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詩:『晴れた日に』

詩:『晴れた日に』

 (約300字)

こんなに澄んだ空にも 気持ちが塞ぐなら

こんなにも柔い光に 心寒いなら

気持ちを軽くいたしましょう

心に灯りをともしましょう

小さく固く縮んだ心の

大きく強く見せたい意地の

ひだを誰かに預けてみようか

隙間を誰かに埋めてもらうか

辛くて沈むだけならば

私が理由を聞きましょう

誰にも言えぬことならば

私が秘密を守りましょう

身の程知らずは私も同じ

身の丈

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糸をつむいで|命乞いする蜘蛛

糸をつむいで|命乞いする蜘蛛

猫というだけで愛されて
クモというだけで嫌われる

悪くないのに悪者にされて

見ただけで怖がられて

人間に見つかったら
そこで終わるの

隠れて命乞いをするように
生きているといえるか分からない

なれるなら
猫になりたかった
愛されたかった

世界に一つだけの花
それぞれ良さがあるという

じゃあクモには
どんな良さがあるの?

教えてほしい

突如
階段を見上げる
少年の声がした

クモは

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この空の下で どんな時も きみと過ごした日々を忘れる事はない。これからも  
ずっと忘れない。

短編 : 『 そのひと言があった 』

短編 : 『 そのひと言があった 』

  (約1,600字)

 

 キッチンには、明るい色合いの封筒を無造作に置いた。サンキャッチャーがキラキラと陽光を集めた明るい部屋なのに、気持ちだけが塞いでいた。

 あの日の午後の作業は、過去の経験には覚えがないくらい汚れ仕事のように感じて、自分のお財布から全てのお金を出して広げてみた。

 7,904円‥‥次の給料日まで何日あるんだっけ‥‥‥あたしは自分の労働時間をぼんやりと思った。

 

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【独り言】ありがとうございました!来年もよろしくお願いします!

【独り言】ありがとうございました!来年もよろしくお願いします!

 本日は12月31日、令和5年も もうすぐ終ってしまいますね。
新しい年に向かって頑張りましょう!
などと言っても、まあ、いつものように日々は過ぎ、ぬるっと新年を迎えるんだろうなぁ。

そんな訳で(どんな訳!)今年お世話になった方、何名かを(勝手に)ご紹介などしてみようかな😁
フォローワー様、全員を紹介する訳にもいきません。
ご紹介出来ない皆様、大変申し訳ありません。
m(_ _)m

🌷🌷

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短編 『 虹 』(最終話)

短編 『 虹 』(最終話)

     (約850字)

 2人は、欠けたピースを探していただけの同士だった。

 エイトは、足が伸ばせるソファーで寝るように言っても聞かなかった。

 私がベッドで眠る横で、座ったまま手を触れていた。

「一晩、それじゃ、風邪ひくよ」

私が怒ったフリをして言うと、嫌々そうな顔をして、ソファーに置いた毛布をズルズルと引っ張ってきた。

しばらくして、私は今の会社の人事異動の話を切り出した。

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短編 『 紫 』

短編 『 紫 』

 (約1,400字)

 苦しそうにエイトがうつむいたのを見た。

「ほんとのこと‥‥話す」

ー固唾を飲む、こういうことだ。
 普段感じない気持ちを抱えながら、私は両手に力を入れてエイトの言葉を待っていた。

「兄さんのこと、知らないと思うんだ。兄さんは昔から、女の人がほっとかないからさ。いろんな女の人と付き合ってた」

 声を出さずに頷いた。

 みどりさんに会ってからも、他に好きな人がいたん

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短編 『 紅 』

短編 『 紅 』

          (約1,500字)

 遠くに羊雲が広がっていた。
 朝露が葉っぱから滴り落ちる先にはまだ、受け皿に空の青がくっきりと映っていた。

 ジンちゃんの喫茶店に、タッパーを受け取りに行くエイトがいるはずだ。

 明るい紅を差したような外国のマスコットの人形を吊るしたコットンバッグを肩から下げた。バッグには薄布でくるんだ絵本を入れてある。

 私は洋服をワンピースに着替えてから、ブー

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短編 『 卵 』

短編 『 卵 』

 (約1,200字)

 勢いよく通り過ぎた風は、説明できないもやもやした気持ちと、クリスマスカラーのシャツから放たれた軽やかな無邪気さを受けて、帰り道が寂しくなかった。

 いつからだったろう。

 エイトの横顔であの人を思い起こさせていた現実から、いつの間にか逆転してしまったのは‥‥
 あの人を想う前にエイトを思い出すようになってしまった。家までは10分もかからない道のりが、明日のことを考えて

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