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「フランス人は10着しか服を持たない」日本語版タイトルに見る、足るを知ることと物欲とのせめぎ合い

フランス人は10着しか服を持たない

こんなに心を掴まれるフレーズって中々ない。いやいやだいぶ脚色入ってるでしょ、と冷静な声を心の中に感じつつ、でも気になってしまうものだ。私も、読んだ。

読んでみると、実際には10着ではないにしろ、気に入ったもの、いいものを長く使うことを薦める内容だった。

さて、この本を読んで私が一番印象になったことは、オリジナルの英語版タイトルと日本語版の違いに、意図がありそうだということ。

原題は"Lessons from Madame Chic. 20 stylish secrets I learned while living in Paris." 「マダム・シックから学んだこと」だ。

つまり、日本語に訳され日本で出版される際に、意図を持って「フランス人は10着しか服を持たない」という方向で売り出そうとしたのだ。

日本において「必要以上に服持ってない?」というアプローチはよく当たるのだろう。ミニマリストなり断捨離なり、物を減らしていくこと、既に持っている物で満足することが注目され、支持を拡大してきた。

足を知る、つまり現在の自分の状況や、持ち物、環境に満足することは、老子の時代からある概念だ。きっと、人間の欲というものはその時代からとめどなく溢れてくるものだったのだろう。

私は「足るを知る」の概念が好きだ。でも、ミニマリストにはいまいち乗り切れない。

マキシマリスト、つまり物があればある方がいいとか、物をたくさん増やすことに価値を見出すことを目指しているわけではないし、物が増えすぎてしまうのは困りものなのが現実だ。

でも「ミニマル」をテーマにするほど、ミニマルかどうかの軸を大事にしていないのだ。

「○着を超えちゃうからやめとこう」あるいは「○着くらいほしいから買おう」という尺度ではなく、必要だと感じたものや、心が動いたものを買うというのが私のスタンスなのだ。

「○着」というわかりやすく絶対的な尺度があれば、必要性をジャッジしやすくなるのかもしれないが、必要なものは必要だし、心が動いたものは動いたのだという風に考えている。それによって無駄な買い物、いらない服の所持をしてしまったとしても、まあ仕方ないかと捉えるのが私なのだ。

フランス人は(各シーズン)10着しか服を持たないのかもしれないけれど、私は必要があればそれ以上持つ。なぜなら私は数を基準に消費をしないから。

それがいいとか悪いとかではなく、私はそういう人なのだ。

足るを知ることと、物欲のせめぎ合い。これは私のきっと人生のテーマで、人生の相棒だ。

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