行列のできるリモコン、青春の香るストーリー、毎週ショートショートnote
半日、行列に並んで、やっとで手に入れたリモコンを見て、ほくそ笑んだ。
片手にすっぽりと入る、角のない小石のような形。
カップルで、相手をコントロールするリモコン。
でも、最初はシリアルナンバーが掘られているだけの、ただの石ころ。
私が、石を持って、彼にやって欲しいことを願いながら口にする。彼が自分の意思でそれに答えてくれる。
その度に二人の脳波とか心の動きのようなものを記憶していき、やがて、コントロールできるようになる。
私の命令コマンドは「キスして」
彼も面白そうだと言って協力してくれる。
そして、ついにコントロールできるようになった。
「キスして」
チュッ
喧嘩をした。私が悪かった。でも、彼も酷すぎない?
「キスして」
チュッ
「ごめん、私が悪かった」
「ごめん、僕も言いすぎた」
そんな感じで、このリモコンは、喧嘩をした時の仲直りの秘密兵器だ。
あ、秘密じゃないか(笑)。
手紙が届いた。
リモコンメーカーからだ。
『お客様のシリアルナンバーの製品はリコール対象です。製造ミスにより全く作動しません。新品と交換させていただきます』
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