『漂流教室』の予言

楳図かずおの『漂流教室』を読むと、よくこんなに次から次へと残酷な状況が思いつくなぁという驚嘆を禁じえない。

なかでも、手術道具も麻酔もなしに、子ども達だけで手術を行うシーンは実に強烈だ。

絶対に不可能ではないが、非常に困難な試練であり、何より異様である。

そんな異様な状況が、実際に起こってしまった。

カンボジアのポル・ポト政権による、子どもへの奇妙な賛美が生んだ、いわゆる「子ども医者」だ。

ポル・ポト政権の発足は1976年で、『漂流教室』の連載期間は1972年から1974年なので、現実よりもフィクションのほうが先立っている。

作者の想像力の凄さと言えようか。

予言めいた例をもう一つ挙げると、谷川俊太郎の詩集『メランコリーの川下り』(1988)に「少年Aの散歩」というのがある。

こうした指摘は傍迷惑だろうから、この辺でやめておく。

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