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桜回線、毎週ショートショートnote、410字




「綺麗だね」

翔のカフェの中庭はオープンカフェになっていて、大きな桜の木の下でそんな言葉が交わされる。

老若男女が集い、彼らの会話は桜の木の下で交錯し、桜は人々の間の見えない「回線」として機能し、様々な思いや記憶をつなぐ。

綺麗だねという言葉は桜を経由した回線に乗り相手に伝わる。そして、やがて見つめ合い桜を介さず直接話し始める。

友人同士の笑顔、初恋のぎこちない告白、家族の温かなふれあい。それぞれのストーリーが桜の下で織りなされるある日、かつての恋人、凛がカフェに現れた。


「翔、あの桜の木の下で交わした約束を覚えてる?」

「ああ」

「あの時、翔ったら、桜を見ながら…ううん、桜に向かってプロポーズしたのよ」

「桜を経由して君に伝わっただろ」

「私の心は今も変わってないのよ」

桜の花びらが舞い落ちる中、病が奇跡的に全快した翔と彼女は手を取り合った。

桜の木は、過去と現在、未来をつなぎ、人と人の心をつなぐ回線となって、今日も咲いていた。


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