春ギター、毎週ショートショートnote、410字

山の頂上近く、静寂に包まれた古びた山小屋で、青年がふと見つけたギターが突如、自ら音を奏で始めた。
ただのギターではなく、古代の精霊が宿る伝説の楽器だった。
「冬眠から覚めた。ようこそ、選ばれし者よ」
ギターが声を発すると、周囲の空気が震え、突如、空から光の柱が降り注ぎ始めた。
「何のことだ？」
「我々の世界が危機に瀕している。君と共に、我々の世界を救いに行くのだ！」
ギターに先導され、山小屋を出て壮大な森の中に来た。
「お前の演奏がこの世界を救う鍵だ」
ギターに語りかけられる。
目の前には、観客の森の動物たち。
森の外に出ない彼らにとって、森は世界そのもの。
人間の世界には関係ないだろと思うのだが、ギターの演奏を試みる。
彼の演奏から放たれる音符が光となり、周囲の自然や生物に影響を与え、彼らを元気づけ、暗い所から解放していく。
「おかげで皆、冬眠から覚めた。来年の春もぜひ来てくれ」
そう言われて、新たな使命感を胸に、来年の演奏を誓った。

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PS後日談
彼女に報告したら、
「あんた、目覚まし時計がわりに使われてるだけだよ」と教えてくれた。