものの影響で暴走する草木を刈ってまわっていた。
だが神秘を取り締まる魔術師、ヘファイスティアにカリアスを殺される。エリカこそがこの世ならざる植物の一部、【エリチェレン】だったためだ。
エリカは復讐のためヘファイスティアの軍門に降る。
その後30年の間、この
資本主義の落日に、嗤う三女神(第3話)
翌日。
各チャンネルのニュース番組は、ドル大暴落による世界的不況のニュースで大騒ぎとなっていた。
『FRB周辺に堆積した紙幣はどれも本物……』
『IMFは通貨発行記録の証憑提出を要請しており……』
『ダウ平均株価が急落……』
などと報じている。
「メルキオールは何でも換金できるんだよな? それならその金はどこから引っ張ってくるんだ?」
俺は至極当然の疑問をバルタザールに投げかける
資本主義の落日に、嗤う三女神(第2話)
「10億円か」
俺は、0の9個並んだ通帳を眺めていた。
これは最近開設した俺名義の口座の残高だ。どうやら本当にバルタザールの接収してきた資産の一部を継承できたらしい。
「人生上がったな」
一生働かなくて済む金額だ。
だが、上がったところで何になるのか?
別に以前から生活に困ってはいなかった。敢えて言えば、世界経済が混乱しかけている今でも通常の暮らしが維持できるようになったのは
資本主義の落日に、嗤う三女神(第1話)
あらすじ高校生の冬柴蓮は、人生など無味乾燥な単純労働に過ぎないと感じ、自殺を考えていた。そこへ現れたのは、未来予知の力をくれる女神、バルタザールだった。過去の契約者の財産を貸す代わりに、契約者の記憶、能力、全財産を死に際に接収するというバルタザールと契約した蓮は、未来予知のスキルと10億円を手にし、大富豪となる。
だが、「換金女神」ことメルキオールを従える世界一の大富豪、ガゼルは、そんな蓮の
百花繚乱のエリチェレン(最終話)【希望の欠片】
「ここは……?」
目覚めると、色とりどりの野花が咲き乱れる花園が広がっていた。
「エリュシオンだよ。斃れた英雄の行き着く先さ」
青年が答える。まさか、この人って。
「申し遅れたね。私はゼウスとダナエーの子、ペルセウス。さっきは私の暴走を止めてくれて助かった」
「いえ、私はてっきり、あなたが怒っているのかと」
「まさか。既に死んだ戦士を叩き起こそうとする連中がいたようだ。誰なのか、見
百花繚乱のエリチェレン(第6話)【vsペルセウス】
師匠が死んで400年が経とうとする頃には、キリスト教はローマ帝国の国教となった。
長命であろうと思っていたエリチェレンの私にも、老いが顕れ始めていた。顔には皺が刻まれ、やつれてきた。ただ、動きの俊敏さは以前よりも増した気がする。
秘匿協会は復活の手がかりを見つけることはできていないようだ。それどころかエルサレムでイエスの遺骨を探してまわり、信徒や帝国からも目をつけられる始末だ。長くは持た
百科繚乱のエリチェレン(第5話)【移ろう時代】
それから30年間。私とヘファイスティアは神秘を狩り続けた。結局のところ、まだヘファイスティアの寝首をかくことには成功していない。なかなかの難敵だ。そして私はやはりエリチェレンのようで、外見が老いることはなかった。
久々の別行動の後、私はヘファイスティアと一ヶ月ぶりに再会していた。
「ユダヤ総督のピラトという男に話をつけてな。ナザレのイエスと会ってきた」
ヘファイスティアは、いつになく真
百花繚乱のエリチェレン(第4話)【ユグドラシルの予言】
「ちょっと。どういうことなんですか!」
「今奴が言った通りだ!」
ヘファイスティアはそれ以上説明せず、業火を浴びせ続けた。ユグドラシルは微動だにせず、炎を受け続けている。
「無駄だと分からないかなぁ?」
ユグドラシルはのんびりとした口調で窘める。抵抗する気は毛頭ないようだ。
だが、ヘファイスティアも無策というわけではないようだった。炎を囮に後ろに回り込み、短剣でユグドラシルの背を刺し
百花繚乱のエリチェレン(第3話)【カリアスの妹】
ヘファイスティアはアレクサンドリアの大図書館に向かうという。私たちはもうローマの市街地を抜け、郊外の森に達していた。
だが、まだヤマルギアの魔の手から逃れられたわけではない。私と瓜二つの、無数の疑似餌が追ってきていた。
「疑似餌と言いつつ、捕食しにかかってるわね」
私の偽物は、顔が縦に裂け、牙の並んだ真っ赤な口を開けた状態で走っている。
「エリチェレンとはそういうものだ。餌たる人間を
百花繚乱のエリチェレン(第2話)【魔女へファイスティア】
などと考えながら歩いていると、黒い影が近づいてくるのが見えた。私と同じくらいの背格好の女のようだ。いや、違う。同じくらい、ではない。なにもかも同じだ。瞳の色も、髪の状態も、顔つきも、全て。
自分と瓜二つの人間に出会うなんて思わなかった。いや、そもそも人ではないのかもしれない。
「帰りましょう。兄弟よ」
私の偽物は、いきなりそう口にした。意味不明だが、あり得なくはない質問だ。私には、15