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山手の家【第1話】エピローグ

あらすじ

小川瑠璃るりは夫のまこと、まもなく1歳になる息子の真珠まじゅと3人暮らしをしている。
義理の両親・義人よしと幸代さちよから、所有するマンションが売れないと相談された瑠璃たちはその家への引っ越しを決める。そのマンションは、義人の家に身を寄せている、義人の姉・信子のぶこから買い取った築40年を超える物件で、人気の高いエリアにあっても売りに出してから1年経っても売れなかった。
引っ越しを決めてから、瑠璃の身の回りに不審なことが起こり始める。
引っ越してからは日常的に不審なことが起こるようになり、瑠璃だけでなく真や真珠も体調を崩す。
原因を究明する瑠璃の前にある人物が立ちはだかる。


第1話 エピローグ

今日は5月25日。この家に引っ越して2ヶ月が経つ。
たった2ヶ月のはずなのに色々なことがありすぎて、もっと時間が経っているような感じがする。
気づけば頭の中も心の中もぐちゃぐちゃで、整理がついていない。
引っ越しの荷物もまだちゃんとは片付いていない。
私たち一家3人の体調不良も、新居に絡んだ不可解なことも未解決のままだ。
真珠まじゅはまだ1歳にもならないのに入院して、原因不明でいつ退院できるかわからないだなんて不憫すぎる。
私たちはただ、引っ越しただけなのに。
引っ越ししなければこんなことにはならなかったのか。
「そんなことはない」
まことさんはそう言う。
けれど、引っ越しする前とその後で明らかに私たちの置かれている状況が違いすぎるのは確かだ。
今起きている不可解なことは引っ越しがきっかけになったと考えるのが自然だと思う。
私が不可解だと感じていることの正体は、わからない。
偶発的に起こっているのかもしれないし、誰かはわからないけれど他人が意図的に起こしていることなのかもしれないし、正直なところわからない。
わからないけれど、私には普通じゃないことが身の回りに起きている。
もしかしたら、真さんの言うように私がおかしいだけなのかもしれないけれど。
とにかく、今も起こり続けている不可解なことが新たな不可解なことで上塗りされて忘れてしまわないうちに、何が起きたのか、何が起きているのかを記録しておきたい。



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