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#travel
fictional diary#23 海賊のおきて
白と茶色にふたつに分かれたその学校の校舎のなかでは、生徒は厳しい掟に従わなければいけないそうだ。校則で決められているわけでも、先生に怒られるわけでもないけれど、絶対にやぶることのできない掟。いつからそうだったのか、だれも知らないし、ましてや理由なんてだれも説明できないけれど、目に見えないその決まりごとを、生徒たちはみんなで律儀に守っていた。上の茶色の階には上級生、下の白い階には下級生。下級生は
fictional diary#25 聴こえる音
旅先で久々に再会した友達に、休みの日は何してるの、と聞いたら、屋根にのぼってる、という答えが返ってきたので、わたしは目をまるくした。友達はそんなわたしの反応をみて、慌てて言い足した。もちろん、天気のいいときだけだよ。けどもちろん、そういう問題じゃなかった。返事が思いつかず、黙ったままのわたしを見て、友達は早口で説明してくれた。住んでるマンションに屋根裏部屋があるんだけど、そこには誰も住んでなく
fictional diary#26 彼女が話してくれたこと
ひとつの町からべつの町へ移動する途中、バスに乗り合わせた人と仲良くなった。20代後半の女のひと。日に焼けていて、長袖のチェックの薄いシャツを着て、肩には大きなリュックサックをしょっている。あなたも旅をしてるの、と隣の席に座ったわたしに話しかけてきた。私はそうだと答えて、いままでの旅の話や、自分の国のことを話した。彼女もわたしに、自分の旅のこと、家族のこと、そのほか思いつく限りいろいろなことを話
fictional diary#27 街灯に咲く
その通りに並ぶ街灯には、春のある日になると、花の入ったカゴがぶらさげられる。その日がいつになるのかは、誰も知らない。その日の朝、通りに出てみて、初めて気がつくのだ。小さな花が窮屈そうに植えられた鉢植えが、カゴの中にすっぽりおさまっている。はしごを使って街灯に登った作業員が、小さいがずっしり重たいカゴを持ち上げて、そのために専用に作られた、街灯の横の出っ張りに据え付ける。カゴのなかに入っているの