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企業の森林減少ゼロ目標達成は、2025年までに!

昨日、2022年6月22日は、世界熱帯雨林デー(World Rainforest Day)でした。これにちなんで、企業の森林減少ゼロコミットメントに関連するニュースをご紹介します。

AFiの目指すエシカルな生産と取引

アカウンタビリティ・フレームワーク・イニシアチブ(Accountability Framework initiative: AFi)は、森林や生態系、人権などを守りながら農業や森林の恵みを生み出すことを目指すイニチアチブです。サプライチェーンにおける気候、自然、人権などの問題への対処が求められる中、企業がエシカル(倫理的)な生産と取引の実現のために活用できる実践的なガイダンスを提供しています。

2022年6月、AFiは、サプライチェーンにおける森林減少と生態系の土地利用転換(自然を農地などに転換すること)の排除に関する目標達成期限を2025年よりも前に設定するよう企業に求めるコンセンサス勧告を採択しました。この決定は、パリ協定を支持し、森林と生物多様性の損失を回避し、温室効果ガス排出量を削減するための行動の緊急の必要性を反映しています。私たちIGESもメンバーであるプラットフォーム「Forest Declaration Platform (旧New York Declaration on Forests、森林に関するニューヨーク宣言)」もこの目標年を支持しています。Science Based Targets initiativeによる「Food, Land, and Agriculture (SBTi-FLAG)イニシアチブ」や、国連が支援する「Race to Zero」の自然、土地利用、森林破壊に関する新しい基準でも、2025年が採用されています。

なぜ2025年なのか?

なぜ、専門家は2025年を目標達成期限だとしているのでしょうか? 気候と自然の両面からポイントをまとめました。

気候
科学的なモデル分析によると、世界の気候変動を1.5℃に抑えるためには、遅くとも2030年までに農業による森林破壊および生態系転換をすべて排除する必要があります。一方、森林を生業にする人々による自給自足農業などは完全に止めることが困難です。これらを考慮すると、商品作物の取引に関わる企業は、2025年までに森林減少をサプライチェーンから排除する必要があります。

自然
世界のGDPの半分以上は自然に依存しています。しかし、森林を含む自然および生物多様性の損失は今も続いており、世界の経済活動にとっても直接的な脅威となっています(自然と経済がトレードオフではないことがわかりますね!)。2025年という目標は、何よりもまず、さらなる自然の喪失を避ける必要があることを反映したものです。
 

不可能な目標ではない

難しそうに聞こえるかもしれませんが、2021年に企業が開示した森林破壊ゼロのコミットメントの75%はすでに2025年またはそれ以前に目標年を設定しています。さらに、これらの企業は、トレーサビリティ、サプライヤーの関与、モニタリングシステムなど、サプライチェーンにおける森林減少を特定し対処するために必要なシステムをすでに導入しており、2025年またはそれ以前での目標が達成可能であることが進捗に示されています。このような実証済みの手法の活用を広く普及させることで、自然の損失を止めることができ、また経済活動の将来リスクの軽減にも貢献することができます。

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「もっと知りたい世界の森林最前線」では、地球環境戦略研究機関(IGES)研究員が、森林に関わる日本の皆さんに知っていただきたい世界のニュースや論文などを紹介します。(このマガジンの詳細はこちら)。
**********************************************************************************文責:山ノ下 麻木乃 IGES生物多様性と森林領域 ジョイント・プログラムディレクター(プロフィール

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