見出し画像

読書と旅行について。

カレル・チャペック『スペイン旅行記』

この本は旅の道中でよく読んでいました。一人旅が好きで、よくいろんな所に行きました。

2年前から1年前頃は電車よりも飛行機が好きで、飛行機に乗るために訪問先を選んでいました。何度もJALのクラスJに乗ったけど、JALよりも全日空が好きでした。
(私には高かったけど)カラフルな機体のFDAもお気に入りでした。今日は乗るのは紫だ!とか、搭乗前に赤いのが止まってるのが見えたりとか興奮しました。
大阪国際空港、成田国際空港、関西国際空港、那覇空港、長崎空港、東京国際空港、福岡空港、富士山静岡空港、中部国際空港。
今となってはどれも懐かしい。

飛行機内では眠ってしまうことが多いです。
寝ないときでも国内線のような短時間フライトの時はよく映画を観ます。
でも旅は必ず暇ができるから。
いつもこの本を持ち込み荷物に入れてました。

台北へのフライト、中国人だらけの機内で。
香港空港から銅鑼湾へのバスを灼熱の中並んで待ちながら。
マイナス20度、凍てつくシベリア鉄道の終点で。
歩き疲れて入った東大門のキンパ屋さんで休みながら。
大阪城公園で。
石垣島のバスの中で。
那覇のアパホテルで。
姫路城の近くのカフェでアーモンドトーストを待ちながら。
仙台で牛タン屋の行列に並びながら。
松本に着くまでのワイドビュー信濃の中で。
掛川駅から京都に行く東海道新幹線の中で。
神戸三宮駅で人を待ちながら。
何もない米原駅、網干行きの停車する車内で。
福岡のゲストハウスで。
上野から水戸へ行く常磐線の長時間の中で。。。

どこでもいつも一緒だった。
この本を見るたびにたくさんの思い出がよみがえります。
いつも、適当に開いたページから読み始めます。何回も読んでいるのに、ユーモアに溢れた文章だからいつも夢中になれる。
この本を片手に、車窓からの景色をよく眺めました。

そんな事を思い出しながら、今読んでいました。

この本は「私はいつか絶対にスペインに行くぞ!」という決意のもとに買いました。
スペインという国に行ったことはありません。でもスペインは私にとって他の外国よりも近いです。
知っていることが多いです。
スペイン語を二年間勉強していたし、そのためバルセロナもマドリードも友達がいます。もう話せないかもだけど、スペインが好きだったのです。
ホアキン・コルテスの動画ばかり繰り返し見ていました。
スペイン語の曲ばかり聴いていました。
アルモドバル監督の映画をたくさん見ました。
半年間スペインバルでアルバイトしていました。

でも結局、私は行きませんでした。
お金がなかったからと言いたいですが、それは嘘です。
香港に三度も行ったことを考えれば、それをやめてマドリードに行けたはずです。
でもスペインに行ってもなあ、と思ってしまったのでした。

この『スペイン旅行記』は、私のスペインに対するイメージをガラリと変えたとまでは言いませんが、なんだか満足しました。
私の心は、この本を読みながらスペイン周遊を楽しんでいました、チャペックと共に。
実家に帰省するときはミステリーを鞄に入れるのですが、旅行したいと思う気分にさせてくれるのはこの本が一番です。
彼が道中で見たもの、感じたことが鮮明に分かります。
スペインはラテン、イスラーム、ユダヤ、ロマ(作中ではジプシーと表記される)、バスクといったたくさんの民族の文化が交わりあって成り立っています。
スペインは闘牛とフラメンコの国ってわけじゃなくて、バスク地方だけの風習とか、ユダヤの街とか。
その断片を知れます。私はきっと人の見た目だけじゃあまり分からないことだけれど、彼のようなヨーロッパ人で知識のある人だからこそそういう細かな他文化をキャッチできるのかなとか思いました。
ワインの味だって、グラナダとアンダルシアで違うみたいということを知りました。
それに、この本を読んでスペイン語とチャペックの故郷チェコ語には同じ音の文字があるらしいということも知りました(CHとČ)。

とにかく、この本をたくさんの人に知ってもらいたいと思うかと言われればそんなことありません。
なぜならチャペックはナチスが最盛の時代を生きたチェコ人ジャーナリストで1929年に書かれたものなので、勉強になりはしても最新のスペイン旅行の役には立たないからです。

チャペックはドイツ、ベルギー、フランスを通る国際列車でピレネーを越えてスペインに入った時、目覚めて窓から外の、今までに見たことのない褐色の平野を見て「ピレネーの南の異郷、アフリカ」と言った場面が一番好きです。
いつか実際に見てみたいものです。
もう舗装されて山肌は見られないかもしれないけど。
そもそもヨーロッパ周遊するにしても、国際列車よりも航空機の方が安くて時間も早いから見ないかもしれないけどね。

こんなページもあります。
イメージが湧きます。

そして、チャペックの直筆イラストが所々にあって、その味わい深さも良いです。

私も色々なところに行くから、乗る電車やタイムスケジュールを書き留めた手帳にこんな風にスケッチをしたいと思い試したことがあります。
しかし、こんな風にサラッと緻密に絵が描けたことはなくて、破り捨てることだけしかありませんでした。
代わりに、スマホでパシャパシャ撮ったりはします。Googleフォトに位置情報が残るので、帰宅後にGoogleマップで開いてそれを追って写真と懐かしむのも楽しかったりします。

私は旅行が好きと就活のエントリーシートに書いたのですが、面接で旅行先とか失敗談を聞かれて、面接官も笑ってくれて少し緊張が解けたので、これから就活の方も気負わず気楽に頑張ってみたらいいと思います。

話が変なところに着地して焦っていますが、思い入れのある本についてでした。
旅行が出来ない今だからこそ、久しぶりに開いてみて良かったと思います。

先日の歌集に引き続き、海外訪問っぽい感じで、自分の知らない趣味だとか欲望がが出てる。。
すみませんがご勘弁ください。

一番最後の海外は去年のソウルですが、関空までの特急はるかでこの本を読むか人間失格か迷って結局人間失格を読みました。旅行にぴったりなんて言うたけど説得力なくなりますね。

でもおすすめなので気になった方はぜひ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?