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自決権とは何か(1)
パレスチナや沖縄について語る時、「自決権」という言葉が使われることがしばしばあるが、その割にこの言葉の正確な意味は、それを使っている当人によってさえ、驚くほど理解されていないことが多いので、ここで、できるだけ簡単かつ正確にこの言葉の意味を説明したい。
歴史的沿革を辿れば、レーニンやウィルソンの「民族自決」思想が重要であり、さらに遡ればフランス革命にまでその思想的淵源を辿ることもできるだろう
レベッカ・ソルニットの言葉
・ものごとを真の名で呼ぶことは、言い訳をし、ぼかし、濁乱させ、偽装し、逃げるため、あるいは、怠慢や、無関心や、無自覚を促すためにつかれた嘘を、切り裂く。それだけでは世界を変えるのに十分ではないが、真の名前を呼ぶことは、重要な工程なのだ。
・ものごとに真の名前をつけることは、どんな蛮行や腐敗があるのか――または、何が重要で可能であるのか――を、さらけ出すことである。そして、ストーリーや名前を変え、
【幣原発案説の虚妄(第18回)】「マッカーサー、嘘つかない」?
「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対的に腐敗する」(アクトン卿)
まあ、これが世界的な常識ではないだろうか。ところが日本ではこれが逆になる。
「権力者は正しい」「権力者は嘘つかない」
こう思っている人が多いようなのだ。これを端的に表現した権力者がいた。
安保関連法案が衆議院に提出された5日後の2015年5月20日の国会党首討論での出来事。岡田克也民主党代表が「安保関連法案に関する政府の説明
これはひどい! 中立装い極右を応援
この記事はひどい。
朝日新聞デジタルに掲載された「仏総選挙、反ユダヤ主義争点に」と題したこの記事は、今月末に投票が行われるフランス国民議会選挙は、ユダヤ系への差別が争点だとしたうえで、極右の国民連合(RN)と左派連合の「新人民戦線(NFP)」が対立しており、RNはNFPを反ユダヤ主義だと批判していると伝えている。
記事は冒頭近くで、最近、12歳のユダヤ系フランス人少女が性的暴行を受ける事件が
「不要不急の人類学ノート」に拍手!
人類学者・磯野真穂さんの連載「コロナ禍と出会い直す」の最終回(第32回)が掲載された。この連載が『コロナ禍と出会い直す――不要不急の人類学ノート』と題して書籍化され、それを記念するトークイベント(磯野さんと哲学者・永井玲衣さんとの対談)も開催されるそうだ。
「コロナ禍と出会い直す」は32回分すべてを読めたわけではないが、読み得た限りではすべてに心から共感した。あの不愉快極まりないコロナ対策禍
【幣原発案説の虚妄(第17回)】幣原「芝居」説の虚妄(3)
続いて、笠原氏の紹介する佐藤達夫の「証言」を見てみよう。笠原氏は、1964年2月14日の『朝日新聞』に掲載された「あの当時の思い出」という座談会の記事から、以下のような佐藤の発言を引用している。
こうした佐藤の発言を受けて、笠原氏は、「佐藤達夫の発言は、(……)『マッカーサー大戦回顧録』のなかで、1月24日の幣原とマッカーサー「秘密会談」において幣原が発案した憲法9条の内容をマッカーサーに提
【幣原発案説の虚妄(第16回)】幣原「芝居」説の虚妄(2)
笠原氏は『憲法九条論争』第8章第1節で、入江俊郎の「日本国憲法制定の経緯」から、座談会における以下の入江の発言を引用している。
入江はここで、(幣原死去後の)1951年5月の米上院におけるマッカーサー証言を聞いて初めて、9条は、あるいは「幣原さんの発案なのかというような疑問を持つに至ったわけなんです」と述べている。この文章の主題は「大体日本では」となっているが、その中に入江自身も含まれている
男女不平等社会の象徴・夫婦同姓強制制度
世界経済フォーラムが先日(6月12日)発表した2024年度版「ジェンダーギャップ報告書」によれば、日本は調査対象となった146カ国中118位で、G7では第6位のイタリアの87位をはるかに引き離す圧倒的最下位だった。2006年に報告書が始まって以来、日本の達成率は横ばいであるため、日本の順位は長期低落傾向にあるという。
そりゃそうだろう。国連が女性差別撤廃条約を採択してから45年、法制審議会
【幣原発案説の虚妄(第15回)】幣原「芝居」説の虚妄(1)
笠原十九司氏は『憲法九条論争』の第8章第1節「幣原の「芝居」に気づいた閣僚――幣原発案説」で、幣原は「閣議において、あるいは閣僚にたいしては(マッカーサーとの「秘密合意」のことを―引用者注)秘密にして、素知らぬ態度を示して「芝居」を打っていた」が、幣原内閣の閣僚は、「幣原首相の「芝居」に(……)気づいていた者と気づかなかった者とに分かれた」として、「芝居に気づいた」閣僚として入江俊郎法制局長官、
もっとみる【幣原発案説の虚妄(第14回)】1946年3月5日の幣原発言
憲法9条幣原発案説には、同説の主唱者たちが触れたがらない、都合の悪い証言がいくつもある。日本政府がGHQ草案に基く「憲法改正草案要綱」を発表したのは1946年3月6日であるが、その前日の夜9時過ぎ、長い閣議が終わった直後の様子を芦田均厚生大臣(当時)が次のように日記に記している。
幣原はこれに先立つ同年2月21日、憲法改正に関するGHQ側の意向を確認するためマッカーサーを訪問し、そこでマッカ
【幣原発案説の虚妄(第13回)】幣原発案説の発案者(4)
毎日新聞が岸倉松及びマッカーサーの証言として幣原発案説を報じた翌年(1956年)、ホイットニーがマッカーサー伝(MacArthur: His Rendezvous with Destiny)を出版した。邦訳はその翌年(1957年)、『日本におけるマッカーサー』と題して毎日新聞社から出版された。その中で、ホイットニーは、1946年1月24日のマッカーサー=幣原会談直後の様子について、次のように記し
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