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真夜中万華鏡、409字、毎週ショートショートnote
「私にプレゼント? 真夜中万華鏡? 真夜中なら、光が入らないから見えないんじゃないの」
私の疑問に、彼は笑顔で答えた。
「昼の光を蓄えて、夜は内部が自分で光を放つんだ」
皮肉なの? そう言いたかった。彼は笑顔のままだ。
「まるで、私みたいね。楽しかった思い出だけで生きている。今の生活には光も何もないのに。昔を思い出すだけで、頬が緩んで楽しく暮らせるわ」
「夜も綺麗だけど、昼の光を浴びた真
放課後ランプ、400字、毎週ショートショートnote
授業がすべて終わると明かりを灯す校門の放課後ランプ。
校門に向かって一列に並び、皆が順に手を触れる。
ランプに手を触れると、途端に姿が消えて、いくべき場所に魂は帰る。
私の番だ。
じっと自分の手を見る。
六十歳といっても張りがある。
そっと、ランプに触れても何も起きない。
私は今日も帰れない。
次の人に譲ると、ふわりと友は消えていく。
校舎に戻り、中から校門を見つめれば、
皆が順に消えていく。
「
春ギター、毎週ショートショートnote、410字
山の頂上近く、静寂に包まれた古びた山小屋で、青年がふと見つけたギターが突如、自ら音を奏で始めた。
ただのギターではなく、古代の精霊が宿る伝説の楽器だった。
「冬眠から覚めた。ようこそ、選ばれし者よ」
ギターが声を発すると、周囲の空気が震え、突如、空から光の柱が降り注ぎ始めた。
「何のことだ?」
「我々の世界が危機に瀕している。君と共に、我々の世界を救いに行くのだ!」
ギターに先導され、山小屋を出て
私のコレクションー食器
#わたしのコレクション
というテーマがありましたので、参加しようと思ったのですが、なにぶん、右肩の手術後で、右手を首から吊っている状態なので、食器を片手では並べず、途中で断念しました。
本題とはずれますが、肩の方はちょっとした事件がありました。
手術後、右手を自力でも他力でも上げることを禁止されました。
切れていた筋を人工骨のネジで骨にくっつけてあるのですが、手を挙げるとせっかく繋いだ筋がまた
桜回線、毎週ショートショートnote、410字
「綺麗だね」
翔のカフェの中庭はオープンカフェになっていて、大きな桜の木の下でそんな言葉が交わされる。
老若男女が集い、彼らの会話は桜の木の下で交錯し、桜は人々の間の見えない「回線」として機能し、様々な思いや記憶をつなぐ。
綺麗だねという言葉は桜を経由した回線に乗り相手に伝わる。そして、やがて見つめ合い桜を介さず直接話し始める。
友人同士の笑顔、初恋のぎこちない告白、家族の温かなふれあい。
肩の手術入院のために買ったもの、役立ったもの
プロローグこちらの参加作品です。
手術後利き腕の右手が固定され、動かすことを禁止される。
左手だけで生活するために準備する。
物を買うだけではなく、前に買っていた物を利用することも含めて述べてみる。
グッズについて
私は物書きをしている。物書きは描写やストーリー展開のために、過去の記憶を辿ったり、想像したりして、文章を書く。また、ミステリーを描くときの発想があれば、物を本来とは別の使い方を考
行列のできるリモコン、青春の香るストーリー、毎週ショートショートnote
半日、行列に並んで、やっとで手に入れたリモコンを見て、ほくそ笑んだ。
片手にすっぽりと入る、角のない小石のような形。
カップルで、相手をコントロールするリモコン。
でも、最初はシリアルナンバーが掘られているだけの、ただの石ころ。
私が、石を持って、彼にやって欲しいことを願いながら口にする。彼が自分の意思でそれに答えてくれる。
その度に二人の脳波とか心の動きのようなものを記憶していき、やがて
家電大好き 氷堂出雲のちょっと変わった 商品紹介
やあ、みんな、家電は好き? それとも、大好きですか?
↑なんで、好きか大好きかの二択なんだよ?
すみません。好きが溢れてしまいました。嫌いな人も、へぇー、そんな商品があるんだ、みたいな感じで読んでいただいて結構です。
↑こちらで、ちょっと変わったものを買って使うのが好きと言ったので、どんなものがあるのか、とりあえず一つ紹介。
それでは早速、
商品番号一番。
商品名:レトルト亭
レトルト
ツノがある東館、一行目で惹きつける毎週ショートショートnote
桃太郎は、絶望していた。
すでに、鬼が島に上陸し、鬼の城へと向かっているところだった。
大きな叫び声で振り向くと、猿が首から血を流して倒れていたからだ。少し離れたところに、犬も倒れている。
「犬が突然、後ろから猿の首に噛み付きました。猿は振り向きざまに犬の足を掴み投げ飛ばしました。犬は石に頭をぶつけて倒れ、猿も出血多量で」
雉の報告に桃太郎は奥歯を噛み締める。
「犬猿の仲というが、まさか
アメリカ製保健室 其のニ、毎週ショートショートnote
秋田柴子さんのパクリ…ではなくてオマージュです。
どこが?おばちゃんが出てくるところです。
「おい、養護教諭が変わって、保健室のことをアメほけって言ってる奴がいるの聞いたか?」
「なんで、アメほけって言うんだ?」
「それが、詳しいことを誰も言わないから謎なんだ」
「アメほけって、アメリカ製保健室のことだよ、きっと。金髪に染めたグラマーな先生が、部屋をアメリカ製のインテリアで模様替えしてるんだ
アメリカ製保健室、毎週ショートショートnote
少子化により各高校も他校との差別化を頑張っていた。
偏差値が高いこの高校は、自然とセレブが集まってきた。これなら授業料を爆上げすることで、逆に評価が上がるのではないかとの意見が出た。
差別化は成功して、全国から優秀なセレブが集まるようになった。
だが、セレブの子供たちの考え方に庶民の先生たちはついていけなかった。
「うちのお抱え医師を学校に常駐できない?」
一人ひとりの医師を常駐させる場所
ドローンの課長、毎週ショートショートnote
出勤すると営業第一課の部屋には誰もいなかった。
第一営業係の自分の席につくと係長の席の後ろの壁に見慣れない監視カメラがあった。
「どうしたんだい?佐藤君。早く仕事を始めなさい」
カメラから声がした。ブーンという低い音のする方に顔を向ける。
課長の席の上にドローンが浮遊している。課長もドローン越しに僕を監視しているようだ。
壁の監視カメラに向き直り、僕は叫んだ。
「係長、どこにおられるのです
台にアニバーサリー、毎週ショートショートnote
毎週、たらはかにさんがお題を出して、そのお題でショートショートを書く企画です。
ここから
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「和樹、手術は、成功だ。これで、うまくいけば、多くの患者が救われるんだ」
幼なじみで、整形外科医になった隼人が、全身麻酔から目覚めて、まだ、朦朧とする僕の前で声を弾ませる。
右肩の腱板断裂。右腕を動かす筋肉の端が骨についている部分を腱板と言うが、その部分が骨から剥がれてしまったのだ。
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