見出し画像

講義棟のコギト

講義棟とコギトの音韻的な類似性に、大学の時分は気がつかなかった。

 

私が通った東京外国語大学の講義棟は一つだけだった。

そこに、ほぼ全ての授業が収容されている。

少し閉鎖的な感じもするが、インタラクティヴと言えなくもない。

一部の例外として、アジア・アフリカ研究所(AA研)などで行われる講義があるが、私は履修せずに終わった。

 

哲学に興味があった私は、二年次にデカルトの『方法序説』(岩波文庫)を読んだ。

近代哲学の出発点である同書に挑むのは、人文系の学生にとって通過儀礼のようなものだ。

内容への賛否や、理解の難しさはあれど、古典と格闘することで学生は、考える主体・コギトとしての自覚を育んでゆく。

思考によって自己の存在を基礎づけるという妙技に触れたのならば、なおのこと。


岩波文庫版の訳者は谷川多佳子さんで、東京外国語大学のフランス語科出身。

筑波大学で長く教えていた方だ。

筑波では、さぞかし多くのコギトたちが目覚めたことだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?