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金継ぎ:破壊から生まれる新しい美の形(CASE 18/100)


▲「金継ぎ」とサステナビリティ

私は器が好きで、家にも美濃焼、大谷焼、有田焼などの食器があります。旅行に行った土地で思い出として買って帰ることもしばしば。今も砥部焼のカップを片手にこの記事を執筆しています。昔から料理好きなのもあって、「これで食べたら」「盛り付けたら…」なんてことを考えては心躍らせています。私が金継ぎを知ったのもそんな旅先。渋い色の器に稲妻のように走る金色を見て、コントラストのかっこよさに目を奪われてしまいました。

改めまして、「金継ぎ」とは、漆と金を使った器の修理技法です。表面が金色のため金でつなげているように見えますが、実は漆を用いて接着させ、乾かした上に金粉をふりかけているのです。用いる漆はいくつかあり、継ぐ穴の大きさや割れの状態に合わせて選びます。漆で継がれた器は縄文時代にもありますが、金を仕上げに用いるのは室町時代のお茶の文化からと言われており、長い間受け継がれてきた文化そして技術だと言えるでしょう。

壊れてしまえば終わりで、捨てるもしくは買い替える、と考える人が多い中、修復し再度使えるようした上でさらに新しい美しさを纏っているところが、それまでにはなかった価値だと感じます。本来であれば傷や欠陥となるものを味として捉えなおせる感覚は素晴らしい。また、「割れ」という偶然を生かすことで、各々の唯一無二が生まれる点や、新しいモノを「創る」のではなく、直すことで「新しいモノになる」ところに新しい感覚を覚えました。

今はお皿も百円ショップなどで安く手に入る中、あえて時間とお金を費やし、同じものを使い続けようとする姿勢は、衣食住の様々な場面でリサイクル・リユースを行い、社会を循環させていた昔を彷彿とさせます。手を加えることで使い続けられるという機能面はもちろん、思い入れが増すことで慈しみが増し、よりモノとの距離が近くなることにつながっているのではないでしょうか。持続可能という言葉の中で、変化がもたらされることにより、新しいモノとして息を吹き返す様子がとても印象深く、後世にも続いてほしいと感じました。元のモノの見方を変えることで新しい価値を生み出す考えを持つことで、金継ぎや器に限らず新しい視座が得られるのかもしれません。

職人さんに頼むと値が張ってしまうことがあるため、それであれば新しいものを購入しようと感じるかもしれません。直すまでに少し時間がかかるため、そこの変化も楽しみながらじっくり過ごせる人が向いていると思います。

まだ自分の器で金継ぎをしたことはありませんが、いつかお気に入りの器が割れてしまったときはぜひ挑戦しようと思っていますし、むしろそのおかげで割れてしまう、という本来マイナスであるものがプラスの楽しむきっかけになってくれるような気さえしています。

▲参照資料

▲キュレーション企画について

イノベーション事例についてi.labがテーマにそって優れた事例のキュレーションを行い、紹介と解説を行います。
2022年のテーマは「サステナビリティ」です。

▲今回のキュレーション担当者

i.labインターン 前田晏里

▲i.labについて

i.labは、東京大学i.school ディレクター陣によって2011年に創業されたイノベーショ ン創出・実現のためのイノベーション ・デザインファームです。東京大学i.school(2017年4 月 より一般社団法人i.school)が世界中のイノベーション教育機関や専門機関の知見を研究しながら独自進化させてきた理論知と、i.labが産業界で磨いてきた実践知の両輪で、企業向けにイノベーションのためのプロジェクトを企画·運営しています。

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